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22年の売買仲介は価格上昇で好調な市況

2022年12月28日

22年の売買仲介市況について東京カンテイ・市場調査部上席主任研究員の井出武氏は「総じて良かった」と総括する。首都圏では東京23区を中心に、坪単価の上昇が続いた一方、消費者の需要も続いたため、「初の緊急事態宣言が明けた20年夏から21年5月頃までの絶好調時ほどではないものの、コロナ前を上回る好調なマーケットとなった」(井出氏)。

アットホームラボ・データマーケティング部部長の磐前淳子氏は、「物件価格の上昇や経済の先行きに対する不安感はあったものの、消費者は住宅取得の資金余力の範囲でニーズが合致したエリアを柔軟に選び、底堅く購入していった」と分析する。

大手の仲介各社に22年の市況を尋ねたところ、三井不動産リアルティが「購入希望者はコロナ前の水準を上回り購入意欲は高い」状況で、仲介部門の業績は良好と答えた。

東急リバブルは「一次取得層を中心としたマイホーム需要は底堅く、また収益物件も含めた1億円超の取引も増加し、好調感を維持している」とし、「大型案件を含めて堅調だった」と振り返る。

住友不動産販売は「絶好調だった昨年と比べ成約件数こそ減少した」とするが、価格が上昇する市況でも「旺盛な購入ニーズに支えられ、好調だった昨年並みの実績」となった。

野村不動産ソリューションズも「手数料単価の上昇が顕著な1年」とまとめ、「リテール・ミドル・ホールセール事業いずれも好調で前年実績を上回る見込み」と語り、好業績が浮かび上がる。

一方で、首都圏の中古マンション市場は価格の上昇が続いたため「実需ベースの郊外化」(井出氏)が起き、「低金利の影響やペアローンの利用増から上昇した価格に、天井感が近い」(同)状況となっている。東京カンテイでは、11月の中古マンション売り出し希望価格(70㎡換算)は、19カ月ぶりに僅かに前月より下落した4807万円(前月比2万円減)だった。

アットホームによる調査では、11月の中古マンションの1戸当たり平均価格は3879万円(16万円増)で前年より1割近い高値となり、首都圏では東京23区の上昇が周辺部より高くなっている。磐前氏も、「コロナ禍で広い面積のニーズが高まり、価格とのバランスやテレワークも組み合わせた通勤利便性などの折り合いを付けた場所での住まい方を検討し、郊外に視線を移して住宅を選ぶ消費者が多くなった」と話す。

また、東京23区では、「リフォームと組み合わせた価格の高い取引や、買取業者と一般の消費者が競った取引なども増えた」(磐前氏)としている。大手仲介各社は、22年の後半は購入希望者のマインド低下を感じ取れる傾向があるとして、今後の動向について注視する必要があると指摘している。

今年は、宅建業法の改正によって新たに契約の電子化が可能となったが、大手仲介会社は、顧客ニーズがあり、売買の取引事例も出てきたものの、「浸透には至っていない」と振り返る。磐前氏は、「売買取引での積極的な導入はまだ先。設備投資や知識の習得のハードルが高いと受け止められており、実態としては準備を進めている段階」とみている。

今後のマーケットは、20日に日本銀行の黒田総裁が発表した「長期金利の変動許容幅の拡大」によって、現在の住宅ローン利用者に多い変動金利について変更はないものの、消費者マインドの冷え込みを懸念する声は既に聞こえてきている。住宅市況の専門家から、「23年の仲介市況は駆け込み需要もありうる状況で、工夫によって変わるマーケットになるのでは」との見通しも示された。

(提供:日刊不動産経済通信)

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