不動産投資コラム

~事例紹介(8)~ 収益不動産を開発事業者の視点で捉え直し、1億円アップに成功

「より高値で売却したい」というのは、売主様共通の思いでしょう。しかし、物件単体ではどうしても限界があります。大幅な売却額アップの可能性の見逃さないためには、新たな視点も必要になります。

収益不動産としての一般的な査定額ではなく、開発という視点が加わることで、査定額が大きく変わる可能性があります。今回は、絶好のタイミングを逃さず、大幅な売却額アップに成功した事例をご紹介します。

江東区に建つ築30年RC造の「L字型マンション」

今回ご紹介する収益物件の売却事例は、間口が狭く奥に開けた敷地に建つL字型マンションの売却事例です。RC造6階建て、築30年ほどのこのマンションは、もともと企業A社が所有していましたが、6年前に経営者であるAさん個人に譲渡され、当社にご相談いただいた際にはAさんの個人名義になっていました。マンションが建つ敷地の奥には、A社名義の駐車場があります。

マンションも敷地もL字型の物件

きっかけは、Aさんからの査定依頼でした。当社では、古いビルを所有している企業などに向けて月間2,500通ほどのDM(ダイレクトメール)を送付しています。企業の所有する不動産や相続に関して、当社がお手伝いできることやサービスを紹介するこのDMを見たAさんが、査定依頼のお電話をくださったのです。

実際にお話を聞いてみると、急いで売却したいというご希望ではありませんでした。個人名義になってから売却時の税率が下がるタイミングになったこと、また、オリンピックを控えた現在の不動産市況について知っておきたいという目的もあって査定依頼をされたようでした。

タイミングを見極め、スピード重視で再査定

査定は当社だけでなく、他社にも依頼しているとのことでした。周辺相場や収益不動産としての資産価値から査定すると、当社も他社と同程度の査定額に落ち着いていました。

買い手の目線に立ってみると、この物件には「買いにくい」と思わせる要素がいくつかありました。一部プレハブを増設するなど、建築物としては既存規格から外れること。近年、収益不動産に対する融資が厳しくなっており、サラリーマン投資家層に人気の規模であっても、融資がつきにくい価格帯であることです。

実際問題としては、L字型マンションの敷地を通らないとアクセスできない、法人名義の駐車場となっている土地も一緒に売却することになるでしょう。大きな建物に建て替えができれば別の層の買い手があるかもしれませんが、敷地の間口が狭いために、効率の良い建て替えは望めません。

そのような状況を踏まえて今後の展開について検討していた最中に、Aさんから「隣地の境界立ち会いをした」という情報を得ます。さらにその後、測量を実施したこともわかりました。

実は、査定依頼をいただいたL字型のマンションの隣地、L字の欠けた部分にあたる場所には、小型のマンションが建っていました。測量をしたということは、その隣地が売りに出される可能性があるということです。

再び買い手目線に立ったとき、もし隣地も一緒に取得できれば、整形地となり容積率も上がるため、「マンション開発用地」という選択肢が出てきます。

査定依頼があってすぐ、レインズで調べた際には、まだ隣地は売りに出ていませんでした。しかし、測量をしたという話にピンときて改めて調べてみたところ、ちょうどその日に隣地が売りに出ていることがわかりました。

隣地の売り情報を知ってすぐに、マンション用地としてのポテンシャルを確認するべく、懇意にしている設計会社に依頼して、査定依頼のあった土地と隣地とを合わせた場合、どのくらいの規模のマンションが建つかをプランニングしてもらいました。スピード重視で取り組み、プランはわずか1週間で完成。早速、そのプランに基づいて査定書を作り直したところ、査定額は当初に比べて1億円近くアップしました。

しかし、その査定額をAさんにただ提示するだけでは、そんな「できすぎの話」があるものかと信ぴょう性が疑われかねません。そこで査定書には、買い手となり得る開発事業者はこの不動産をどう評価するものかという「開発事業者目線」の裏付け資料も添えて提出しました。

最初に査定依頼時には急いで売るつもりのなかったAさんでしたが、タイミングを逃してはならないと売却を即決されました。過去に売り時を逃がした苦い経験も、この決断を後押ししたようです。

マンション開発業者に購入を促す

次にやるべきことは、隣地を他社に先駆けて取得することです。早速上司に相談して、上司が懇意にしているマンション開発業者C社に協力を依頼しました。具体的には、L字型マンションと駐車場、隣りのマンションの3つ全てを取得することを前提として、まずは隣地を購入して欲しいという依頼です。

現在は、都心のマンション用地が不足していることもあり、C社も積極的に協力してくれることとなりました。ただし、万が一L字型マンションのオーナー様の気が変わったり、何らかの事情で売れなくなったりしたときには、見込みが外れることになってしまいます。そのため、これまでの当社との信頼関係がなければ、協力を得るのは難しかったかもしれません。

このような経緯で、私たちは買主(C社)側の仲介会社として、隣地の売主であるBさん、およびその仲介会社と交渉を進めていきました。Bさんおよび仲介会社の担当は、売り出し価格に近い金額で購入することで、結果的にはスムーズに隣地を取得することができました。

その後、L字型マンションの土地建物と、A社名義になっていた奥の駐車場もC社へ無事に売却されました。

L字型マンションのオーナーであるAさんは、売却価格が1億円近く上がったことを非常に喜んでくださいました。当社のことを信頼して任せてくださったこともあり、さらに現在は、ほかの物件を購入したいというご相談をいただいています。

お客様から信頼していただくために、行動で応える

今回の事例を振り返って、結果として当初査定額よりも大幅な高値売却に成功した理由として、次のようなことが挙げられます。

  • より高く売ることを心がけ、開発事業者視点での査定も行った
  • タイミングを逃さず、スピード重視で対応した
  • 設計会社や開発会社と日頃から信頼関係を築いていた
  • 査定額の信ぴょう性を裏付ける詳細な資料を作成し、提示した

私が常日頃から大切にしているのは、「信頼」です。野村不動産グループである当社の代表として担当しているという意識を持ち、お客様に「この人に、頼んでよかった」と言ってもらえるよう、お客様の言葉に耳を傾け、ご要望に対して行動で応えるよう努めています。査定額を裏付ける詳細な資料を作成しご提示したのも、お客様に信頼していただき、安心して任せていただくためです。

また、今回の成功は、当コンサルティング課のチームワークの成果でもあります。開発系案件の経験や知識、コネクションを提供してくれた上司をはじめ、限られた時間の中で資料作成を手伝ってくれたメンバーなど、課員全員が自分の担当案件のように協力し合えるチーム体制が、結果としてお客様のご満足につながっているのだと思います。

さらに、野村不動産グループの一員として、不動産投資や不動産仲介はもちろん、開発事業の視点や実績も持っています。より高く売却するために、プロとしてのノウハウを駆使して問題解決していくことこそが、この仕事の醍醐味であり、私自身のやりがいです。

不動産売却でお困りのことがございましたら、是非一度お話を聞かせてください。

谷津 和広
谷津 和広

谷津 和広野村の仲介+
本店営業部
コンサルティング課 専任課長

 

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