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老後の暮らしとお金のコラム家族に迷惑をかけない相続

2018/01/28
笑顔で相続を迎えるために今できる大切なこと。 ~エンディングノート~で「想いの継承」をしませんか?

コラムの最後に締めくくりとして「笑顔で相続を迎える」ために一番大切な対策についてご紹介します。
いわゆる相続税対策は「お金の対策」です。
節税に成功し、たくさんの財産を遺すことができたとしても大切な家族がバラバラになってしまっては意味がありません。
「エンディングノート」で、想いの継承をしませんか?

相続する際に一番大切なものは何か?

当コラムも最終回となりますが、今回は相続対策において私が一番大切だと思っていることをお伝えしたいと思います。

一年間にわたって節税やその手続きについてなどいろいろな観点からコラムを書いてきました。
皆さんは誰のために何のために節税したり遺言を書こうとしたりしていますか?
折角、一生懸命に相続税対策や遺産分割対策、納税資金対策をしても大切な家族が争いになってしまっては、対策する意味がわからなくなりますよね。

一番大切な対策は「家族が争いにならないための対策」。
つまり"笑顔で相続を迎える"ための対策ではないでしょうか。

では、そのためには何をすればいいのでしょう?
前回のコラムの最後で「遺言があれば家族は揉めないのか?」という問いかけをさせていただきました。
実際、私は遺言があったばかりに揉めてしまった家族の事例も数件関わっています。
遺言というのはどうしても事務的になってしまい、なぜそのように親が財産を分けようとしたのか、子たちにはなかなか思いが伝わらないものです。
付言事項に少し補足で書いてあったとしても納得できない場合が多いようです。

そのために私自身は「エンディングノート」の活用を訴えています。

エンディングノートの役割

ただ、日本人は遺言と同じくエンディングノートと聞くと、「まだ死なないから」とか
「まだ、若いので必要ない」とか、「そのうち書こうと思うけど今は書きたくない」などという理由で書こうとしない方が多いようです。

ライフメディアのリサーチバンクが、2015年に全国の60歳以上の男女を対象に行った終活・エンディングノートに関する調査によると、「エンディングノートを書いている」と答えた人が全体の約7%と、まだまだ少ないのが実情です。ちなみに「書いてみたい」と答えた人が全体の約45%、「書くつもりはない」と答えた人が全体の50%近くとなっています。

エンディングノートというネーミングも書かれない理由になっているのかもしれません。
そこで私は、近著『終活・相続の便利帳』(エイ出版社)ではエンディングノートという名前を使用しませんでした。
日頃から「想いを遺すノート」「家族への連絡帳」などという言い方で書き方セミナーなども開催し、普及活動にも努めています。
実は、このノートこそが家族が仲良く笑顔で相続を迎えるための重要なアイテムなのです。

笑顔で相続を迎えるには

近著『終活・相続の便利帳』にも書いていますが、遺すものは財産だけでしょうか?
子は自分の名前の由来を知っていますか?
子は自分が生まれた時に親が何を思ったか知っていますか?
また、子は母親の好きだった花を知っていますか?
父親が好きだったお店や映画を知っていますか?

相続する財産、不動産の所有権、葬儀に呼んで欲しい人、印鑑や通帳の保管場所などといったことも確かに大切な情報です。
ぜひ、エンディングノートに書いてください。
ですが、子や孫、家族に伝えておきたいこと、知っておいて欲しいことはそれだけでしょうか?

エンディングノートは一人で書くのではなく、家族でコミュニケーションをとりながら、「あなたが生まれた日はとても気持ちのいい青空が広がっていたのよ、だから名前を晴子にしたの」、「お父さんは忙しくてなかなか家族と過ごせなかったけど、それはお前たちを一人前にするためだったんだよ」などと話しながら、書きたいページから書き、書けないページは飛ばして、長い年月をかけて書き上げてもいいのです。

人生の終焉はいつ訪れるかわかりません。
まだ自分は大丈夫と思っていても、その時は突然やってくるかもしれません。
日記や手紙を書くつもりで、まずは気軽に書き始めてください。

子と離れて暮らしたり、子に家族ができたりすると、コミュニケーションも不足になりがちです。
目に見える財産ではなく、想いや思い出を相続することで、残された家族にとっては、それが支えとなり、揉めることなく笑顔で相続を迎えられることでしょう。
皆さんにしかできないこと、想いの継承をぜひ始めてみてください。
 

執筆者:一橋香織

AFP 相続診断士 家族信託コーディネーター 終活カウンセラー上級。
頼れるマネードクターとしてこれまでに1,500件もの相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演多数。システムダイアリー社の「エンディングノート」監修。
著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」(PHP出版)。
相続診断士事務所「笑顔相続サロン」代表 東京相続診断士会会長。
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