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老後の暮らしとお金のコラム家族に迷惑をかけない相続

2017/04/03
「小規模宅地等の特例」だけじゃない!同居や近居で得られるメリット

相続対策をするうえで、親と同居して「小規模宅地等の特例」が適用できれば、相続税を大幅に節税することができます。次世代に財産を上手に継承していくためにも、同居や近居といった住まい方を活用しましょう。

促進されている同居・近居

2015年3月に政府が閣議決定した少子化社会対策大綱に盛り込まれたのが、世代間の助け合いを目的とした「三世代同居・近居の促進」ですが、市区町村によっては補助金が出るところが多くあります。

例えば、千葉県千葉市では、高齢者の孤立化防止と家族の絆の再生を目的に、三世代家族が同居や近居をする場合に必要な新築・改築または転居費用の一部を補助しています。大阪府高槻市でも、市外に住む子育て世代が市内在住の親世代と同居・近居を目的に転入する場合、住宅取得およびリフォーム費用の一部を助成しています。また、東京都品川区では、介護や子育てなど助け合いながら暮らせるように、親世帯と同居または近居することになった中学生以下の子どもがいる世帯を対象に、転入・転居費用の一部を商品券などと交換できるポイントとして交付する取り組みも行っています。

二世帯住宅で活用できる小規模宅地等の特例

あまり一般的に知られてはいませんが、親と同居すると相続税が節税できます。これは「小規模宅地等の特例」という制度が設けられているからです。

「小規模宅地等の特例」を分かりやすく説明すると、相続税を計算する際に被相続人等の自宅、あるいは事業用の敷地の評価について、一定の要件のもと大幅な減税を認めるという制度です。

例えば、自宅の場合330㎡までは不動産評価を80%下げることができます。
ただ、一定の要件をクリアしなくては認められないため、同居及び二世帯住宅にする際には注意が必要です。

また、配偶者は常にこの特例を使うことができますが、配偶者以外の同居親族は相続税の申告期限(相続開始日の翌日から10ヵ月以内)まで所有と居住を継続する必要があります。その他、適用パターンと主な要件を以下の図にまとめたので参考にしてください。
※実際の適用にあたり、詳細な要件については税理士に確認してください。

配偶者⇒無条件でこの特例が使える
配偶者以外の同居親族⇒相続税の申告期限(相続開始日の翌日から10か月以内)まで所有と居住を継続
配偶者以外の同居していない親族⇒相続開始日の3年以内にマイホームを所有していない親族が相続
(上記配偶者及び同居親族がいない場合に限る)

二世帯にする際の注意点

二世帯住宅にする際には、下記のような場合、小規模宅地等の特例が部分的にしか活用できなくなるので注意が必要です。

1. 建物を区分所有登記
土地を親が所有し、建物の1階部分が親・2階部分を子が区分所有登記していると1階部分に相当する宅地等のみが小規模宅地等の対象となります。

2.土地の部分共有
二世帯住宅を建てる際に、土地部分を親と子で共有している場合には、親の持分に該当する土地にのみ特例が適用されることになります。

その他にも適用できないケースがありますので、二世帯住宅を建てる前に不動産会社や住宅メーカー、税理士に相談をするようにしましょう。

親世帯と子世帯の同居・近居のススメ

一人の子どもに支出する大人が、父母のほか、夫の両親、妻の両親と合計6人いる状態を指す「シックスポケット」という言葉が、平成17年度国民生活白書でも取り上げられて話題になりました。同居や近居によって、親世帯の眠っている預金が子や孫との暮らしを通して消費に回るので、経済活性化が期待されます。

親世代・祖父母世代にとっても、孫やひ孫の世話をすることで日々の生き甲斐を得られるだけでなく、親子間や孫を含めたコミュニケーションの機会も広がり、病気や介護状態になったときに子や孫の助けを借りやすくなります。

また、同居や近居は、少子高齢化にも歯止めをかけるのではないかと言われています。祖父母が孫の面倒をみることで子世帯が共働きで働きやすくなり、世帯収入が増えます。また、三世帯が食事を一緒にとることで、食費や光熱費が抑えられます。その結果、子育てに対しての金銭的不安が少なくなります。

自治体からの補助、小規模住宅等の特例、三世帯間でのコミュニケーションの活性化など、同居・近居によるメリットは様々あります。ただし、家族みんなが笑顔になれる相続をするためには、同居しない子に何を残すのかもしっかり考えておかなければ思わぬ「争族」の火種ができることもあります。それらを含めて家族間でよくコミュニケーションをとり、よりよい形で資産を子孫に継承していく方法を考えたいですね。

執筆者:一橋香織

AFP 相続診断士 家族信託コーディネーター 終活カウンセラー上級。
頼れるマネードクターとしてこれまでに1,500件もの相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演多数。システムダイアリー社の「エンディングノート」監修。
著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」(PHP出版)。
相続診断士事務所「笑顔相続サロン」代表 東京相続診断士会会長。
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