建替えやリテナントが困難な保有不動産の価値を見出し、「スピード重視」で売却!

昨今、国内有名企業の本社売却や本社機能の地方移転などが大きなニュースになりました。それぞれ事情は異なるでしょうが、大きなきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの流行です。企業にとってオフィスをどこにどの規模で構えるのか、自社ビルにするのか、賃貸にするのかは、経営や財務の根幹に関わる大きな問題であり、不動産戦略が今後の企業業績のカギを握ると言っても過言ではないでしょう。

今回紹介する事例も、コロナ禍で保有不動産の見直しを図った企業様の事例です。将来的なリスクを抱えた「売るべき物件」の特性を見極め、複数の法人から購入申し込みを獲得しました。一見、売却が困難なように思われる物件の価値をどう捉え、どのようにしてスピード売却したのか、その裏側を野村不動産ソリューションズ法人営業本部の徳長政輝が質問形式で答えます。

今回の事例概要

◆物件概要
所在地 首都圏郊外
土地面積 約500坪
建物延床面積 約200坪
建物構造 鉄筋コンクリート造3階建
建物築年 1990年代
物件価格帯 1億円未満
備考 特殊用途建築物
◆お客様企業
業種 メーカー
会社規模 社員10万人以上の上場企業

今回の不動産を担当することになった経緯は?

テレワークが浸透する中、保有不動産の売却ニーズを見込んで営業

お客様は国内大手メーカー様です。新型コロナウイルスの流行により、多くの企業に在宅勤務・テレワーク等が浸透する中、お客様においてもテレワークを積極的に推進するという情報を得たため、保有する不動産の売却ニーズが発生することを見込んでアポイントを取りました。


提案の際に使用したポジショニングマップの骨子

骨子を基に実際の物件をマッピングしたサンプル

どのような提案を行った?

お客様保有の不動産を洗い出し、ポジショニングマップで「見える化」を実施

お客様と面談すると、保有不動産の整理をする方針は決まったものの、整理方法やどの物件から手を付けるかという点が定まっていないというお話をいただきました。そこで、保有不動産の概要を伺い、当社でポジショニングマップを作成して固定資産の「見える化」を行いました。

ポジショニングマップは、縦軸に市場価値の高低、横軸に使用価値の高低を取り、売却・活用したほうがいい物件や現状のまま保有したほうがいい物件が一目でわかるようにマッピングしたものです。また、ポジショニングマップだけでなく、必要な情報を比較・検討しやすいように物件ごとの概要書も作成し、再度面談を行いました。

この資料を共有しながら面談を行ったことで、各物件の稼働状況や市場価値、重要度などのすり合わせをスムーズに行うことができました。

お客様が抱えていた問題は?

建替えやリテナントが困難な特殊事情が売却の壁に

面談の中で、お客様が保有する理由がなく、手放した方が良いと思われる不動産が浮かび上がってきました。それが、首都圏郊外にある鉄筋コンクリート造3階建の物件です。この物件は、テナントに賃貸している状況でしたが、テナント退去リスクがあり、お客様も売却の意向を示していました。

しかし、この物件には売買における問題点がありました。そもそも特殊用途で取得した開発許可だったため、同一用途以外での建替えは不可、さらに特殊用途建築物のため、テナントとして入居・活用できる組織等が限られており、リテナントも困難が予想されました。

困難な物件の売却活動をどのように進めた?

物件の価値を再定義した上で、当社内のネットワークをフル活用して集客

お客様からは「期中での売却が最優先」と言われていたため、スピード重視で売却活動を進めました。

まず、改めてこの物件の価値を見つめ直し、強みを洗い出すことにしたのです。具体的には、テナント属性が良く、当該物件にて30年近く賃貸されている安定稼働の高利回り物件であるという点、直近で大規模な改修工事を行っているため、しばらくはテナントが退去するリスクも低い点などを強調しました。

そして、当社内で毎週行われる物件共有会議と各担当者に配信される全体メールを活用して物件情報を展開したのです。また、期末決算のタイミングのため、今期中であれば簿価を多少割っても社内決済が取れそうという状況も先方からヒアリングができていたため、スピード感を持って売却先候補を探すことも心がけていました。このようにして、一般事業法人、不動産会社、金融・公共法人、国内外の投資家まで、当社とお付き合いのある個人・法人に広く物件を紹介し、売却先候補を探しました。

最終的に売却は成功した?

紆余曲折あったものの「期中の売却」という目標をクリア

上記のように売却活動を進めた結果、「高利回り、テナント属性良、安定稼働物件」に興味を持ったところから反応があり、2社の購入申し込みがありました。しかし、テナントから「今後もこの物件を拠点に営業活動をしていきたいので、当社で買いたい」という申し出があったのです。

前述の通り、この物件は建替えやリテナントが困難なため、テナントが退去してしまうと、収益物件として成り立たない恐れがあります。そこで、リスクのある収益物件としてではなく、現テナントに自用物件として購入いただくことが最善だと、お客様の社内で判断され、最終的にはテナントへ売却することになりました。価格面での調整はあったものの、目標であった余剰資産の整理が達成でき、早期の売却先決定を行えたことに対して、お客様からは感謝の言葉をいただきました。

売却成功の要因は?

スケジュール感を押さえてフットワーク軽く対応、提案書にも力を入れた

できる限り早く処分をしたいというお客様の意向があったため、お客様の社内における決済のスケジュールをしっかりと押さえて、現地調査や内覧対応等をフットワーク軽く行った点は成功要因の一つと言えると思います。

また、売却活動にあたっては、物件特有の問題点や強みを整理するとともに、周辺情報を収集して納得感のある提案書作りを心掛けました。これによって、お客様の社内における売却先候補の内部調整もスムーズに行えたと聞いています。結果的には、テナントへの売却となりましたが、当初の査定価格と近い価格での購入希望があったことからも、市場や相場を的確に押さえた提案書だったと言えるのではないでしょうか。

営業にあたって心掛けていることは?

お客様が求めていることを理解すること、先入観を持たずに自ら動くこと

お客様が何を求めているかを理解することはとても大事です。今回の案件ですと、期中売却が最優先という方針が明確にあり、それを理解した上で動いた点が成功の要因でした。

また、物件と真摯に向き合うことで、売却にあたってのプラス面をしっかりと捉え、強みを的確にアピールすることは、基本だと思っています。そのためには、物件規模の大小やエリア等によって先入観を持たず、幅広いお客様に向けて営業や紹介活動を実施することも必要でしょう。こちらから積極的に動くことで、お客様が抱えている隠れた課題が見つかり、その解決に結びつく提案ができるからです。

野村不動産ソリューションズの強みは?

幅広い顧客ネットワークや、社内、グループ企業、士業・専門家との強固な連携

前述したように、法人の保有資産としては比較的規模の小さな案件や問題を抱えた物件でも、幅広い顧客ネットワークを駆使して売却先を探し出せる点は、大きな強みです。野村不動産グループ内の連携も図れており、例えば今回の案件では、お客様と既にお取引があった野村不動産の都市開発事業本部と連携を取ることで、お客様の状況把握をスムーズに行うことができました。

また、社内CRE情報部の存在も欠かせません。CRE情報部は、公開情報や当社が過去に扱った事例を収集・蓄積して分析や提案に活かす部署です。今回の提案でもポジショニングマップの作成をはじめ、数字や事実に基づいた提案を行うために強力にサポートしてくれました。

他にも重要事項説明書や契約書のチェックを行う専門部署などがあり、法律や制度・規制が絡むような複雑な案件でも確認・検討ができることは、大手不動産会社ならではの心強い体制です。パートナー税理士の先生に定期的に個別相談ができる機会もあり、士業・専門家のサポートを気軽に受けられる点も強みの一つと言えるでしょう。

最後に一言どうぞ

コロナ禍で働き方が変われば、不動産に対するニーズも変わる

現在、コロナ禍でテレワークへの移行を図る企業が増えています。ポストコロナを見据えても、コロナ禍以前のような働き方に戻る企業は多くないでしょう。当然、働き方が変わればオフィス、不動産に対するニーズも変わります。

野村不動産ソリューションズでは、お客様の多様なニーズにお応えできる体制を整えておりますので、CRE(企業不動産)で何かご不明な点やお困りのことがございましたら、是非一度お話をお聞かせください。

提供:法人営業本部 営業企画部

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