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2020.07.30

Kantei eye 中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏・近畿圏・中部圏)

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首都圏 2020年上期は価格乖離率・売却期間ともに目立った動き見られず
近畿圏でも新型コロナによる影響は限定的景況感の悪化に伴う価格下落はまだ現出せず
中部圏 2020年上期の価格乖離率は-8.23%、売却期間は前年同期を上回る

【首都圏】売出・取引価格は上振れ、売却期間は概ね4ヵ月間が常態化

過去15年間(2005年~2019年)の中古マンション市場を俯瞰すると、ミニバブル後の2008年~2009年、東日本大震災後の2012年に市況感が大きく悪化していた様子が見て取れる。

前者では僅か2年間で売り手市場から様相を一変させており、後者では東日本大震災による影響や歴史的な円高水準に起因する輸出企業の業績不振なども相俟って、景況感の先行き不透明さが増すとともに中古マンション市場においても反響の鈍化が著しくなっていった。

自公連立政権が打ち出した金融・経済政策によって2013年を境に景気改善の期待感が高まり、また住宅ローン減税などの住宅取得支援策の拡充や金利水準の低下を背景に、実需・投資の両面でマンション需要が喚起された。それに伴って、中古マンション市場における反響にも明確な好転が認められる。

この動きは2016年の上期まで続いたが、中古マンションの価格水準がミニバブル期のピークを超え始めたことで、価格高騰への警戒感から購入検討者の間で様子見ムードが広がっていった。

加えて、今が売り時と判断したオーナーからの売出事例が増加したことも相俟って、成約までの期間に限っては緩やかながら長期化する傾向にシフトすることとなった。

2020年の上期においては、新型コロナウイルスの感染拡大やその後の感染防止を目的とした外出自粛要請が出されていたこともあり、市場自体は基本的に"フリーズ状態"となっていた。緊急事態宣言の解除に伴って首都圏で外出自粛や休業要請が緩和されたのは全国の中で最も遅いタイミングの6月1日であったことを考慮すれば、"フリーズ状態"明けの状況が客観的なデータとして本格的に反映されるまでにはある程度の時間を要するものと思われる。

【近畿圏】2020年の上期での価格乖離率&売却期間、前年同期を下回る水準

近畿圏の中古マンション市場においてもミニバブル後の2009年と東日本大震災後の2012年に市況感の悪化を確認することができる。

ミニバブル期における価格高騰の度合いは首都圏ほど過熱していなかったこともあり、中古マンションの売出価格は2,000万円前後の水準で高止まったまま価格調整がほとんど進まなかった。そのため、売却期間自体も3ヵ月間を上回る水準で概ね横ばい推移となった。

東日本大震災による直接的な被害は無かったが、経済的な悪影響は近畿圏にも波及し、2012年の下期には売却期間が4.00ヵ月まで長期化する結果となった。なお、価格自体は高水準を維持しており、地震による直接的な被害を受けて自粛ムードもひと際強かった首都圏に比べれば市況感の深刻さは幾分か軽微であったとも言えよう。

2013年以降の好調な反響が一服するのは2016年頃で、背景には価格高騰への警戒感や流通戸数の増加などが挙げられる。

2019年の下期には10%への消費増税に伴って拡充された住宅取得支援策の利用を待っていた一部の検討者がマンション購入へと動いた影響もあり、中古マンション市場における反響は一時的に好転した。ただし、一段と過熱感を帯びた価格水準や先行き不透明さが増しつつあった国内の景況感への意識から、8%への消費増税時のように取引量が著しく増加するまでには至らなかった。

2020年の上期には再び反響の鈍化が認められたものの、新型コロナ禍の影響を見定めるために購入を先送りしたり、市場自体が活動を自粛していた時期を多分に含んでいる。

そのため、近畿圏においても新型コロナウイルスによって直接的に受けた影響は専ら"市場活動の停止"に限られており、現時点においては景況感の先行き懸念や実体経済の悪化に起因する価格水準の低下などはほとんど生じていないと見るべきであろう。

【中部圏】売出・取引価格は続伸も価格乖離率&売却期間で悪化の兆し

過去15年間(2005年~2019年)で最も市況感が悪化していたのは東日本大震災後の2012年であり、他の都市圏とは異なった傾向を示している。2011年3月には東日本大震災、同年8月にはタイで大洪水が発生し、中部圏の主要な産業である自動車産業のサプライチェーンは深刻な打撃を被った。

これらの影響は関連企業の業績や地域経済に暗い影を落とし、中古マンション市場においても反響の急激な悪化や価格水準の低下を招く結果となった。

中部圏の経済状況は自動車産業に依存している部分が大きく、関連企業の業績の良し悪しが住宅購入マインドやマンション価格を大きく左右すると言っても過言ではない。その証拠に、業績が不振に陥った2011年当時の価格乖離率は-9.53%まで急拡大してミニバブル後を上回っていたわけだが、これは中部圏に限って見られた特徴である。

2013年に入ると地域経済が復調に向かいつつあったことに加えて、リニア中央新幹線の開業決定やそれに伴うJR名古屋駅周辺エリアの再開発などが本格化したことも相俟って、実需・投資の両面でマンションニーズが高まり、価格乖離率・売却期間ともに縮小する傾向で推移することとなった。

直近にかけては多少変動しながらも概ね安定した推移を見せていた。2019年の下期には近畿圏と同じく売却期間のさらなる短縮化が認められたものの、2020年の上期には前年同期と同水準まで戻ってしまっており、価格乖離率は緩やかながら拡大しつつある。

中部圏では緊急事態宣言の適用期間が比較的短かったわけだが、その差は数週間程度でしかない。そのため、半期ベースでの動きを見た場合には中古マンション市場が置かれた状況は他の都市圏とほとんど変わらず、示されたデータを額面通りに捉えて市況感を判断するには早計であると言えよう。

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提供:東京カンテイ
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