セールアンドリースバック取引にかかる税務について(第3回)

会計上のリース取引については、リース取引に関する会計基準を根拠に第9項にてリース取引がファイナンスリース取引であるかどうかを判定し、第10項にて、所有権が移転するファイナンスリース取引であるかどうかを判定した上で、第21項以降を基に会計処理を進めていく構成となっています。(リース取引については、注記についても確認する必要がありますが、本レポートでは記載対象外としております。取引が実施される際には、専門家へご相談ください。)
税務上のリース取引については、法人税法第64条の2「リース取引に係る所得の金額の計算」、法人税法施行令131条の2「リース取引の範囲」他を根拠としており、それぞれ、取り扱いが異なっております。

Ⅲ-Ⅰ.会計仕訳と各税務論点

(1)セールアンドリースバック取引 (金融取引含む)

①セールアンドリースバック取引がファイナンスリース取引に該当する場合

借手は、資産の売却に伴う損益を長期前払費用又は長期前受収益等として繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損益に計上します。

売却損益の繰延処理を行う考え方についてですが、セールアンドリースバック取引がファイナンスリース取引に該当する場合には、当該取引は、資産の売却と資産の賃貸借と考えることになりますが、資産を引き続き使用している状況にかわりがない為、資産を担保に借り入れを行ったような実態になります。このような経済的実態を会計に反映させるため、リース対象となる資産の損益の繰り延べを行います。

ただし、当該資産の売却損失が、当該資産の合理的な見積市場価額が帳簿価額を下回ることにより生じたものであることが明らかな場合は、売却損を繰延処理せずに売却時の損失として計上することが出来ます。

資産の売却損益に係る処理の他は、下記記載のファイナンスリース取引の会計仕訳と同様となります。

②セールアンドリースバック取引におけるリース取引がオペレーティングリース取引に該当する場合

借手は、資産の売却に伴う損益を繰延処理することなく、原則、売却時に全額を売却損益に計上します。

資産の売却損益に係る処理の他は、下記記載のオペレーティングリース取引の会計仕訳と同様となります。

(2)ファイナンスリース(売買取引)

①賃借人(借手側)の会計仕訳

ファイナンスリース取引については、通常の売買取引に準じて会計処理を行うとされています。
リース取引開始日に、リース資産とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上し会計処理を行うこととなります。

ファイナンスリース取引における会計仕訳は、所有権移転の有無に関わらず、下記のとおりです。

所有権移転ファイナンスリース取引と所有権移転外ファイナンスリース取引の相違点は、下記の通りです。

②賃貸人(貸手側)の会計仕訳

ファイナンスリース取引については、通常の売買取引に準じて会計処理を行うとされています。
取引実態に応じ、次のいずれかの方法を選択し、継続的に適用するものとしています。結果として、各期における利息相当額はパターン1からパターン3の方法のいずれの方法を採用しても、同額となります。

(3)オペレーティングリース(賃貸借取引)

賃借・賃貸人(借手側・貸手側)の会計仕訳

オペレーティングリース取引に該当することとなった場合には、賃貸借処理となり、リース資産は貸手の貸借対照表に計上されたままとなり、借手はリース料を支払った時に支払った金額が経費となり、とてもシンプルな会計仕訳となります。

Ⅲ-Ⅱ.その他の論点

(1)転リース

リース資産の所有者から当該資産のリースを受け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引をいいます。借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンスリース取引に該当する場合、貸借対照表上はリース債権又はリース投資資産とリース債務の双方を計上することとなりますが、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で損益計算書に計上します。

リース債権又はリース投資資産とリース債務は利息相当額控除後の金額で計上することを原則としているのですが、利息相当額控除前の金額で計上することも認められています。

(2)新収益認識基準

収益認識基準とは、企業の収益に関して、「いつ」「いくらで」「どのように」計上するかのルールを定めるものです。企業の業績を分析する上では非常に重要な項目となります。その収益の認識基準が変更されることとなり、2021年4月から始まる会計年度より適用対象法人については、新収益認識基準が強制適用されることとなりました。リース取引については、新収益認識基準の対象となるのかどうか、確認をしておきたいと思います。

リース取引は、リース会計基準がベースとなっているため、2021年4月から開始となる新収益認識基準においては、対象外となります。

ですが、リース契約についても、契約内容を確認の上、履行義務の識別について検討を行う必要があると考えられます。例示として、コピー機のリース契約の場合、契約内容が「コピー機の賃貸」と「コピー機のメンテナンス」に分かれている場合には、下記のように検討する必要があります。

・「コピー機の賃貸」→リース基準による認識→新収益認識基準対象外。
・「コピー機のメンテナンス」→リース基準によらない認識→新収益認識基準対象。

提供:税理士法人 令和会計社

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