不動産税金ガイド

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2020年度 主な不動産税制の改正点

2020年度は、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進及び投 資や賃上げを促すための税制上の措置、連結納税制度の抜本的な見直しが行われました。さらに、経済社会の構造変化を踏まえ、ひとり親家庭の子どもに対する公平な税制の実現、 所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応、納税環境の整備等が行われました。

【1】配偶者居住権と配偶者敷地利用権

平成30年7月の民法改正により、平均寿命の伸長に伴う生存配偶者の相続後の居住権を長期的に保護するために、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物の無償での使用を、終身又は一定期間、生存配偶者に認める権利として配偶者居住権が創設され、令和2年4月1日以後に開始する相続から適用となります。遺贈の場合には、令和2年4月1日以後に遺言書を作成する必要があります。配偶者居住権は登記が必要で、売却できず、合意、放棄、配偶者の死亡により消滅します。建物は、被相続人所有であることが必要で、配偶者以外の者と共有していた場合は適用が受けられません。

1)配偶者居住権(配偶者敷地利用権を含む)の税制上の取扱い
  • ①相続税の評価方式は、平成31年度税制改正で相続税法に第23条の2として定められ令和2年4月1日以後から適用となります。
  • ②配偶者居住権は、原則として譲渡できませんが、収用等の規定により譲渡しなければならなくなった場合は、収用等の場合の譲渡所得の課税の特例の適用があります。
  • ③配偶者居住権が消滅する場合(配偶者と配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間での合意、配偶者が配偶者居住権を放棄するとき等)に、合意や放棄により利益を受ける居住建物の所有者から金銭の支払いを受け取る場合には、譲渡所得となります。無償若しくは著しく低い支払額の場合には、贈与税の課税を受けることがあります。
  • ④配偶者死亡、存続期間の満了、居住建物の滅失により消滅する場合は、相続税は課税されません。
2)配偶者居住権(配偶者敷地利用権を含む)のポイント
  • ①生存配偶者は、死ぬまで居住する権利を確保できる
  • ②遺産分割協議の際、居住権の取得であり、所有権に比べて少額となる分、他の財産を取得することが可能となる。
  • ③遺言書による取得の時に、遺留分の滅殺請求を受けた場合に遺留分侵害額が小さくなる。
  • ④譲渡・売却ができない。

【2】低未利用土地等の長期譲渡所得の特別控除

1)概要

個人が、令和2年7月1日から令和4年12月31日までの間において、都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を500万円以下で売った場合には、その年の低未利用土地等の譲渡に係る譲渡所得の金額から100万円を控除することができます。その譲渡所得の金額が100万円に満たない場合には、その譲渡所得の金額が控除額になります。

2)適用要件
  • ①売った土地等が、都市計画区域内にある低未利用土地等である。
  • ②売った年の1月1日において、所有期間が5年を超えること。
  • ③売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。特別な関係には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
  • ④売った金額が、低未利用土地等の上にある建物等の対価を含めて500万円以下であること。
  • ⑤売った後に、その低未利用土地等の利用がされること。
  • ⑥この特例の適用を受けようとする低未利用土地等と一筆であった土地から前年又は前々年に分筆された土地又はその土地の上に存する権利について、前年又は前々年にこの特例を受けていないこと。
  • ⑦売った土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど、他の譲渡所得の課税の特例を受けないこと。

※[国税庁 No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除]より抜粋

【3】特定の事業用資産の買換えの特例

短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限が3年延長されます。

【4】住宅借入金等税額控除

住宅の取得等をした家屋(以下「新規住宅」という。)をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に新規住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産の譲渡(以下「従前住宅等の譲渡」という。)をした場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき次に掲げる特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができません。

  • ①居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
  • ②居住用財産の譲渡所得の特別控除
  • ③特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
  • ④既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例

(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に従前住宅等の譲渡をする場合について適用されます。

※[令和2年度税制改正大綱]より抜粋

【5】国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例

令和3年以後の年分について、国外中古建物の不動産所得に損失が生じる場合に、国外中古建物の耐用年数について一定の方法(いわゆる簡便法)により算定して減価償却費を必要経費に算入しているときは、国外中古建物の不動産所得の損失のうち、その国外中古建物の償却費に相当する額は生じなかったものとみなされ、国内所得との損益通算はできません。

【6】未婚のひとり親に対する税制上の措置、寡婦(夫)控除

未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直しがされます。

  • ①未婚のひとり親に対する税制上の措置
    • (1)居住者が、現に婚姻をしていない者のうち次に掲げる要件を満たすもの(寡婦又は寡夫である者を除く。)である場合には、その者のその年分の総所得金額等から 35 万円が控除されます。
      • ・その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が 48 万円以下であるものに限る。)を有すること。
      • ・合計所得金額が 500 万円以下であること。
      • ・次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。
        • a その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者に係る住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされた者がいないこと。
        • b その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされていないこと。
    • (2)上記(1)の控除については、給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用できます。
    • (3)その他所要の措置が講じられます。
  • ②寡婦(寡夫)控除の見直し
    • (1) 扶養親族その他その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48 万円以下であるものに限る。)を有する寡婦の要件に、合計所得金額が500 万円以下であることが加えられました。
    • (2)寡婦及び寡夫の要件に、次に掲げるいずれかの要件を満たすことが加えられました。
      • ・その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者に係る住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされた者がいないこと。
      • ・その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされていないこと。
    • (3)現行の寡婦控除の特例が廃止されます。
    • (4)その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が 48 万円以下であるものに限る。)を有する寡婦に係る寡婦控除及び寡夫控除の控除額を 35万円に引き上げられます。
    • (5)その他所要の措置が講じられます。

※[令和2年度税制改正大綱]より抜粋

【7】国外居住親族の扶養控除

日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用について、次の措置が講じられます。

適用 2023年分以降
  • ①非居住者である親族に係る扶養控除の対象となる親族から、年齢 30 歳以上 70 歳未満の者であって次のいずれにも該当しない者が除外されます。
    • a 留学により非居住者となった者
    • b 障害者
    • c その居住者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払を38 万円以上受けている者
  • ②年齢 30 歳以上 70 歳未満の非居住者であって上記①a又はcに該当する者に係る扶養控除の適用を受けようとする居住者は、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収、給与等の年末調整又は確定申告の際に、上記①a又はcに該当する者であることを明らかにする書類を提出等し、又は提示しなければなりません。
  • ③その他所要の措置を講ずる。

※[令和2年度税制改正大綱]より抜粋

【8】中小企業者の少額減価償却資産の特例

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例について、対象となる個人の要件のうち常時使用する従業員の数の要件を 500 人以下(現行:1,000 人以下)に引き下げた上、その適用期限が2年延長されます。

※[令和2年度税制改正大綱]より抜粋

【9】居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の適正化

居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度について、次の見直しがされます。

適用 2020年10月1日以後の仕入れ
  • ①居住用賃貸建物の課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。ただし、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については、引き続き仕入税額控除制度の対象とする。
  • ②上記①により仕入税額控除制度の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算して調整する。

※[令和2年度税制改正大綱]より抜粋

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・当サイトの内容は、2023年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。
年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
・税金は複雑な問題もありますので、ケースによっては税務署や税理士など専門家にご相談ください。

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