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不動産投資の最新動向

不動産投資の物件選びのポイントや不動産投資の出口戦略、利回り・不動産価格・マーケット情報など不動産投資に関する最新動向をわかりやすく解説いたします。

宮澤 大樹
野村の仲介+
資産コンサルティング部
1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。
その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
不動産投資マーケット、物件価格・利回りの動向

損益分岐点から考える「値下がりしにくい物件」とは

「利益が出るか、損をするか」という収支の境目を損益分岐点といいますが、不動産投資をする際にも重要な判断基準です。損益分岐点のシミュレーションによって、「値下がりしにくい物件」が見えてきます。

2016年3月23日

キャッシュフローの損益分岐点は「稼働率」で判断する

投資物件を選ぶときは、将来の出口を考えて「売りやすい物件」を選ぶことが重要です。売りやすい物件とは、「購入希望者が多い物件」です。

投資物件の購入希望者のだれもがチェックするのは、賃料収入をベースにした「利回り」でしょう。投資目的や予算は人によって違いますが、税引き後のキャッシュフローがマイナスなら投資物件を持つ意味がない、というのは原則共通だからです。

ある物件について、手残りがどの程度になるかは、この利回りの水準だけで決まるのではありません。ローンの融資条件、物件の稼働率、適用税率(所有形態の違いや、個人の場合には不動産所得以外の所得により変わります)など、購入者自身の収入や運用状況に左右されます。

たとえば、価格が7,800万円、表面利回りが7.69%の木造アパートを購入したAさんの事例を見てみましょう。

Aさんは課税所得が約1,000万円で、この物件をフルローンで購入しました。融資条件は、年利1.875%の30年返済です。その結果、満室時想定の手残りは約150万円/年となりました。まずまずのリターンといえるでしょう。

もっとも、常時満室というのは現実的ではありません。そこで、私が物件を紹介するときには、「90%~95%稼働時の試算」(図では95%稼働時)も出しています。この例の95%稼働時だと、手残りは約132万円となります。

さらに推奨しているのは稼働率の「損益分岐点」の試算です。不動産投資における損益分岐点とは、手残りがマイナスにならない賃料収入の下限で、稼働率で表します。ここでいう稼働率は、満室想定の賃料収入を100とした賃料収入の割合です。入居率の低下や家賃の値下げで収入が減った場合、どの程度まで赤字にならないのかを試算しておくわけです。この例でいけば、稼働率70%(家賃の下落は加味しない)が損益分岐点となります。

このように、表面利回りが7~8%以上と一定の利回りを確保している物件は、買い手が付きやすいといえるでしょう(出口が取りやすい)。都心の物件では、表面利回り5%以下でも購入希望者は少なくありません。都心物件は、相続税対策やキャピタルゲインを狙うなど、キャッシュフローだけを目的にしていないからです。但し、表面利回りの高さが「売りやすい物件」の条件の一つになることは間違いないでしょう。

「売りやすい=値下がりしにくい物件」の条件

購入希望者が多くて売りやすい物件ということは、値下がりしにくいということにもつながります。では、値下がりしにくい物件の条件を整理していきましょう。

○「利回り」の高い物件
前項で説明したように、フルローンで購入しても十分な手残りが出る、稼働率の損益分岐点が低いなど、投資対象となりやすいからです。

○「残存耐用年数」が長い物件
融資を受ける際に長期で返済計画を立てることができます。返済期間を長く設定できるため、多くの借入をしても手残りが多くなるので、ローンを組みやすくなるのです。構造ごとに定められている法定耐用年数から築後年数を引いたのが残存耐用年数です。

仮に、築15年で物件を購入して、5年後の築20年で売却するとしましょう。法定耐用年数が47年の鉄筋コンクリート(RC)造なら、売却時に残存耐用年数が27年あるので、融資も難しくありません。

しかし、耐用年数22年の木造の場合は、残存期間は2年しかないため、融資が受けにくくなります。また、総じて日本人は新しいものを好む傾向にあるので、なるべく新しく、耐用年数が多く残っている物件が売れやすいといえるでしょう。

ただ、最近は法定耐用年数を過ぎた木造アパートでも融資する地方銀行や信用金庫が登場しています。それもあってか、所得税の節税対策を重視する高額所得層は、あえて築年の古い物件を選ぶ場合も増えています。

法定耐用年数を過ぎた木造建物は4年間で償却するため、短い期間ですが、単年度でみると減価償却費が大きく取れます。一定期間(この例だと4年間)は、不動産所得が大きなマイナスとなり、他の所得と損益通算することによって所得税が大幅に低くなる(還付される)からです。このようなケースでは、稼働率の損益分岐点はぐっと下がります。

図2は、課税所得2,500万円のBさんが築25年の木造アパート(6,000万円、表面利回り7.92%)を購入したときの試算です。損益分岐点は稼働率1%、つまり、ほとんど入居者がいなくても収支はマイナスになりません。稼働率50%でも100万円以上の手残りがあり、自己資金は3年で回収できます。稼働率1%というのは極端ですが、これにはからくりがあります。

稼働率1%でなぜプラスになるかというと、こちらは不動産所得の赤字と給与所得を損益通算し、所得税還付を受けることによって、実質的にキャッシュフローがプラスになるのです。4年間は損益通算し稼働率が低くてもキャッシュフローを得ることができます。

しかし、5年目以降は減価償却費がなくなるので、所得税の支払いが発生します。そのため、この投資は短期間での投資に向いているといえます。例えば、購入して5年目に定年となるなど、給与所得がなくなる場合には、このような物件を購入するケースが考えられます(給与所得がなくなるため、適用税率を下げることができる)。

それ以外には、購入5年目にこの土地に建てかえの計画をして、入居者の退去(立ち退き交渉)を時間をかけて進めることも可能です。こうした需要があることも覚えておきましょう。

○空室率が低い物件
満室想定時の表面利回りが高くても、売却する時点で実際には空室が目立つような物件は買主から避けられる傾向があります。空室はなるべく少ないほうが良いのですが、満室にしようと家賃を下げると賃料収入が減り、表面利回りが下がって売りにくくなります。空室対策としては、敷金礼金を下げる、フリーレントをするなど、初期費用を安くする方法を優先させたほうが原則望ましいでしょう。

○グロス(総額)が小さい物件
経験上、1億円以内がもっとも需要が高い価格帯といえます。1~2億円までが購入希望の平均的なゾーンでしょう。4~5億円以上になると、都心部以外ではなかなか買い手が付きません。融資の通りやすさからいっても1億円以内がベターです。金融機関の審査も1億円以下の融資であれば、比較的緩い傾向があります。

○見栄えのよい物件
維持管理がきちんと行われているということです。外回りの汚れや傷みが放置されていると、「定期点検や計画修繕がおろそかになっているのではないか」「購入後に修繕コストかかさむのではないか」とみられがちです。

次のページでは、売却時の損益分岐点について解説します>>

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