トイレのリフォームは、住まいの中では比較的コンパクトな空間だからこそ、気軽に思い通りに変えやすいのがメリットのひとつです。
トイレは近年、一体どのようにリフォームされているのでしょうか。その傾向や、押さえておきたいポイントなどについて、実例とともに紹介します。
トイレの便座は、浴槽と同じく肌に直接触れる部分なので、中古マンションを購入すると、前の住人が利用していたトイレを使うことを避けたい気持ちから交換するケースが多くあります。
また、トイレタンクと一体化している手洗いではなく、トイレ空間に独立した手洗い場を設置したいというニーズがあります。多くの家庭で、手洗いのできる洗面所は脱衣所や洗濯機置き場と一緒になっているため、生活感が出やすいのが難点です。そのため、コロナ禍を経て、来客が使用することも多いトイレを、気軽に手が洗える場所としてリフォームしているようです。
便器の故障による交換や、「お手入れ性能を上げたい」など、性能アップの観点からトイレをリフォームする人がいます。タンクレストイレは凹凸が少ないため便器の外側の掃除がしやすく、自動洗浄機能の向上によって内側の掃除も楽になっています。また、便器に付属の手洗い器の掃除を負担に思われる方も多く、先に紹介したように「トイレに手洗い場を設けたい」というニーズが高まっています。
ほかには、便器だけではなく、トイレの壁や床を張り替えるリフォームがあります。浴室との違いとして、トイレは来客が足を踏み入れて利用する空間であることが挙げられます。つまり「お客さんの目線」も気になるところなので、機能や日常の使い勝手だけでなく、見映えを意識したリフォームのニーズも高いです。
代表例として壁をアクセントクロスに変えたり、間接照明を入れたり、タイルを張るなどがあります。床は一般的に塩ビ系のフロアタイルを使用することが多いのですが、ラグジュアリーな雰囲気を希望する場合は、天然石やタイルの床にリフォームする方もいます。
見栄えにこだわるリフォームを行う際は、すっきりと洗練された印象になるタンクレストイレにして、あわせて自動水栓の手洗い場を新設するのが現在のトレンドです。
最新トイレの機能として「除菌水」というものがあります。メーカーの中には、「便座の裏まで除菌水でキレイに洗うトイレ」をアピールしているところもあり、お手入れのいき届かないところまで綺麗にしてくれるのがポイントです。
「お手入れしやすいトイレ」という観点では、「浮いているトイレ」もあります。これは床と接する部分がなく、壁から便器が突き出ている形で、便器の下まで掃除道具を入れることができ、お掃除がしやすいというものです。
「トイレを綺麗な空間にしたい」というユーザーのニーズには根強いものがあります。お客様と一緒にメーカーのショールームへ行くと、「今のトイレは、こんなに掃除しやすいんだね」と驚きの声が上がります。
さらに機能について紹介すると、最近は節水トイレが一般的です。30年前は1回用を足すと、流す水が13L程度必要でしたが、今は両サイドから水が流れたり、渦を巻くように水が流れたりするなど、流し方が工夫されていて、1回につき最少で3.8Lの水で済むようになりました。
トイレでも省エネはトレンドで、指定されている節水トイレにリフォームすると国の「子育てグリーン住宅支援事業」など、補助金が出る場合があります。「補助金が出るなら、トイレをリフォームしようか」という人も多いのです。
「子育てグリーン住宅支援事業」についてもっと詳しく
→子育てグリーン住宅支援事業公式ホームページ
浴室をラグジュアリーな空間にするリフォームが注目を集めていますが、トイレでラグジュアリー感を演出したい場合、間接照明を入れるなどしてシックで薄暗い空間にするのがトレンドです。
壁面には、デザイン性が高く、消臭機能もあるタイルがよく採用されます。壁全面ではなく、正面の壁だけなど一面だけにアクセントとしてタイルを張って、ラグジュアリー感を演出します。
トイレのブランドとしては、TOTOの「ネオレストNX」が、ラグジュアリーなブランドと言えるでしょう。もしトイレにスペース的な余裕があれば、ショールームなどで全方向から見てみてください。スタイリッシュさが際立ちます。
TOTOのトイレブランド「ネオレスト」は、最上級である「NX」のみならず、どれもデザイン性が高く、お手入れ性能が高いラグジュアリーなトイレです。
LIXILならば、「サティス」というブランドがあります。タンクレスで、お手入れ性能に優れており、カラーバリエーションが豊富なトイレです。
パナソニックのトイレブランドなら「アラウーノ」ですが、こちらはラグジュアリー感よりも、水の流し方や泡による洗浄など、先進テクノロジーを採用している点が特徴です。
トイレ単体の価格は、最上級のものは100万円程度、一般的なものは30~40万円程度です。手洗い場の設置については、排水・給水などを大幅に変更しなくてもトイレ内に新設できる可能性があり、トイレ価格+施工費の全体で50~60万円くらいが目安になるでしょう。
タンクレストイレは、築10年以内のマンションならば大体どの住戸にも取り付けることが可能ですが、先ほど挙げたTOTOの「NX」は重く、リフォーム作業にあたる人員が2人以上いないと運ぶことができません。施工費が割高になる恐れがあるため、見積りの確認とともに管理規約などに抵触しないかなどを事前に確認した方がいいでしょう。
レイアウト変更でトイレの向きを縦から横に変えるようなリフォームの場合、排水管の位置などが理由で移設やアレンジが難しい場合があるので注意が必要です。施工会社に可能かどうかを確認しましょう。
また、身だしなみのチェックができるよう、トイレ空間に鏡を取り付けたいという希望をいただくことがあります。この場合に注意が必要なのが、便座の開閉や便器の洗浄にリモコンを使うタイプのトイレの場合、鏡の取り付け位置によってはリモコンのセンサーが鏡に干渉して誤作動を起こすことがあります。鏡の取り付け位置に気を付けるよう、施工会社にも相談しておきましょう。
今回紹介した注意点やポイントをふまえて、家族の利用やお手入れはもちろん、来客にとっても気持ちのよいトイレ空間になるようにリフォームを検討していただきたいと思います。
野村不動産パートナーズ株式会社
建築・リフォーム業界に携わり約20年、マンションのリフォームを数多く手がけ、リフォーム現場の最前線で豊富な経験と広い知見をもとに活躍中。
一級建築施工管理技士、一級管工事施工管理技士の資格を保有。
物件を買う
物件を売る
エリア情報