不動産投資コラム

不動産投資とは?【初心者向け】仕組みや、メリット・デメリットを解説

不動産投資とは?【初心者向け】仕組みや、メリット・デメリットを解説

不動産投資に興味はあるものの、金融投資とくらべてどのようなリスクがあるのか、サラリーマンが不動産投資をするとどんなデメリットがあるのかなど、不動産投資を始めるにあたり、不安を感じている方も少なくないはずです。そこでこの記事では、不動産投資とはどのようなものなのか、なにからスタートするのが良いのか、どのような点に注意すべきかなどをまとめました。投資物件を探す投資家の方に、物件選択のアドバイスなどをしている「宅建士」であり「建築士」である筆者が、が分りやすくお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資とは?

不動産投資とは

不動産投資とは、購入した土地や建物を貸し出すことで、入居者やテナントから家賃収入を得たり、売却益を得たりする投資です。投資対象もアパート・マンションやビル、一棟物件や区分所有物件、新築・中古など、さまざまな形があります。

不動産投資の種類

不動産投資にはさまざまな種類があります。しっかりと理解し、自分に最適な投資方法を見極めましょう。

●マンション・アパート一棟
マンション・アパート一棟物件への投資は、不動産投資の中でもメジャーな投資のひとつです。単身向け、ファミリー向け、1階に店舗がある物件、またはその混合など、さまざまな物件があります。

そして、一般的に単身者向けは入退去の回転が早く、ファミリー向けは長期の入居が見込めます。一棟物件は金額が大きくなる傾向にあるので、一般的には融資を受けて購入するケースが多く、レバレッジを効かせた投資が可能です。

●ビル一棟(店舗・事務所)
店舗や事務所が入っているビル一棟への投資は、テナントが入っている間は比較的長期で安定した運営ができます。しかし、一旦テナントが退去すると、客付けする期間が長くなる傾向にあります。

とくにコロナ禍では、飲食店の閉店や、テレワークをする企業の増加などで、物件によって入居率が大きく変動していました。また、マンション・アパートにくらべて固定資産税も高くなります。どちらかと言うと、中・上級者向けの投資と言えるでしょう。

●戸建て
戸建ては、基本的にファミリーが対象となり、また希少性もあるため、一旦入居付けできると、長期で安定した投資をすることができます。また、築古戸建てを購入して、リフォームあるいはリノベーションをして、高く売却できるケースもあるので、DIYが好きな方などには、人気の投資法と言えるでしょう。ただし、築古戸建ては修繕費がかかるため、購入する際には、そのコストも見込んで利益が出るかを確認しておく必要があります。

●区分マンション
区分所有マンションは、不動産投資の中では、比較的低価格で購入することができます。不動産投資の入り口として検討される方も多い投資法です。ただし、新築区分所有マンションは表面利回りが平均4%程度であることが多く、ローンの返済を考慮すると収支が赤字になるケースもあり、投資としてはほぼ成り立たないことも少なくありません。

一方、中古の区分所有マンションを安く購入できれば投資として成り立ちますが、区分所有マンションは修繕積立金の影響で、一棟物件にくらべると、賃料に占める管理費の割合が高くなる傾向があります。また、退去すれば家賃がまったく入らなくなるため、退去してもすぐに入居付けできるような立地を選ぶことが重要です。 

●寮、社宅
寮、社宅の場合、学校や企業が利用している間は、安定した賃料収入を得ることができます。しかし、学校や企業に移転があると、賃料収入がまったくなくなることもあるため、損失が継続的に発生してしまいます。事前の調査や、物件のコンバージョンが可能かなどを検討しておく必要があり、かなり上級者向けの投資と言えるでしょう。

●ホテル
ホテルへの投資は、初期投資額も大きく、人材の確保と育成、また集客のための継続的なマーケティングが必要になるので、経営という要素が強い投資です。

ホテル運営会社に一括貸しをする方法もありますが、ここ数年はコロナの影響で、インバウンドや国内観光客の減少から、ホテル業界もかなり厳しい状況となっていました。ホテルへの投資は社会環境や経済環境に大きく左右される可能性があり、かなりハイリスク・ハイリターンの投資と言えるでしょう。

●民泊・簡易宿所
民泊・簡易宿所は、ホテルよりも投資額は少なく、特区であれば比較的、許可も下りやすいので、一時期は非常に投資する人が増えました。しかし、こちらもホテル投資と同じく、コロナの影響で撤退する事業者が増えていました。2023年後半には回復傾向が見られるようになりましたが、住宅系の投資に比較するとリスクの高い投資と言えます。

●工場、倉庫、物流
工場、倉庫、物流物件は、比較的利回りが高いケースが多いです。居住用の物件と比較すると、駅近でなくても良いというメリットもあります。また、メンテナンスのコストもあまり必要ありません。さまざまな用途で使え、入居期間も長くなる傾向があります。

一方で空室になると長期間、空いてしまうというデメリットもあります。一般の方の場合、融資も通りづらいため、上級者向けの投資と言えるでしょう。

●トランクルーム
トランクルームは、屋外、屋内があり、企業向けには業務用資材などの保管、個人向けには長期間使用しない家財道具などを保管するために利用されるため、立地や道路付けがポイントとなります。

事前の立地調査と、客付けのためのマーケティングが重要で、軌道に乗せるためには2~3年ほどかかることが多いです。しかし、一度、軌道に乗るとメンテナンスコストも低いため、安定した利益を出すことができるでしょう。

●駐車場
駐車場は遊休地を利用したものや、立体駐車場などがあり、貸す形態も月極やコインパーキングがあります。月極の場合は、継続して安定した収入を得やすく、コインパーキングは立地や料金設定によって、利益が変動します。初期投資も少なく、狭い土地でもできるため、遊休地を持っている人は、検討しても良い投資です。

不動産投資で収益をあげる仕組み

続いて、不動産投資で収益をあげる仕組みについて解説します。

●家賃収入(インカムゲイン)
不動産投資で利益を得る形のひとつが、家賃収入を得る方法です。別名インカムゲインと言います。購入した不動産を貸し出す代わりに家賃収入が入ります。そして、この家賃収入から経費や税金、金融機関から融資を受けた場合は、借入金の返済を差し引いた残りが、キャッシュフローとして手元に残り収益をあげます。

家賃収入の仕組みやメリット・デメリットについて知りたい方は以下の記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。
家賃収入を得て生活はできるのか?仕組みやメリット・デメリットを解説

●売却益(キャピタルゲイン)
不動産投資で利益を得るもうひとつの方法が、不動産の売却によって利益を得る方法です。別名キャピタルゲインと言います。売却益を得るためには、不動産を安く購入することがもっとも重要ですが、不動産市況によって利益が変動することもあります。

不動産投資の目的

不動産投資を行う目的としては、次のようなものがあります。

・老後の資金対策
・現時点における収入の増加
・節税対策
・生命保険代わり
・相続対策

これらの目的に適するのは「インカムゲイン」が得られる投資手法になります。いわゆる「大家さん」を目指すのですが、大家さんには2つの類型があります。

・副業大家さん
・専業大家さん

副業大家さんとは「サラリーマン大家さん」などと称されるように、本業以外に収入を得る目的で賃貸業を行う方法になります。専業大家さんとは「大家業」を本業とする場合で、複数の物件を所有し自ら管理をするケースもあり、プロフェッショナルな大家さんと呼ばれるようなケースも多いです。

節税対策、生命保険代わり、相続対策などを目的とする不動産投資では、あくまでも「副業」としての位置づけになりますが、老後や現時点での収入確保が目的の場合は、将来的に専業大家さんを目指す場合もあるでしょう。

このような点から、投資を始めるにあたっては、将来的な投資スタイルを明確にする必要があるでしょう。目指す投資スタイルによって、取得する不動産の種類が変わるからです。

投資スタイルを明確にしておかなければ物件選択の際、自身の目的に合致する物件を選ぶことができません。物件を紹介された不動産会社のペースで物件を選んでしまうことになりかねませんので、不動産投資の目的を明確にすることが重要です。

不動産投資のメリット

これから不動産投資を始める方は、事前にメリットについて確認しておくと良いでしょう。

少額の自己資金で高額な投資ができる

不動産投資の大きなメリットのひとつに、「不動産を購入するための資金を、金融機関から借りることができる」ことがあげられます。資金を金融機関から借りることにより、少額の自己資金でも不動産を購入することができ、レバレッジをかけることができます。

レバレッジとは「てこの原理」と言われるもので、小さい力で大きなものを動かせる=少額の資金で大きな投資ができることになり、その分、得られる利益も大きくなります。ただし、レバレッジが逆に働くと、大きな損失が発生することもあるので注意が必要です。

安定した長期の資産形成ができる

不動産投資では、長い時間をかけて資産形成をしていくことができます。とくに融資を受けて不動産に投資した場合には、賃貸収入からのキャッシュフローを得ながら返済が進んでいくので、長期にわたって確実に借入金の元金を減らすことが可能です。そして、不動産市況が良ければ、購入時よりも高く売却できることもあり、大きな利益を得ることもできます。

時間や手間を節約できる

不動産投資が、よく「不労収入」と言われる理由は、時間や手間がかからないからです。不動産の管理運営は、管理会社に管理を委託することができるので、自分の時間や手間を節約することができます。

また、管理運営を委託できることから、不動産賃貸業は、ほかの業種と違って、人を雇う必要も少なく、その分、人材の管理、育成、採用の手間がいらない点も大きなメリットです。

節税効果も期待できる

投資がほかの投資と大きく異なる点のひとつに、節税の幅が広いことがあげられます。株式投資などは、利益に対する税金が一律で決まっていますが、不動産投資は、運営の内容によって利益が変動するため、節税の幅も広くなります。

ただその分、単なる投資というより経営という要素の強い投資でもあります。また、相続税が発生する程度の財産を持っている人は、現預金や融資を受けて賃貸不動産を購入することで、相続税の節税ができることもあります。

不動産投資のメリットについて知りたい方は以下の記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。
不動産投資はメリットが多い?デメリットと対策も含め解説

不動産投資のリスク・デメリット

不動産投資は大きな投資になるため、当然どのようなリスクがあるのかは気になるところ。不動産投資のリスクやデメリットについても事前に確認しておきましょう。

収入減少リスク

不動産投資は家賃収入が発生することで収益を生みますが、その家賃収入が当初の想定よりも減少するリスクもあります。そのひとつとしてあげられるのが「空室の発生」です。空室の理由としては、物件自体の競争力の低下、杜撰な管理、学校や企業の移転、自殺や殺人など事故の発生があります。とくに、区分所有マンションや一戸建て貸家の場合、空室になると家賃がまったく入らないという深刻な事態になるため注意が必要です。

次に「家賃下落」です。こちらの理由も、空室の発生理由に加えて、地域の賃貸物件供給過多などがあります。サブリースという、管理会社が空室と家賃下落リスクを負う仕組みがありますが、この場合も、30年間の家賃保証と謳いつつ契約書には数年毎に見直しがある旨が記載されており、空室、家賃下落が酷くなったときに契約内容が変更されることによって、利益が減少するリスクがあります。

また、家賃滞納は、滞納額が大きくなると回収できなくなるリスクもあります。さらに、お金は入ってこないのに、税金上は収入に計上されてしまう点にも注意が必要です。滞納された金額を経費にする場合は、税法上で厳しい条件があるので、こちらも大きなリスクと言えます。

支出増加リスク

不動産投資には、さまざまな経費がかかりますが、その支出が増加すると、利益が減少するリスクがあります。家賃収入を安定的に得るためには建物の適切なメンテナンスが必要です。

経年劣化が進む建物の部位や設備には、小まめな修繕や交換などが必要になり、ランニングコストがかかります。さらに、屋上防水や外壁塗装などは定期的な大規模修繕として、通常のメンテナンスとは別に予算を組み、資金の準備や積立などが必要です。

また、金利が上昇すると利息が多くなるため、毎月の返済額も多くなります。元利均等などの場合は、元金の返済スピードが遅くなり、売却の際の手残りが少なくなるでしょう。

このほか、見落としがちな支出が広告料です。広告料は、空室が発生し仲介会社に客付けをしてもらった際に発生する支出です。空室が多くなったり、長期化したりすると、多くの広告料を支払って仲介会社に動いてもらう必要があり、支出額が多くなります。地域によっては、賃料の2カ月分、あるいは3カ月分の広告料が必要な場合もあります。

価格下落リスク

不動産投資により取得した物件は、築年数をかさねるごとに、建物の資産価値が低下します。さらに立地する地域の地価下落や家賃相場の下落などにより、将来の売却時、予想を超えた低価格になる可能性があります。

また、家賃相場の下落は景気低迷による賃貸市場全体の場合もあれば、物件が所在する地域における競合物件の増加など、地域特有の条件によって生じる場合もあります。

災害リスク

日本は地震が多い国ということもあり、地震や火災によって、建物が消失するリスクがあります。ほかにも、水害、土砂崩れ、大雪、火山の噴火、竜巻などの災害に遭うこともあるでしょう。これらのほとんどは損害保険をかけることで、リスクをカバーすることができますが、地震保険の場合は、被害の半額しか保険金が下りないケースも多く、リスクのすべてをカバーすることはできません。

売却しにくい

不動産投資は投資である以上「元本保証」はありません。しかし、株式投資のように元本を失うことはなく、比較的リスクの少ない投資と言われます。しかし現金化するうえでの「流動性」については注意が必要です。

不動産投資にはREITに投資する方法があります。REITは証券取引所での売買によるため、短期間での取引が可能で流動性の高い投資方法です。

一方、不動産の現物投資は物件を売却しようとしても、REITのような短期間での取引ができず、緊急時に現金化しようとしても難しい一面を理解しておく必要があります。

不動産投資のリスクについて知りたい方は以下の記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。
不動産投資の7つのリスクと7つの回避術

不動産投資を始めるまでの流れ

ここでは、不動産投資の始め方について解説します。しっかりとした手順を踏むことで、失敗のリスクを減らすことができるでしょう。

不動産投資の目的を決める

不動産投資を始めるうえで、もっとも大切なことは、目的を決めることです。なにを達成するために、不動産投資をするのか? そしてその目的を達成するためには、いつまでにいくらのお金を稼ぐ必要があるのか? これらを事前にしっかりと決めておきましょう。

知識を身につける

目的と目標が決まったら、次は知識を身につけます。書籍やセミナー、勉強会などに参加し、不動産投資で失敗しないための知識を高めていきましょう。

資金計画を立てる

ある程度の知識が身についたら、次に資金計画を立てます。現在、手持ちの資金はいくらか?そして、その資金で購入できる規模の物件から、家賃収入を得て経費を払い、返済することでどのぐらいの利益が発生するのかを、あらかじめイメージしていきます。

投資物件の選択

投資物件を選択する際には、投資対象のカテゴリーを決めてください。前述したように投資対象としては、マンション・アパート、戸建て、区分マンションといった居住系の物件と、オフィス、ホテル、物流施設などの事業系の物件があります。

さらに、物件種別としては「新築」あるいは「中古」があり、中古物件にも入居者がいる「オーナーチェンジ物件」と、入居者のいない「空き物件」があります。

新築と中古では、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが有利と簡単に結論付けることはできません。しかし、投資初心者が始める場合には、すでに入居者がおり家賃の収入が確保できる「オーナーチェンジ」物件が無難でしょう。

以下の表は、新築物件とオーナーチェンジ物件の比較をしたものです。

新築物件オーナーチェンジ物件
物件取得費 高い 低い
利回り 低い 高い
集客性 募集がしやすい 競合が多い
維持管理 低コスト(築10年目まで) 高コスト(築年数や管理状態による)


ただし、上の比較表はあくまでも一般論です。区分所有の新築物件には、投資初期段階でのリスクが低い物件もあり、ケースバイケースで判断することが重要です。

利益の確保

不動産投資による利益確保の方法には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」があることをすでに述べましたが、地価がどんどんあがっていくバブル崩壊前と違い、現代はインカムゲインを目的とした投資が一般的です。

家賃収入が目的となるため投資期間は10年を超えることが普通です。5年程度といった短期間の投資期間で、目標利益を確保できるケースは少ないと言えるでしょう。

そして、投資期間の設定は、スタート時点で行うことが望ましいです。仮に10年間で投資した資金を回収しようとした計画が、20年でようやく回収できるようになった場合、失敗とは言えないにしても成功とは言えません。10年の計画に20年かかったということは、投資収益率(ROI)が計画の半分になっているからです。

これに加え、投資の最終的な評価は、投資した物件を売却し損益を確定させたうえで計算します。不動産投資は投資期間中の利益の累積と、売却時の資金回収額の合計によって判断する必要があるからです。また、投資期間中の利益の累積についても、帳簿上の損益ではなく税金を支払ったあとの手取り金額(キャッシュフロー)で判断することが重要です。

物件取得時には出口戦略が必要

不動産投資を行うと、いつかは売却して投資を終了することになります。売却時期をいつにするのか、その時点の売却目標価格はどのくらいか、売却する時点の物件はどのような状態なのか、などについて取得時に計画を立てることが重要です。

これを「出口戦略」と言い、次のようなポイントを検討していくこととなります。

検討項目選択肢
売却予定時期 ローン返済終了時に合わせる
減価償却期間終了時に合わせる
10年後、15年後など任意の期間を定める
売却時の状態 オーナーチェンジで売却
自己使用する
建物を解体し更地として売却
売却予定価格 キャピタルゲインを見込む
ローン融資残高以上とする
物件入替に必要な資金計画に基づく


上記の選択肢は参考としてあげたものであり、投資目的に合わせて適宜検討するようにしてください。出口戦略で重要なことは、上記のような「出口戦略を描けない物件を選ばない」ことです。例としては、以下のような物件があげられます。

・将来において売却できるかどうか見とおしが立たない
・売却予定価格を想定できない

このような物件を取得すると売却予定が立ちません。投資戦略全体に影響を及ぼす可能性があり、投資がギャンブルになってしまうので取りやめるのが賢明です。

不動産投資を成功させるための秘訣について知りたい方は以下の記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。
投資のプロも注目する「不動産投資」を成功させるための秘訣を紹介!

不動産投資の戦略

不動産投資では、最初に戦略を立てたうえで、運用段階において必要な見直しをすることが重要です。それぞれの項目ごとに詳しく解説していきましょう。

目的・目標を明確にする

すでに「不動産投資の目的」で解説していますが、ここでは「戦略を立てるうえでの目的や目標」、すなわち、具体的な数値目標の設定方法を解説します。

まず、収入に関する目標設定を考えてみましょう。

・年間家賃収入を〇〇〇万円とする
・月次のキャッシュフローを〇〇万円とする

上記のように、明確な目標を設定すると投資対象の不動産が絞られてきます。例えば、年間家賃収入を500万円とした場合には、一戸建てや区分所有マンションでは達成しにくいため、1棟アパートがイメージされます。仮に、月次のキャッシュフローを50万円と設定した場合は、4階建て程度の賃貸マンションとイメージできるでしょう。

次に、資金回収の面から目標を考えてみます。

資金回収は、1.自己資金の回収と2.総投資額の回収を考える必要があり、例えば次のような設定の方法があります。

・自己資金は5年間で回収する
・総投資額は15年間で回収する

ここまでは「収益性」に着目した目標設定ですが、投資の「安全性」に着目した目標設定もあります。

・返済比率を40%以下に抑える
・設定入居率を80%にする

これらの設定は、シミュレーションを行うときの条件となり、実際の運営において目標をクリアできると、より安全性の高い投資となります。このように数値目標を設定すれば、検討する物件を取得するか否かの判断を合理的に行うことができます。無計画な投資を防ぐ効果が期待できるでしょう。

運用方法の検討

賃貸物件を所有して家賃収入を得ていくためには、入居者の募集、賃貸借契約締結、入退去の管理、家賃の集金、建物の管理などをスムースに行えるよう仕組みを作る必要があります。

このような仕組みを作り運用し収益をあげていくのが賃貸事業ですが、さまざまな業務を大家さんが自ら行うことを「自主管理」と言います。もうひとつの運用方法が「委託管理」と言い、賃貸管理会社に業務委託する方法になります。

「副業大家さんと専業大家さん」について述べた通り、自主管理が可能なのは専業大家さんであり、副業大家さんの場合は委託管理を選択するほうが望ましいです。

さらに、管理方法を検討する際に重要なポイントがあります。
それは「投資エリア」です。

もし、自主管理を前提とするならば、投資エリアが限定されます。居住地からそう遠くないエリア、具体的には居住地を中心に数十キロメートルの範囲が想定されます。できれば、居住地の行政エリア内が望ましいでしょう。理由は簡単であり「移動距離の短さ」です。

委託管理を前提とすると、距離的な制限はなく、海外の不動産も対象となり得ます。

遠隔地の不動産投資でネックとなるのが金融機関です。つまり物件取得のための融資付けが可能かどうかという点です。金融機関に関しては遠隔地の物件に限らず、居住地の物件取得であっても融資が受けられるかどうかは、常にネックになる課題です。

つまり、金融機関からの「与信」がなければ融資は受けられません。投資できる範囲や対象は極めて限られてしまい、運用方法を検討するうえで「金融機関の開拓」は重要な要素となります。
(なお「与信」については後段でもうすこし掘り下げて解説します。)

以上のように、運用方法の検討にあたり重要なポイントは以下の3つになります。

1.賃貸管理・建物管理の方法
2.投資対象エリアの選択および設定
3.金融機関の開拓

サブリースとは


運用方法を検討するにあたり、管理方法については自主管理と委託管理があると説明しましたが、委託管理に近い方法として「サブリース」があります。

委託管理は管理会社との業務委託契約になりますが、サブリースは管理会社と賃貸借契約を締結し、管理会社が「賃借人」になります。そのうえで管理会社が入居者を募集して賃貸借契約を締結し、転貸事業を行う方式です。

この方式は「賃貸住宅管理業法」に基づくもので、契約する管理会社は「特定転貸事業者」となり、賃貸住宅管理業法が定める一定の要件を満たした管理会社が対象です。そして、この管理会社は、一般的にサブリース事業者と呼ばれています。

大家さんはサブリース事業者に一括して賃貸物件を賃貸し、サブリース事業者は賃貸管理・建物管理を含めた賃貸事業のすべてのマネジメントを行います。さらに、大家さんに対する家賃は毎月一定額となり、例え空室が生じても、大家さんが受取る家賃収入が変わることはありません。

サブリース事業については「賃貸住宅管理業法」が制定される以前は、サブリース事業者とのトラブルが発生することもありましたが、同法が2021年6月から施行されており、今後は賃貸事業のひとつの業態として普及することが考えられます。

大家さんにとっては、賃貸経営に必要な業務をすべてサブリース事業者に任せることができ、安定収入が図れる方法となります。ただし、大家さんが受取る家賃は、本来の満室時家賃合計の80~90%に設定されるのが一般的です。

不動産投資に必要な条件

不動産投資には不動産物件を取得して行う「現物投資」と、REITなどの「間接投資」があります。間接投資は現金によるものなので自己資金が必要になりますが、現物投資は金融機関に対する担保があるので借り入れが可能です。つまり、現物投資の場合は、自己資金+金融機関からの借り入れにより投資を進めていくことになり、以下のような条件が必要になります。

金融機関の与信

与信とは、金融機関が投資を始めようとする相手に対し、融資できる限度(枠)などを設定することで、文字どおり「信用を与える」といった意味になります。

金融機関は、融資の申し込みがあると、相手の年収、勤務先、職業、保有資産、借入金、年齢などを含めた相手の信用力全般について評価を行い、加えて、取得予定の物件に対する担保力を評価し、貸付の判断を行います。

取得する物件が未定の場合も、金融機関にとって、「融資先としての条件を満たすかどうか」は、ある程度判断が可能なので、不動産投資を始めるにあたっては、まず取引のある金融機関に相談することが重要です。

属性(年収、勤務先、職業、・・・など)によって難しい判断をされることもありますが、金融機関によっては応じてもらえるケースも多いです。こうして、与信が期待できる金融機関をあらかじめ開拓しておけば、条件の良い物件が出てきたときにスピーディーな対応が可能になります。

自己資金

不動産物件の条件によっては、自己資金がなくても投資が可能なケースがあります。つまり100%融資であるフルローンを超え、諸経費も含めたオーバーローンによる投資です。金融機関がオーバーローンを可能とする物件は非常に少なく、投資機会を多くしようと考えると自己資金を準備することが望ましいです。

また、仮にオーバーローンが可能な物件であっても、自己資金は留保し、万が一のときに自己資金を投入できる準備が必要です。そもそも、自己資金を持たずに投資を開始することは、大変リスクの大きいことにあたるでしょう。

一般的なパターンとしては、諸経費分と物件取得のための手付金分を含めた2割前後の自己資金の準備が必要です。さらに突発的な修繕など、予定していない資金需要が発生することもあるので、できるだけ手元に自己資金を残しておくことが理想的です。

不動産投資が成功する方の特徴

ここでは、不動産投資で成功する方の特徴を見ていきましょう。

借り入れができるだけの年収がある方

不動産投資に成功する方の特徴としてあげられるのは、まず、ある程度の年収があることです。不動産の現物投資は全額自己資金で行うことは少なく、レバレッジ効果を得るためにも、金融機関からの借り入れが必須であることがほとんどです。金融機関からの借り入れにおいて、年収は重要なポイントであり、一定以上の安定した収入が必要になるでしょう。

では、最低必要な年収はいくらになるのでしょう?

その目安は、投資物件の取得の際に借り入れる融資額に関係します。現物投資の投資対象の中で、比較的少ない資金でできるのは区分所有マンションです。この場合、年収400万円以上が望ましく、物件の規模が大きく多額の借り入れが必要な1棟マンションなどは、1,000万円以上が望ましいと言えます。

不動産投資に必要な年収については、以下の記事も参考にしてみてください。
不動産投資に必要な年収|年収別の投資スタイルとは?

勤続年数3年以上

不動産投資に成功するには「勤続年数」も関係します。やはり金融機関による与信の関係ですが、年収のほかにも勤続年数を評価します。勤続年数が長いほど安定性があると判断するためであり、その目安は一般的には「3年以上」と言われますが、金融機関によっては「1年以上」とするケースもあります。

また、金融機関が規定する勤続年数より短い場合であっても、専門的な職種で同一職種間での転職の場合は、考慮されるケースもあるようですが、金融機関の選択肢を広げる意味で「3年以上」を目安と考えるほうが望ましいでしょう。

貯蓄がある

不動産投資には自己資金の投入が必要です。その財源は貯蓄になるため投資成功の鍵として「貯蓄」がポイントになります。
さらに、物件取得後も自己資金に余裕のあるほうが望ましく、貯蓄は多いほうが成功する確率は高まります。不動産投資は比較的リスクの低い投資ですが、災害による被害により家賃が入らなくなるなど、思わぬアクシデントに見舞われることもあるでしょう。

家賃収入が入らない期間であってもローン返済は必要であり、その間は自己資金で耐える必要があります。返済が困難になり物件を売却しなければならない事態になると、投資活動はそこで終了しなければなりません。万が一の場合の資金をカバーできるのが貯蓄と言えるでしょう。

不動産投資が失敗する方の特徴

ここでは、逆に不動産投資で失敗する方の特徴を見ていきましょう。

短期的な利益を求めている

不動産投資はある程度の長い期間を要するものであり、短期間でのリターンを期待する投資スタイルは失敗の原因になることが多いです。不動産投資における短期間でのリターンとは「キャピタルゲイン」を目的としたものですが、かつて日本においては「バブル経済」という時期があり、不動産が急激に値上がりする状態を経験しています。

「バブル経済」はいくつかの異常な要因がかさなって生じたものですが、行き過ぎた状態は「バブル崩壊」へとつながりました。不動産投資は短期的な利益を求めず、長期的に安定した利益を求めることを鉄則としたいものです。

安定した収入がない

賃貸経営は長い期間継続していると、空室が増え、家賃収入が大きく減るといった状態を経験するものです。2カ月ないし3カ月を経て、また入居者が増えるようになるといった中で、収入が減った期間もローン返済は続きます。

そのようなローン返済の財源が家賃収入で賄えない場合、頼りにするのが本業の収入です。万が一の場合の資金捻出ができない場合は、ローン返済を滞納し経営破綻に追い込まれます。そのためにも安定した収入がない場合の不動産投資は、大きなリスクを背負うことになると言えるでしょう。

コツコツ勉強が苦手

不動産投資はさまざまな知識を吸収し、賃貸運営のノウハウを勉強することも重要です。現物投資の不動産投資は賃貸経営を行っていると認識する必要があり、「投資家」としての勉強に加え「賃貸経営者」としての勉強が必要と言えます。

そのためには、インターネットで得られる情報をはじめ、セミナーや書籍あるいは大家さん同士の意見交換など、あらゆる機会を利用してさまざまな知識や情報を吸収しなければなりません。このようなコツコツとした勉強が苦手という方は、ぜひその苦手意識を克服するようおすすめします。

不動産投資に関するよくある質問

不動産投資は、自己資金がなくてもできますか?

10年から20年ほど前は、金融機関によっては融資が出やすかったこともあり、フルローンやオーバーローンなど、自己資金が少なくても不動産投資ができた時代がありました。

しかし現在は、融資も厳しくなり、物件価格の1割~3割の自己資金が必要となるため、自己資金がまったくない状態では、不動産投資を始めることは難しくなっています。

不動産投資をするためには、いくらぐらいの年収が必要ですか?

現金購入であれば、手元に現金があれば良いので、年収は問いませんが、融資を受けて物件を購入する場合は、金融機関の審査があるため、ある程度の年収や勤続期間が必要となります。

購入する物件の規模にもよりますが、1億円前後の物件であれば、最低でも年収600万円以上なければ、厳しいイメージです。

一棟物件は金額が大きいので区分所有マンションから始める方がいいですか?

一棟物件は、一般的には数千万円以上の投資になりますので、融資額も大きくなり、リスクも高く感じるため、躊躇する方も多いです。そのため区分所有マンションから始めたいという方もいます。

もちろん、低額の区分所有マンションから始めて、不動産投資とはどのようなものかを感じてみるのもいいでしょう。しかし、区分所有マンション投資ならではの難しさやリスクもあります。低額だからと安易に始めるのではなく、どのようなリスクがあるのかを把握したうえで投資をするようにしましょう。

不動産投資で節税できますか?

不動産投資をすることによって、今まで使えなかった経費が使えたり、あるいは相続税の節税になったりするので、節税ができると言うことはできるでしょう。

しかし、そもそも不動産投資は利益を得るためにするものであり、利益が出る不動産投資と、節税は相反するものだということを認識しておくことが重要です。しっかりと利益が出る不動産投資をしたうえで、その利益をどのように節税できるかという順番で考えないと、思わぬ損失を被ることもあります。

まとめ

不動産投資を始めるには、まず、「目的を明確にすること」が重要です。目的がはっきりすると投資戦略が具体的になり、成功率が高くなります。また、不動産投資を始めるためにはコツコツとした勉強も必要であり、目的意識が高いほど努力を惜しみません。

これまでお会いした投資家の方は、みなさん勤勉な方といった印象があります。真面目にコツコツと努力され、さらに投資物件である建物への愛着と、入居者への思いやりを感じる方が多かったように感じます。不動産投資としての現物投資を始める場合は、良き経営者を目指す意識で始めてみてください。

不動産投資を行いたいがまだ一歩踏み出せない方は以下の記事も、ぜひご覧ください。
これから不動産投資を始める人へ、3つの「壁」の乗り越え方

弘中 純一
弘中 純一

弘中 純一一級建築士・宅地建物取引士 

国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にてコンクリート系工業化住宅システムの研究開発に従事、その後工業化技術開発を主体とした建築士事務所に勤務。資格取得後独立自営により建築士事務所を立ち上げ、住宅の設計・施工・アフターと一連の業務に従事し、不動産流通事業にも携わり多数のクライアントに対するコンサルティングサービスを提供。現在は不動産購入・投資を検討する顧客へのコンサルティングと、各種Webサイトにおいて不動産関連の執筆実績を持つ。

叶 温
叶 温

叶 温

叶税理士事務所代表。広告代理店の営業として3年間勤務後、税理士を目指し会計事務所に転職。勤務時代に年収400万円で、1億円のマンションを購入。現在は自社ビルを含む2物件のオーナーでもある。著書『大家さん税理士が教える 不動産投資で効率的にお金を残す方法』(ぱる出版)他。

あなたの投資用不動産、今の資産価値は?査定依頼はこちらあなたの投資用不動産、今の資産価値は?査定依頼はこちら
 

関連記事

不動産投資ニュース

業界の動向やトピックスなど、不動産業界の最新ニュースをお届けします。

  1. 不動産投資、収益物件、事業用不動産サイト「ノムコム・プロ」
  2. 不動産投資コラム
  3. ノウハウ
  4. 不動産投資とは?【初心者向け】仕組みや、メリット・デメリットを解説