【さいたま市浦和区】「浦和」駅周辺の帰宅困難者対策を含め官民連携で防災対策に取り組む浦和区
浦和区はさいたま市の中南部に位置し、東京都心から20~30km圏に位置します。ここはかつて中山道の「浦和宿」(日本橋から3番目)として繁栄した場所で、現在は「埼玉県庁」や「さいたま市役所」など主要官公庁が置かれ、県や市の中心地として重要な役割を果たしています。
浦和区は、南北に細長い区域をJR線が縦断し、東京都心部と結ばれています。大きく見ればこのJR線を境にして西側にオフィス街が、東側に緑豊かな住宅街が広がっているのが、浦和区全体の特徴です。
浦和区内には「浦和」駅、「北浦和」駅、「与野」駅の3駅があり、中でも「浦和」駅周辺に商業・業務機能や行政機能が集積しています。
地形的には、区域の大半が大宮台地と呼ばれる台地上にあり、藤右衛門川や芝川などの河川沿いに低地が一部形成されています。
さいたま市では2011(平成23)年の東日本大震災を受け、その前年度に作成していた「さいたま市被害想定調査報告書」の見直しを行いました。これは防災対策の検討を行うためのベースとなるもので、地震についてはさいたま市直下地震、関東平野北西縁断層帯地震、東京湾北部地震の3つを想定しています。
また同時に、その調査結果を市民に分かりやすく伝えるために「さいたま市防災カルテ」を作成しました。防災カルテはさいたま市全体のもの、各区別のものに加え、それをさらに中学校区ごとに細分化したもの(浦和区は7つ)があり、ごく身近な生活圏でどの程度の被害が想定されているかを把握しやすくなっています。
浦和区全体の防災カルテによると、さいたま市直下地震による最大震度は6強、全壊建物棟数17,600棟、うち焼失棟数15,328棟などの被害が想定されています。また、市内の他の地域と比べると相対的に低いものの、区の北部や東部で浸水などの水害リスクも想定されています。
これらの被害想定の結果として浦和区では、建物の耐震化率の向上を図るとともに、火災焼失の危険性が高いことから延焼防止策(延焼防止帯の設置や建物の不燃化等)が必要であるとされています。また「浦和」駅周辺で帰宅困難者の発生・滞留が予想されるため、その対策も課題の一つとなっています。
さいたま市が作成している「さいたま市地震防災マップ」は、地震別の「揺れやすさマップ」、さいたま市直下地震による「建物の倒壊危険度マップ」および「液状化危険度マップ」で構成されています。
「揺れやすさマップ」はさいたま市直下地震、関東平野北西縁断層帯地震、東京湾北部地震それぞれの想定震度を地区ごとに色分けしたものです。これを見ると浦和区は、さいたま市直下地震による揺れが最も大きいものの、他の2つの地震にも十分な注意が必要であることなどが分かります。
また、さいたま市の地図情報検索サイト「さいたま市地図情報」の中の「防災まちづくり情報マップ」では、洪水ハザードマップ、内水ハザードマップ、土砂災害ハザードマップ、延焼リスク、避難困難リスクなど各種ハザードマップを見ることができます。住所や施設名で検索をして、自宅や職場・通学先など家族の生活圏の災害リスクについて平常時から確認しておくとよいでしょう。
さいたま市では2022(令和4)年4月1日から、スマートフォンやタブレット端末対応の「さいたま市防災アプリ」の配信をスタートしました。さまざまな防災知識を習得できるとともに、災害時には「命を守るツール」として必要な情報を迅速かつ正確に受け取ることが可能です。マップ機能も充実しているほか、「マイ・タイムライン」簡単作成機能なども搭載されており、家族での情報共有にも活用できそうです。
またさいたま市では、地元の自主防災組織や避難所運営委員会などに対して助言や運営サポートを行う「防災士」資格保持者を、「さいたま市防災アドバイザー」として認証登録しています。
その認証登録を受けた浦和区在住・在勤の防災士によって構成された市民団体が、「浦和区防災アドバイザー協議会」です。知識とスキルを生かしながら、地区防災計画策定のサポート、防災訓練など自主防災組織の活動支援、イベント出展・出前講座・座談会といった広報・啓発活動、YouTubeでの動画配信など、浦和区の地域防災力向上と減災のためにさまざまな活動を展開しています。
東日本大震災では、都内だけでなくさいたま市内の主要駅でも多くの帰宅困難者が発生しました。これを教訓に、さいたま市では帰宅困難者対策にも取り組んでいます。
市内でも特に多くの帰宅困難者の滞留が予想される「浦和」駅と「大宮」駅には、帰宅困難者対策協議会が設置され、駅周辺の民間事業者なども含めた関係機関の連絡体制づくりや一時滞在施設(公共施設、ホテル、商業施設、オフィスビルなど)への誘導方法の検討などが行われています。
2021(令和3)年11月には「浦和」駅および周辺で帰宅困難者対策訓練が行われました。関係者約60人が参加し、帰宅困難者に扮した職員らを「浦和」駅から一時滞在施設まで誘導後、体温を測定して体調不良者を別室に案内するというように、感染症対策も講じた帰宅困難者対応の実動訓練を行っています。
帰宅困難者対策協議会ではまた、駅周辺の一時滞在施設マップを作成し、災害発生時に帰宅困難者へ配布できるように備えています。
このようにさいたま市および浦和区では、防災カルテや防災アプリなどのツールを通じて地域住民の防災意識の向上を図るとともに、官民連携により帰宅困難者対応も含めた防災対策に積極的に取り組んでいます。
- 掲載日
- 2022/07/28
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。