【川崎市川崎区】都市ならではの災害にも備える、「川崎」駅を擁する川崎市川崎区の防災対策
川崎区は川崎市の最も東側に位置する区で、北は多摩川を挟んで東京都大田区に、南は横浜市に隣接しています。多摩川の最も下流に当たる地域で、川崎市の7区の中で唯一、海に面しています。
川崎の「川」は多摩川を、「崎」はデルタ(三角州)を指しており、川崎という地名には多摩川がつくった河口のデルタ地帯(上流から流されてきた土砂が溜まった三角州)という意味があるそうです。
1872(明治5)年、日本最初の鉄道の3番目の駅として「川崎」駅が開業し、東京と横浜をつなぐ地として川崎は急速に発展を遂げました。
現在も「川崎」駅を中心とした一帯には官公庁や商業施設が集積する中心市街地が形成されています。
臨海部は、戦後に埋め立てが進められ、巨大工業地帯が形成されました。重化学工業などを中心に日本の経済を牽引してきましたが、近年は産業構造の転換により、ハイテク企業や研究開発機関が集積した先端産業都市として成長を続けています。
また川崎区では、工場跡地の土地利用転換に伴って大規模マンションなどが次々と建設されている一方で、古い木造住宅が密集した地域も存在しており、それぞれの地域の実態に合わせた細やかな防災・減災対策が課題となっています。
川崎市では防災に関する情報を集約したサイトとして「川崎市防災ポータルサイト」を公開しています。
川崎市防災ポータルサイトは、災害時の避難情報・避難所開設情報などがリアルタイムでわかる「避難情報」、公共交通機関やライフラインの状況がわかる「公共情報」、避難所マップやハザードマップなどの「防災マップ」、各種警報・注意報や河川の水位および雨量の状況などがわかる「気象情報」で構成されています。
さらに、地震や風水害への日頃からの備え、災害発生時の行動、災害後の避難生活などの役立つ情報も充実しています。
災害が起きた時に慌てなくて済むよう、平常時からどのような情報が載っているかを確認しておくとよいでしょう。
また、川崎区では「川崎市地域防災計画」をベースにその個別計画として区の実情や地域特性に合わせた「川崎区地域防災計画」を作成しています。
川崎市直下型地震と慶長型地震(津波)による被害を想定した「震災対策編」、海や川に面しているなど地域特性を考慮した「風水害対策編」、地下街や高層建築物での火災など都市特有の「都市災害編」で構成され、地域防災力を強化するための取り組みがまとめられています。
「川崎区防災マップ」では避難所、広域避難場所、災害時応急給水拠点、救急告示医療機関などの位置がわかるようになっています。
避難所としては区内の市立小中学校が指定されています。また、区内にある2つの神奈川県立高校(川崎高校、大師高校)は、災害時には消防・警察・自衛隊等の応援部隊の集結場所や活動の拠点になります。
地震などによる大規模災害発生時の広域避難場所としては、富士見公園一帯、大師公園、小田公園が指定されています。
また、川崎区は市の中でも外国人市民人口が最も多いことから、多言語対応の防災マップ(英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語)も作成・配布しています。
川崎市では2006(平成18)年度より各区に「区民会議」が設置され、区民が中心となって地域社会の課題の解決を図るための調査審議を行ってきました。
区民会議の活動は6期12年にわたって行われ、一通りの役目を終えて2019(令和元)年に活動終了となりましたが、その間にさまざまな成果を残しています。
川崎区の区民会議で進められた防災の取り組みの一つとして、冊子『地域防災マップづくりのすすめ』の作成が挙げられます。
地域防災マップとは、地域で災害時に役に立つものや危険なものを、地域住民が主体となって書き込んだ地図のことです。
この冊子の中では、実際に区民会議委員および地域住民でまち歩きを行ってマップを作成した体験レポートにもとづき、地域防災マップの具体的な作成手順がまとめられています。
この作業を通して、地域の防災情報をみんなで共有することができ、災害時の冷静な避難行動につながるというわけです。
「わたしの防災手帳」もまた、区の防災への取り組みによって生まれたものの一つです。これは、各家庭の「家族防災会議」で話し合った内容を書き込めるもので、防災に関して家族で話し合うきっかけにもなるものです。
「川崎区防災マップ」と同様、多言語版が作成され、外国人市民向け防災講座などで活用されています。
「川崎」駅の周辺には大型商業施設やオフィスビル、高層マンションなどが建ち並び、都市機能が集積しています。
年間を通してイベントも多く、買い物客などを含めて常に活気に満ちあふれていますが、その一方で、川崎市直下の地震(マグニチュード7.3)が起きた場合に駅前には約19,000人の帰宅困難者(駅前滞留者)が発生すると想定されています。
そこで川崎市では2012(平成24)年より「川崎駅周辺帰宅困難者等対策協議会」を設置し、災害時の行動ルールを策定するほか、帰宅困難者対策訓練や通信訓練など各種訓練の実施・検証を行っています。
一時滞在施設への誘導支援ツールとして川崎市が全国に先駆けて独自に導入した「簡易無線機」や「帰宅困難者一時滞在施設マップ」などを活用し、駅前滞留者をスムーズに誘導するための駅周辺関係者による連携体制も構築されています。
このように川崎市および川崎区では、地形的な特徴や都市機能の集積といったエリア特性に合わせ、地域全体としての防災力を高めるためにさまざまな取り組みが進められています。
- 掲載日
- 2022/03/18
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。