【東京都足立区】四方を川に囲まれた自然と歴史のまち。主要ターミナル「北千住」駅を擁する足立区の防災対策

足立区は東京23区の最北端に位置します。23区内では大田区、世田谷区に次いで3番目に面積が広く、南部の千住地区を要としてやや扇状の地形をしています。
区内は全体的に平坦な低地となっており、1930(昭和5)年に東京を水害から守るために開かれた荒川(放水路)が区域を二分しています。南に隅田川、東に中川、北に毛長川、西に新芝川と四方を河川で囲まれているほか、区の東部を南北に綾瀬川が縦断しており、緑と潤いあふれる自然豊かな環境が魅力です。
「北千住」駅のある千住地区は、江戸時代に日光街道・奥州街道の「千住宿」として栄えた地です。そのにぎわいは江戸四宿の中でも最大級だったといわれ、今でも宿場町の名残や人情味あふれる文化を随所に感じることができ、歴史のまちとしても人気を集めています。

足立区は、2019(令和元)年の台風19号の際の情報発信の遅れを教訓に、2022(令和4)年に「足立区災害ポータルサイト」を開設しました。これにより災害の発生状況や区の対応など区民が必要とする情報が、分かりやすい形でリアルタイムに提供できるようになりました。外国人居住者が多いことも踏まえ、約130の言語および「やさしい日本語」にも対応しています。
足立区災害ポータルサイトには、災害時の避難情報や避難所の開設情報、被害の状況、警報や注意報など気象情報、公共交通機関やライフラインの情報などが集約され、緊急時に知りたい最新情報をまとめてチェックすることができます。また、足立区の防災関連の計画、震災や水害へ備える方法などもまとめられており、平常時から防災について考える上で役立ちます。
並行して、スマートフォン向けの「足立区防災アプリ」の配信も行っています。アプリでも避難所の開設状況や混雑状況をリアルタイムで確認できるほか、非常時の情報がプッシュ通知で届くので、重要な情報を迅速に入手できます。GPS機能により地図で現在位置や避難所の位置なども確認でき、防災マップや各種ハザードマップも閲覧することができます。
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足立区ではいつ起こってもおかしくない地震への備えとして、区民向けに「あだち防災マップ&ガイド」を作成しています。ここには首都直下地震が起きた場合の足立区の被害想定、避難の流れ、避難所でのルール、避難所マップ、備蓄品・持出品リスト、情報収集手段などが分かりやすくまとめられています。

避難所マップには、地域の公園・神社など「一時(いっとき)集合場所」、大規模火災から身を守る「避難場所」、区立小中学校など「第一次避難所」、災害時要援護者の方々のための「第二次避難所(福祉避難所)」などの位置が示されています。なお入谷地区(6丁目~9丁目)については、火災が発生しても大規模な延焼の恐れがないため広域的な避難をする必要がない「地区内残留地区」に指定されています。
木造住宅などが密集した地域では、地震による建物倒壊や大規模火災などが懸念されます。区ではこうした被害を極力抑えるべく、古い住宅や建物の耐震診断・耐震改修工事やブロック塀等のカット・撤去工事などに対する各種助成制度を実施しており、「あだち防災マップ&ガイド」にはこれら助成に関する情報も掲載されています。
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河川に囲まれた足立区では、水害対策も重要なテーマです。区では「洪水・内水・高潮ハザードマップ」として、水害への備えに役立つ情報をまとめています。

上の図は荒川が氾濫した場合の洪水ハザードマップです。荒川沿いを中心に区内ほぼ全域で浸水の可能性があることや、多くの地域で1日以上、場所によっては2週間以上も水が引かないと予想されていることが分かります。
各自の水害対策としては、自分が住む場所の災害リスクを把握し、早めに安全な場所へ避難することが重要です。洪水ハザードマップには、早期立退き避難の検討が必要な区域、アンダーパス等の浸水しやすい道路、避難の方向を示した矢印など、非常に多くの重要な情報が盛り込まれています。
洪水ハザードマップは荒川以外の河川についてもそれぞれ作成されています。このほか内水氾濫ハザードマップや高潮ハザードマップも収録されていますので、全て確認しておきましょう。
水害時の避難について足立区では「分散避難」を推奨しています。これは避難所での3密(密閉・密集・密接)を避けるために避難所以外(自宅、親戚、知人の家など)へも分散して避難するというものです。避難先やそこまでのルート、緊急時の相互連絡手段などについて、家族であらかじめ話し合って情報共有しておくことが大切です。
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足立区の南部にある「北千住」駅は、鉄道5路線が乗り入れ1日当たり125万人以上の乗降客が利用する国内有数のターミナル駅であり、地震などにより公共交通機関がストップした場合、多くの駅前滞留者の発生が予想されています。足立区では、東日本大震災の時の混乱を教訓として、この「北千住」駅周辺および「綾瀬」駅周辺地域について協議会を設置して駅前滞留者対策に取り組んでいます。

北千住駅周辺地域では自助・共助・公助の観点に基づき、駅前滞留者対策の基本方針(北千住ルール)を定めています。またこれを実現するために、「各施設の屋内滞留者は施設内に待機する」、「国道4号線(北千住駅入口・千住宮元町交差点)から駅周辺への人の流入を防ぐ」といった「北千住ルール実践のための行動指針」を定めて対策に取り組んでいます。
また足立区では、千住・綾瀬地域を中心に災害用デジタルサイネージ(通称「ビュー坊テレビ」)を区内9カ所に設置しています。平常時は区からのお知らせなどを発信していますが、災害時には滞留者対策として交通情報や避難所情報などの緊急情報を放送します。また、民間事業者の駅前ビジョン「あだちスマイルビジョン」も情報提供設備として活用します。
足立区では都市ならではのこうした駅前滞留者問題も含め、震災や水害などあらゆるケースを想定した上で、地域の防災力・災害対応力の強化に取り組んでいます。
- 掲載日
- 2025/03/31
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。