2010/09/10Vol.227
女性労働力割合の増加とM字カーブの変化
厚労省では「平成21年版働く女性の実情」を毎年4月に発表しています。その中で、結婚・出産・子育て期に仕事を中断することによって30歳代で落込む日本特有の「M字カーブ」を描く労働力率の変化を報告していますが、女性労働力人口は増加しているとの報告もなされています。今後の労働力人口は、高齢者と女性の労働参画にかかっていると言われていますが、女性の労働力化は今後の住宅ニーズの変化にも影響すると考えられますので注目しておきましょう。
(出典:厚生労働省「平成21年版働く女性の実情」)
働く女性の状況
1)平成21年の女性の労働力人口は、2771万人(前年比9万人増)で、2年ぶりに増加しました。
(男性は3847万人で41万人減)
労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、女性48.5%、男性72.0%となっています。
2)女性の年齢階級別労働力率(図1)をみると、「25-29歳」77.2%、と「45-49歳」75.3%を左右のピークとし、「35-39歳」を底とするM字型カーブを描いていて、そのM字型の底の値は前年比0.6%上昇して、65.5%と過去最高となっています。特に「30-34歳」の労働力率は、67.2%となり、10年前と比較して、10.5%ポイント上昇し、結果として底の階級が「35-39歳」へ移動し、M字の形がかなり変化しています。
3)図1の10年変化では「30-34歳」の層で大きく労働力率が上昇していますが、これを配偶関係別にみると図2のようになり、「25-29歳、30-34歳」の層での有配偶者の労働力率の増加が9%ポイント近く上昇していることがわかります。
労働力率の上昇の要因として、
A:配偶関係の変化とB:労働力率の変化を要因として検証した場合、この10年の変化は、
(25-29歳) | (30-34歳) | |
A:未婚者割合の上昇 | 52.0%⇒59.6% | 23.4%⇒32.6% |
B:有配偶者の労働力率の上昇 | 43.9%⇒53.3% | 44.2%⇒53.2% |
となっており、これらの要因が特に30-34歳の労働力率の上昇に大きく寄与しています。
なお、本報告では、この10年を前半後半に分けた場合、特に「30-34歳」の労働力率の上昇要因として、「有配偶者の労働力率上昇」による変化の効果が直近の5年で大きく伸びて寄与している事を指摘していて、数年前の状況からの変化が見られます。
一方、内閣府が6月に発表した「男女共同参画白書」によると、労働力人口に占める女性の割合は41.9%へ上昇し、M字カーブも台形に近づきつつあり、底となる年齢階級の変化も晩婚・晩産化による子育て年齢の上昇を反映しているとしています。また、就業希望の女性が就職できてM字カーブが米国やドイツのように解消されれば、445万人の労働力人口が増加するという試算を載せています。なお、女性の平均給与は男性の7割となっていますが格差は年々縮小している点、平成9年以降は共働き世帯が片働き世帯を上回って推移している点など、意識変化や経済情勢の変化などを背景とした就業状況の変化を指摘しています。
※不動産コラム「その他の話題」Vol.178 女性労働力の増加 を参照してください。
企画・編集:野村不動産ソリューションズ株式会社 流通事業本部 営業企画部 企画課
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