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【千代田区】全国に先駆けた帰宅困難者対策など、災害対応力強化に取り組む千代田区の防災対策

 
皇居 伏見櫓皇居 伏見櫓

千代田区は東京23区の中央部に位置し、中央区・港区とともに「都心3区」と呼ばれます。中央部には皇居があり、区の名前はかつてここにあった江戸城の別名「千代田城」に由来しています。

皇居の南側には国会議事堂、総理大臣官邸、中央官庁などが集中する永田町・霞が関エリア、東側には丸の内・大手町のビジネス街が広がっています。

千代田区の地形は大きくは、皇居より西側の台地部と東側の低地部に分けられます。台地部は武蔵野台地の東端に位置し、変化に富んだ地形を形成しています。

低地部は、かつて「日比谷入江」と呼ばれた浅い海を江戸時代以降に埋め立てた一帯(日比谷~大手町)と、「江戸前島」と呼ばれる半島があった一帯(神田~飯田橋)に分けられます。また低地部には神田川と日本橋川が流れています。

千代田区は住宅地が少なく夜間人口は約5万8000人ですが、昼間人口となるとおよそ15倍の約85万人に達し(2015年国勢調査)、昼夜間人口比率が極めて高いという点も千代田区の特徴となっています。

千代田区は全域が「地区内残留地区」

千代田区では防災の基本計画として、震災対策編・風水害対策編・火山対策編・大規模事故等対策編からなる「千代田区地域防災計画」を策定し、毎年見直しや修正を行っています。震災対策編では、東京湾北部地震が起きた場合の区内の最大震度を6強と想定し、「予防」、「応急・復旧」、「復興」の各段階に応じて具体的な防災対策をまとめています。

なお、千代田区では区内全域を「地区内残留地区」としており、「広域避難場所」はありません。地震等の際はむやみに移動せず、自宅やオフィスなど安全な場所にとどまって状況を把握し、危険を感じる場合には区民は「避難所」へ、通勤・通学者は「災害時退避場所」へ避難します。

千代田区ハザードマップ千代田区ハザードマップ

風水害については冊子「千代田区ハザードマップ」を発行・配布しています。ここには災害発生時の被害想定が一目でわかる各種ハザードマップが集約されているほか、避難行動判断フローや、避難所や救急医療施設等の一覧表なども掲載されており、区民にとって役立つ防災マニュアルとなっています。

 

各種ハザードマップで災害リスクや避難場所を確認
洪水ハザードマップ神田川版(浸水深)洪水ハザードマップ神田川版(浸水深)

ハザードマップは千代田区のホームページでも閲覧できます。

洪水ハザードマップ(神田川版)」は、神田川・日本橋川・隅田川が大雨で増水し、河川の氾濫および下水道施設などの排水能力を超えて水があふれた場合に浸水が予想される区域とその程度(浸水の深さ、浸水継続時間)が示されています。

また「洪水ハザードマップ(荒川版)」では、近くを流れる荒川の堤防が決壊した際に、氾濫した水が地表を浸水する区域とその程度が示されています。

高潮ハザードマップ」は、東京湾沿岸において想定できる最大規模の高潮による氾濫が海岸や河川から発生した場合に浸水が予想される区域とその程度を示したものです。

このほか、がけ崩れの恐れがある場所を示した「土砂災害ハザードマップ」もあります。

これらのマップには避難所等も掲載されています。日頃から自宅や通勤・通学先がある場所の災害リスクと避難先を把握しておくことが、いざという時のスムーズな行動につながります。

 

「マイ・タイムライン」を作成しておこう
「マイ・タイムライン」記入例

冊子『千代田区ハザードマップ』の中には、「我が家のマイ・タイムライン」という書き込み式ページがあります。

台風などの風水害は、地震と違ってある程度事前に予測できることから、災害が発生してから行動を起こすのではなく、事前行動計画(マイ・タイムライン)を作成して備えましょう、というものです。

まずはハザードマップでどのような危険があるのかを確認し、避難先とともにマイ・タイムラインに書き込んでおきます。

千代田区が発令する3段階の避難情報の意味を理解しておくことも大切です。例えば、全員避難してくださいという「避難指示」は警戒レベル4ですが、家族に高齢者がいるなど避難に時間がかかりそうな場合は、その一つ手前の警戒レベル3の時点で避難を開始する必要があります。

マイ・タイムラインでは、最悪の事態を想定した上で、災害発生までの間に「いつ、何をするか」を逆算して考えていきます。「台風の発生~災害発生1日前」は雨風が激しくなる前に行うべきことを済ませておく時期、「災害発生1日前~当日」は川の水位などに留意し避難行動を検討・開始する時期、「当日~災害発生」は身の安全を確保する時期と考え、それぞれ具体的に何をするかを書き込んでおきましょう。

 

約85万人の昼間人口を抱える千代田区の帰宅困難者対策
災害対応マニュアル

東京都防災会議の2012(平成24)年の発表によれば、首都直下型の大地震により千代田区全域で発生する帰宅困難者の数は約50万人と推定されており、区では帰宅困難者対策にも力を入れています。

その一つが「災害対応マニュアル」です。これは千代田区への通勤・通学者など昼間区民向けに作成されたもので、「災害時退避場所」マップや、帰宅困難者の行動心得10か条、応急手当方法、災害用伝言ダイヤル利用方法などの情報が盛り込まれています。災害時退避場所は皇居外苑、北の丸公園、皇居東御苑、日比谷公園、外濠公園、真田堀運動場の6ヵ所です。

千代田区ではまた、毎年3月に「シェイクアウト訓練(一斉防災訓練)」および「帰宅困難者対応訓練」を実施しています。

シェイクアウト訓練とは、同時刻に一斉に「まず低く、頭を守り、動かない」という身を守るための行動をとる訓練で、自宅・職場・屋外どこでも参加でき、参加者数は年々増えています(2019年度は62,254人)。

それに続いて行われる帰宅困難者対応訓練は、2003(平成15)年度から千代田区が全国に先駆けて行ってきた「帰宅困難者避難訓練」を、東日本大震災の教訓を生かしてより実践的な内容に改めたもので、自主防災組織「帰宅困難者対策地域協力会」が主体となって各地区の実情に合った訓練を行っています。

 

マンション防災対策や情報伝達手段の強化にも力を入れる

約85%の世帯が共同住宅住まいということから、マンションの防災対策も千代田区の重要課題です。千代田区では「公益財団法人まちみらい千代田」が、管理組合のマンション防災計画策定の支援、エレベーター非常用備蓄キャビネット配布、AEDの設置など、さまざまな面からマンション防災対策を支援しています。

情報提供対策としては「安全・安心メール」配信を行っています。これは地震・気象等に関する災害情報や子どもの安全に関する情報を配信する登録制サービスで、2021(令和3)年4月から多言語(日本語・英語・中国語(簡体字)・韓国語)に対応しています。

「共助」推進の取り組みとしては、自主防災組織に対する防災用品購入費用の補助や、「地震体験車」の運行なども行っています。

このほか、災害弱者の救援策として「千代田区安心生活見守り台帳」を作成し、地域での日常的な見守りや異変時の緊急支援、災害時の救援体制の強化を図っています。また、避難行動要支援者がいる家庭などには、防災行政無線の放送を確実に届けられるよう「防災ラジオ」の配布も行っています。

このように千代田区では、「みんなで助け合う減災のまち千代田」をスローガンに、あらゆる角度から地域特性に合わせた防災対策が検討・実行されています。

掲載日
2022/02/25

本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。

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