住宅ローンコラム 生活設計コンシェルジュ 長尾真一がやさしく解説!今、押さえたい住宅ローン活用術

押さえておきたい住宅ローン審査のポイント

2022年07月06日

住宅を購入する際、多くの人は住宅ローンで資金を借り入れますが、住宅ローンを利用するために避けて通れないのが「審査」です。今回は住宅ローン審査の流れや押さえておきたいポイントについて解説します。

住宅ローンには2回の審査がある

住宅ローンを借りるための審査は2回あります。「事前審査」(仮審査)と「本審査」です。住宅購入は一般的に数千万円単位の大きな買い物になるため、自己資金で一括購入できる人は少なく、住宅ローンが利用できないと購入できないケースがほとんどです。そのため、売買契約の前に住宅ローンが借りられる見込みを確認するのが事前審査(仮審査)です。事前審査は比較的簡易な審査のみで、結果も短期間で出ます。

事前審査に通ったら売買契約へと進み、契約が成立したら本審査となります。本審査が正式な審査となりますので、事前審査とは違って提出書類や物件について詳しい審査が行われ、審査に要する期間も事前審査より長くなります。

図表1)一般的なローン審査の流れ

事前審査(仮審査)

事前審査は金融機関の窓口に行かなくてもインターネットで手続きができる場合が多いです。事前審査で必要となる主な書類は本人確認書類、収入を証明する書類、他の借入状況が分かる資料、物件に関する資料等です。ただし、インターネットによる事前審査の場合は、実際にそれらの資料を提出する必要ななく、情報を入力するだけでよい場合もあります。事前審査の結果は早ければ即日、たいていは数日から1週間もあれば結果が出ます。

なお、事前審査は物件の購入申し込み前、あるいは物件が未定の段階でも受けることができます。あらかじめ事前審査を受けておけば、いくらぐらいなら住宅ローンが組めそうかということが分かり、物件探しの予算にも目途が立ちます。ただし、事前審査で申告した内容と実際に購入する物件が異なる場合は、購入申し込み後にあらためて事前審査を受ける必要があります。

事前審査に通れば本審査もほぼ通ると考えている人が少なくありませんが、事前審査で申告した内容に不備や変更がある場合や、健康状態に問題があって(生じて)団体信用生命保険(団信)に加入できない場合など、事前審査に通っても本審査に通らないケースがあるので安心はできません。また本審査で物件の担保価値を精査した結果、希望通りの金額が借りられない可能性もあることは注意しておく必要があります。

本審査

本審査では事前審査以上に厳密な審査が行われます。審査の対象は大きく「ローンを借りる人」(返済能力や健康状態など)と、「担保となる物件」(不動産の担保価値)の2つですが、担保物件の評価は書類だけでなく実地調査が行われたり、保証会社による調査が行われたりする場合もあります。そのため、本審査には早くても1週間、だいたい2~3週間程度の時間が掛かると考えておいた方がよいでしょう。

なお、審査においては「個人信用情報」がチェックされます。過去にほかの借入金や税金、社会保険料などに延滞が生じていると、その情報が5年間は登録されているので審査に悪影響が生じる可能性があります。

またカードローンやクレジットカードのキャッシング、あるいはリボ払いや分割払いを利用している場合もその金額が大きい場合は審査に影響する可能性があります。キャッシングについては実際には利用していなくても利用枠があるだけで審査の上では利用しているとみなされる場合もあるので、クレジットカードを沢山保有している人は審査前に整理しておいた方がよいかもしれません。

本審査に通ればそれで審査は完了ですが、仮審査のときと同様、それで油断してはいけません。本審査に通ったとしても、融資実行前に新たな借入をしたり、他の借入を延滞したり、あるいは転職や独立をした場合などは、融資承認が取り消される可能性があるからです。融資が実行されるまでは返済能力に影響を及ぼす可能性がある(と金融機関に思われてしまう)行為は控えた方がよいでしょう。

住宅ローン審査で重視される項目

国土交通省が公表している「2020年度(令和2年度)民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、9割以上の金融機関が融資を行う際に考慮する項目は、「完済時年齢」(99.1%)、「健康状態」(98.2%)、「担保評価」(98.2%)、「借入時年齢」(97.8%)、「年収」(95.7%)、「勤続年数」(95.3%)、「連帯保証」(95.1%)、「返済負担率」(92.1%)、「金融機関の営業エリア」(91.0%)となっています。

図表2)融資を行う前に考慮する項目
国土交通省「2020年度(令和2年度)民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」を元に作成

それぞれの項目をどの程度重視するかは金融機関によっても異なりますが、これだけ転職や起業が一般的になってきても、住宅ローン審査においては「勤続年数」が考慮されるということは、なるべく住宅購入直前の転職や独立は避けた方がよいでしょう。

また住宅金融支援機構が金融機関を対象に実施した「2021年度住宅ローン貸出動向調査」によると、「本審査(ローン借入に関する正式審査)で重視度が増していると考えられる審査項目」という問いに対して、「返済負担率(毎月返済額/月収)」という回答が72.2%で最も多く、続いて「職種、勤務先、雇用形態」(45.9%)、「借入比率(借入額/担保価値)」(41.1%)、「借入者の社会属性」(31.9%)、「返済途上での返済能力の変化」(26.7%)、「預貯金や資産の保有状況」(26.3%)、「担保となる融資物件の時価」(13.7%)となっています。

図表3)本審査で重視度が増していると考えられる項目
住宅金融支援機構「2021年度住宅ローン貸出動向調査」を元に作成

「返済負担率」「借入比率」とは?

「返済負担率」とは、収入に占める住宅ローン返済額の割合で、長期固定型住宅ローンのフラット35においては、年収400万円未満であれば30%以下、年収400万円以上は35%以下という基準があります。

民間の住宅ローンにおいては各金融機関の判断によりますが、返済負担率が上がればそれだけ返済が困難になる可能性も高まるので金融機関も重視しています。収入に対して無理のない物件を取得することはライフプランの変化に対応しやすいだけでなく、審査にスムーズに通るためにも重要であることが分かります。なお、ペアローンや収入合算を活用することで返済負担率を下げることもできます。

図表4)返済負担率とは

「借入比率」とは、物件の担保価値に対する借入額の割合で、金融機関にとっては借入比率が低いほど万一のときに担保による債権回収の可能性が高く、安心して貸し出せるということになります。したがって頭金を多く用意して借入比率を下げるほど、審査は通りやすいということになります。

図表5)借入比率とは

複数の金融機関で審査申込をすることも可能

ここまで審査の流れや主な審査項目を見てきましたが、実際の審査基準は金融機関によって異なります。つまり同じ人が同じ物件で住宅ローンを申し込んだとしても、申込先の金融機関によって審査に通る場合と通らない場合があるのです。

したがって審査に通るか不安な場合は、事前審査の段階で複数の金融機関に申し込んでおくとよいでしょう。審査を申し込むのは1つの金融機関だけと思い込んでいる人もいますが、そんなことはありません。事前審査は結果が出るのが早いと言っても、審査に落ちた後に別の金融機関に再度申し込んでいては手間も時間もかかります。あらかじめ複数の金融機関に申し込んでおいた方が何かとスムーズに進められるはずです。

また複数の金融機関で審査を申し込めるのは事前審査だけでなく、本審査も複数の金融機関で通すことができます。住宅ローンの金利は金融機関によって異なりますし、住宅ローンで一番悩むのは金利タイプの選択です。主な金利タイプとして「変動金利型」「固定金利型」「固定期間選択型」という3つの金利タイプがあり、固定期間選択型にも3年固定、5年固定、10年固定のように固定期間が異なるタイプがあります。

住宅ローンの金利は毎月見直しがありますし、最近は国内外の経済動向も先が読みにくい状況になってきています。そのような中で特に注文住宅の場合は融資が実行されるのは建物が完成して引き渡しを受けるときになるので、本審査から期間があくこともあります。複数の金利タイプで本審査を通しておけば、融資実行の直前になって金利に大きな変動が生じたとしても、選択肢の中からより有利な住宅ローンを借りることができます。

まとめ

住宅ローンをスムーズに借りるためには審査の流れや主な審査項目を理解し、転職や住宅ローン以外での借り入れなど審査が通りにくくなるようなことはできる限り避け、返済負担率や借入比率をなるべく下げるなど審査が通りやすくなるように対策をしておくことが大切です。また民間金融機関の住宅ローンでは団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられることが一般的ですので、何より健康を心掛けることも忘れないでください。

執筆者:長尾真一(ながおしんいち)

ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)、企業年金管理士(確定拠出年金)

1977年広島県生まれ。大学卒業後、医療機器メーカー・エアライン系商社で海外営業として勤務した後、ファイナンシャルプランナーに転身。
生活に関わるお金の不安を解消し、未来に希望をもって暮らしていくためのお手伝いをする「生活設計のコンシェルジュ」として相談業務や執筆業務に従事。
企業や学校での講演・セミナーにも年間100回以上登壇しており、これまでの延べ聴講者数は2万人を超え、わかりやすい説明が好評を得ている。

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