【大阪市中央区】「大阪城」をはじめ歴史的遺産が多く、経済や文化の中心地としてにぎわう中央区の防災対策
中央区は1989(平成元)年に旧東区と旧南区の合併により誕生した区です。大阪都心6区の一角にあり、商業・経済の中心地としてにぎわっています。また区内には「大阪府庁」も所在します。
区の北西部は大阪を代表するビジネスセンターで金融機関や大手企業が立地、北東部は「大阪城公園」を中心とした緑あふれる都心のオアシス、中心部には繊維関係の卸商・問屋街、南部はミナミの一大繁華街、南東部は由緒ある寺社が多いというように、同じ中央区の中でもエリアごとに表情が異なります。
地形的には、東部は上町台地上にあり大阪市内で最も標高が高く、それ以外の区域は低地となっています。また、北区との境を大川・土佐堀川、都島区との境を寝屋川が流れるほか、区内を第二寝屋川、東横堀川、道頓堀川が流れています。
中央区では区の特性や自助・共助の重要性を踏まえて、「大阪市中央区地域防災計画」を策定しています。多くの人に内容を理解してもらい、自助および共助を強化して防災力を高めていけるように、災害想定や対策についてイラストや画像を多用して分かりやすくまとめています。
中央区で想定される大きな地震には、直下型(活断層型)地震と海溝型地震があります。地域防災計画によれば、中央区では直下型地震のうち、豊中市から中央区の東を通って岸和田市に至る活断層「上町断層帯」の地震による被害が最も大きいとされ、強い揺れへの備えが必要です。
また海溝型地震では「南海トラフ巨大地震」による被害が懸念されます。海溝型地震の場合は津波が発生する可能性があり、中央区では「海抜の高い上町台地に向かって、御堂筋より東側へ徒歩で水平避難」することを基本としています。水平避難ができない場合は、「水害時避難ビル」や近くの堅固な建物の2階以上に避難します。
地域防災計画ではまた、(1)災害に対する事前の備え、(2)災害直後からの応急対策期における対応、(3)復旧期の対策(生活再建)について、中央区の取り組み(公助)、家庭や事業所での対策(自助)、隣近所・地域での対策(共助)に分けて解説されています。
「中央区防災マップ」では、地震などの際にとりあえず避難する「一時避難場所」、自宅で生活できなくなった人が避難生活を送る「災害時避難所」、大規模火災から避難する「広域避難場所」、津波や河川氾濫の際の「水害時避難ビル」などの位置を知ることができます。
中央区の広域避難場所としては「大阪城公園一帯」が指定されているほか、区域のすぐ外側にある「中之島」(北区)、「靱公園」(西区)への避難も可能です。
区全体の防災マップのほか、中央区独自の取り組みとして「地域別災害対応マップ」が挙げられます。災害に対する地域ごとの事情を認識するためにワークショップやアンケート調査などを行い、大阪城一帯を除いた区域を6つに分けて6種類の地域別マップを作成しています。
「地域別災害対応マップ」の地図面には避難所等の情報のほか、AED、災害時帰宅ステーション、公衆電話、公衆トイレ、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドの位置など、災害時に役立つより詳細な情報が掲載されています。さらに裏面には、地震発生時の行動のポイントや非常持ち出し品チェックリストなども掲載されています。
「水害ハザードマップ」は、淀川が氾濫した場合、大和川が氾濫した場合、寝屋川流域が氾濫した場合に分けて作成されています。寝屋川流域(寝屋川・第二寝屋川・平野川・平野川分水路・古川)が氾濫した場合、中央区では東部の一部エリアで浸水の可能性があるとされています。このほか「高潮ハザードマップ」、「内水氾濫ハザードマップ」、および南海トラフ巨大地震が発生した場合の「津波ハザードマップ」も作成されています。
また、大阪市の行政情報や地域情報を提供する「マップナビおおさか」でも、震度分布予測図や浸水想定区域図、防災関連施設などを検索することができます。
これらのマップで自宅や通勤・通学先などの災害リスクを把握し、避難場所や避難ルートなどをシミュレーションしておくことが、災害への大きな備えとなります。
大阪府や大阪市では防災に関してさまざまな形で情報公開をしています。台風・地震・津波などの災害が発生した時にまずチェックしたいのが、「おおさか防災ネット」です。ここでは地震・津波情報、台風情報、気象警報・注意報、避難情報、避難所情報、交通・道路・ライフライン情報などをいち早く入手できます。
スマートフォンやタブレット端末向け「大阪市防災アプリ」もぜひ有効活用したい防災ツールです。2023(令和5)年6月のリニューアルにより、防災シグナルの導入(警報等の発令時にトップ画面の色の変化でお知らせ)、気象情報や防災マップ機能のさらなる充実、日本語・英語・中国語・韓国語に加えて「やさしい日本語」での情報発信も行うなど、新機能が追加されてより使いやすくなっています。
このほか大阪市では、集中豪雨や台風による浸水被害を最小限に抑えるため、市民に降雨状況を知らせる「降雨情報提供サービス」を実施しています。降雨情報は1分間隔で配信されており、タイムリーな情報が入手可能です。
地域防災力向上のための取り組みの一つに「地域防災リーダー」の育成があります。地域防災リーダーとは、「自分たちのまちは自分たちで守る」という防災意識のもと、大規模災害が発生した際に近隣住民の先頭に立って初期消火活動や救出・救護活動を行うリーダーのことです。
また、平常時には地域の防災機材の点検や防災啓発に取り組むなど、地域の自主防災組織の中核的な存在となっています。
中央区では現在、総計約450名の「地域防災リーダー」が活動しており、地域ごとに隊長1名の下、「情報班」、「初期消火班」、「救出・救護班」、「避難誘導班」、「給食・給水班」の5つの班が編成されています。区役所や消防署が実施する研修・訓練に毎年参加することが義務付けられており、地域を守るための知識・技術の習得に努めています。
中央区ではこのように、地域ごとの特性や事情を考慮しつつ、地域防災力を高めて災害に強いまちづくりを推進するためのさまざまな取り組みが行われています。
- 掲載日
- 2023/10/26
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。