不動産投資コラム

「AM・PM」は、個人の不動産投資にも浸透するか?

不動産投資の収益性を左右するのが、賃貸管理を担うプロパティマネジメント(PM)です。さらに最近ではアセットマネジメント(AM)の重要性も指摘されています。それぞれの内容と存在意義について考えてみましょう。

不動産投資は「良い物件を買えば成功」というわけではありません。不動産は、長く持ち続けることによってリスクが高まって行く面もあるからです。築年数が古くなるにつれ、空室が増えるリスクは高まります。その一方で、建物の修繕、設備の更新などの費用は嵩んできます。

したがって、収益物件を取得した後の「運営管理」が非常に重要になってくるのです。多岐にわたる賃貸物件の管理は、何かしら管理会社へ委託することがほとんどです。では、どんな管理会社に頼んだらよいのでしょうか。

オーナーの利益を追求する「PM」

実は、収益物件オーナーの間では、委託している管理会社への不満が少なくありません。「空室が出てもすぐに入居者募集を始めない(対応が遅い)」「自社系列の仲介店にしか情報を出さず、入居者が決まるまで時間がかかる」「入居率が落ちても『家賃を下げないと決まらない』としか言わず、有効な空室対策がない」など、オーナーの利益につながらない対応が目に付くことがあるのです。

こうした状況に、「PM」で対応する会社が増えてきました。PMとは「プロパティマネジメント」の略で、日本語でいえば「賃貸運営(経営)管理」となります。「賃貸管理」の間に「運営」が入っています。業務内容を列記すると既存の賃貸管理と大きく変わらないように見えますが、取り組む姿勢やサービス内容が違います。

既存の管理会社が行う「賃貸管理」は、「オーナーからの指示を実行する」という受け身のイメージが強いのに対して、PM会社は積極的にオーナーの資産(不動産)を守り、運用益を高めるために管理業務を代行する立場といえるでしょう。

全米不動産管理協会(IREM)が認定する「CPM(Certified Property Manager)」には、オーナーの利益に反する行為は行わないという厳しい倫理規定が定められています。

委託する管理会社の良し悪しは、このような「PM業務」を担っているという意識を持っているかどうかが分かれ目になるでしょう。

PM会社の果たす役割

最近は、得意分野を前面に押し出したり、独自のサービスを提供するPM会社も登場しています。たとえば、入居者やテナントの募集を行う「リーシングマネジメント」に特化した会社もあります。緻密な不動産市場のマーケティングに基づいて、エリアに合った家賃や賃貸条件の設定を提案します。また、数十から数百社に及ぶ仲介会社と連携し、スピーディーな成約を目指すものです。

「集金管理」を強みとする会社もあります。家賃の滞納が起きたら、専門部隊が即座に督促業務を開始し、滞納期間が長引くことを防止するのです。

このほか、入居者の満足度を高めて退去防止に有効とされるのが「24時間365日入居者コールセンター」です。設備故障やカギ紛失、水漏れ、ガラス破損などのトラブルがあった場合に、緊急時の連絡窓口となり、迅速・適切な処理をしてくれます。ただし、対応の範囲やスタッフの現地駆けつけに対する費用負担の有無など、会社によってサービス内容が違うことに注意してください。

既存の管理会社では実施することが少ない「入居時立ち会い」も、オーナーにとってありがたいサービスの一つでしょう。これは、PM会社のスタッフが入居者とともに室内の不具合箇所や設備故障の有無を確認し、写真も撮影して「室内状況確認書」を作成するものです。これがあれば、退去時に不具合が見つかった際の原状回復トラブルを防ぎ、敷金精算もスムーズに進められます。

資産全体の動きと流れを見てくれるAM

物件としては、家賃収入の月次レポートを見て、賃料設定が変わらず、しかも管理経費や修繕費などの支出も増えていなければ問題ないと思いがちです。ところが、年数が経過するにつれて、税務上の必要経費に計上できるローン利息や減価償却費は次第に減って行きます。その結果、所得税の支払い額が増え、手取りが減ってしまうのです。不動産所得は黒字なのに、キャッシュフローが赤字になるおそれもあります。

もし複数の物件を所有していれば、物件ごとの収支状況や最終的なキャッシュフローがどうなっているかを把握するのは、さらに難しくなるでしょう。こうした経営状況をオーナーに代わってウォッチングして、必要な対策を行う業務を「AM(アセットマネジメント=資産管理)」といいます。

仮に収支が悪化している物件があれば、PM会社に指示を出して、リーシングを強化したり、付加価値を高めるリフォームをして収益性を回復させたりします。収益改善が難しく、売却して別の物件に再投資するほうが収益を高められると判断すれば、「資産組み替え」まで提案します。

不動産の市況次第では、手持ち物件の状況がそれほど悪くなくても、より収益性の高い物件に早めに買いかえたほうがいい場合があります。PMは個別の不動産の収益最大化を、AMは出口まで含めたトータルな視点から、オーナーの資産価値の最大化を目指すのです。

個人オーナーにもAMは必要?

もともとAM(アセットマネジメント)とは、投資用資産の管理を代行して、投資利回りを最大化する投資顧問業務のことです。不動産業界でいえば、REITやファンドによる大型の不動産投資に対してAM専門会社が付くのが一般的でした。多数の投資家に代わって多岐に渡る収益物件の総投資利回りを最大化するのが、AM会社の役割です。個人オーナーがAM会社を使うことは、よほどの資産家でない限りは少ないでしょう。

ただ、投資規模が小さくても、PM(プロパティマネジメント)と併せてAMを行ったほうが、オーナーにとってメリットがあるのは確かです。こうしたニーズを受けて、野村不動産アーバンネットでは、大手PM専門会社の紹介と、野村不動産アーバンネットによるPMサポートのサービスを始めています。これは、同社の仲介で収益物件を購入した個人オーナーに対して、専任の担当者をつけ、一部上場のPM会社と提携して管理運営を行うというサービスです。

担当者は、部屋の入退室状況や家賃の収受状況などが書かれた月次レポートの情報をオーナーと共有し、PM会社がしっかり動いているか、的確な対策を打っているかをチェックします。併せて、半年または1年に一度、キャッシュフロー動向をまとめた報告書をオーナーに提出して、今後の不動産運用についてアドバイスを行います。

PM会社とオーナーとの間にこの担当者が入ることによって、オーナーがPM会社に任せきりになることを防ぎます。また、オーナーから直接言いにくいことを伝えたり、コミュニケーションを促進させるというメリットもあります。今後は、PM会社だけでなく、こういったアドバイザーの重要性も高まってくるのではないでしょうか。

宮澤 大樹
宮澤 大樹

宮澤 大樹野村不動産ソリューションズ株式会社 プライベートコンサルティング営業部

1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。 その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。

 

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