IFRSと不動産(第1回)~イントロダクション~

【我が国におけるIFRSの適用状況】
 日本では、2010年3月31日以後終了する連結会計年度より国際会計基準(IFRS)の任意適用を開始しており、それ以降IFRS適用の拡大促進が進められてきました。現在もIFRSの適用企業数及び時価総額の割合(全上場企業の時価総額に対するIFRS適用済企業・適用決定企業の時価総額の割合)は増加傾向にあり、2021年12月現在の日本におけるIFRS適用企業数(IFRSを適用する決定を行った企業を含む)は250社(適用済企業数238社、適用決定企業数12社)に昇ります。

(注1)「会計基準を巡る変遷と最近の状況(2021年11月金融庁)」を基に筆者作成
(注2)上図の適用企業数には、IFRSを適用する決定を行った企業を含む


【不動産に係るIFRS上の論点】
 IFRSのうち、不動産に係る基準として実務上特に重要となるのは以下の4つです。
IFRS主要な項目
IAS第16号「有形固定資産」 ・認識と測定(認識時の測定、取得後支出)
・認識後の測定(原価モデルと再評価モデル、減価償却)
・認識の中止
IAS第36号「資産の減損」 ・減損している可能性のある資産の識別(減損の兆候)
・減損テストの頻度、減損テストの単位
・回収可能価額の測定(公正価値、使用価値)
・減損損失の認識及び測定
・減損損失の戻入れ
IAS第40号「投資不動産」 ・投資不動産の範囲
・認識後の測定(原価モデル、公正価値モデル)
・振替え
IFRS第16号「リース」 ・リース会計の適用対象(適用範囲、適用単位)
・借手の会計処理、貸手の会計処理
・セール・アンド・リースバック
・サブリース
各々日本基準との相違点があるため、IFRSの適用を検討するにあたり、日本基準との主な相違点や影響について把握することは重要と考えられます。これらの基準に係る主な相違点や影響の概要は以下のとおりですが、詳細については今後発行のニュースレター 「IFRSと不動産」をご確認ください。

Ⅰ.有形固定資産(IAS第16号)

(1)認識 IFRSでは有形固定資産の定義及び認識規準を満たす場合に有形固定資産として識別されますが、日本基準にはそのような規定はありません
(2)取得後の支出 IFRSでは将来的な便益が企業に流入される可能性が高く、かつ、当該資産の取得原価が信頼性をもって測定できる場合に資産計上されますが、日本基準にはそのような規定はありません
(3)認識後の測定 IFRSでは「原価モデル」と「再評価モデル」を選択適用できますが、日本基準では取得原価に基づき測定する方法のみ認められています
(4)減価償却の単位 IFRSでは取得原価を重要な構成要素に配分し、各構成要素の減価償却を個別に実施しますが、日本基準にはそのような規定はありません
(5)耐用年数、残存価額、償却方法の見直し IFRSでは毎期見直しが必要ですが、日本基準にはそのような規定はありません

Ⅱ.資産の減損(IAS第36号)

(1)減損の兆候 IFRSでは日本基準よりも広範な要因が挙げられているものの、日本基準で規定されているような判断の目安となる具体的な数値基準は設けられておらず、実質的な判断が必要となります
(2)減損の認識と測定 IFRSでは帳簿価額と回収可能価額を直接比較する1ステップ・アプローチが採用されており(日本基準では2ステップ・アプローチ)、一般的に日本基準よりも早いタイミングで減損損失が認識される傾向にあります
(3)キャッシュ・フローの予測期間と見積方法 IFRSでは原則、最長5年間の直近の予算・予測を基礎とし、6年目以降は市場等の長期平均成長率を上限として算定されますが、日本基準ではそのような規定はありません
(4)減損損失の戻入れ IFRSでは毎期戻入れの兆候について検討し、過年度に認識した減損損失が存在しない又は減少している場合に減損損失を戻し入れる必要がありますが、日本基準では減損損失の戻入れは認められていません

Ⅲ.投資不動産(IAS第40号)

(1)当初認識後の測定 IFRSでは「原価モデル」と「公正価値モデル」を選択適用できますが、日本基準では原価モデルに基づき測定する方法のみ認められています
(2)公正価値の変動 公正価値モデルを選択する企業は、一定の場合を除いてすべての投資不動産を公正価値で評価しなければならず、公正価値の変動は当期純損益として認識します
(3)表示 IFRSでは財政状態計算書上、「投資不動産」として区分表示しますが、日本基準には「賃貸等不動産」として区分表示する規定はありません

Ⅳ.リース(IFRS第16号)

(1)借手側のリース取引の分類及び会計処理 IFRSでは借手側の会計処理として、例外を除くすべてのリースについて使用権資産とリース負債を認識しますが、日本基準では解約不能かつフルペイアウトの要件を充足するか否かによりファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、ファイナンス・リースは通常の売買取引に準じた会計処理を、オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に準じた会計処理を行います。そのため、従来オペレーティング・リースによる資産を多く使用していた企業は、IFRSの適用により総資産及び総負債が大きく増加すると考えられます
(2)リース料総額 IFRSではどのような項目をどのような場合に含めるかについて詳細に規定されていますが、日本基準では一部の項目を除き詳細な規定はありません

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