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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2014/02/24
予備資金は豊かな老後への備え

「生活資金」が日々の生活をつつがなく過ごすための資金であるのに対し「予備資金」は人生の質を高める、例えば子供への援助や持ち家のメンテナンス・建て替え・リフォーム、お金がかかる趣味や娯楽、車の買い替え、病気や介護などのための資金です。

これらは、だれと・どこで・どのように暮らすか、子供や孫との関係、エンディングに対する考え方などによって大きく変わります。
例えば、老後は夫婦のみで暮らす、子供世帯と同居する、高齢者施設に入居する、といった目的では自宅のリフォームの内容や規模、時期などが異なります。

したがって、予備資金を想定するにあたっては、老後のビジョンを夫婦だけでなく子供を含めて納得いくまで話し合う必要があります。それを記録しておくと、いざというときに役に立ちます。

生活資金は退職金と公的年金などでほぼ賄えます(第5回参照)ので、退職までに準備するのは予備資金です。では、予備資金で大きなウェイトを占める子供への援助や住宅リフォーム、介護、葬儀の相場を見ていきましょう。

子供への資金援助はひとり300万円

「親から援助してもらったので子供にも同じように...」と、子供の結婚や住宅取得の際に資金援助をしたいと考えている60歳代が少なくありません。子供ひとりあたりの想定額は結婚資金100万円、住宅購入資金200万円です。

リフォーム費用500万円

介護状態になる代表的な原因である脳血管疾患(脳卒中)や転倒・骨折などのリスク軽減や耐震性能アップなどを目的に住宅リフォームを行う高齢者が増えています。

「平成24年度 住宅リフォーム実例調査報告書」(一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会)によると、住宅リフォームの施主で60歳以上が占める割合は、戸建て約54%、マンション約39%、平均契約金額は戸建て710.7万円(中央値※500万円)、マンション490.2 万円(※中央値380万円)です。
※中央値とは、全てのデータを小さい順に並べた時に中央にくる値のことです。

場所別では、リフォーム会社のカタログや筆者が受けたリフォーム相談、友人・知人・筆者自身のリフォーム例などから勘案すると、水回り(キッチン、浴室、脱衣所)200万円、玄関ドアと窓・床の断熱100万円、段差解消やトイレの設備更新など50万円、外壁と屋根の塗装200万円が目安額となるようです。

介護費用500万円

「平成22年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によると、要介護になる年齢は、75~79歳が17%なのに対し80~84歳は約24%、85歳~89歳約23%、90歳以上18%。80歳を超えると介護リスクが急増します。介護費用はどのくらい準備すればいいのでしょうか。

(公財)生命保険文化センターの平成24年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間は平均56.5ヵ月、介護費用は月額7万円と一時的な費用約91万円が必要に。これを基に試算すると、7万円×57ヵ月+91万円=490万円。かなりの金額です。

葬儀200万円

葬儀に対する意識の変化や故人や遺族の高齢化などから、葬儀スタイルは一般葬から家族葬や直葬へと変化しています。費用は葬儀のグレードや参列者数などによって幅があり、一般葬の場合は200万円、家族葬の場合60万円が目安のようです。

葬儀スタイルは、お別れの時間を故人とどのように過ごしたいか、どのように送りたいかによって選択したいものです。そういう意味では生前予約(契約)は、費用が明確で本人の意思を反映することができるので、検討する価値があります。

予備資金約3,000万円

以上から、子供への援助(子供2人と想定)や介護、葬儀費用夫婦2人分と住宅リフォーム費用で約2,500万円、さらに車の買い替えやちょっと豪華な記念旅行、孫との交際費などを加えると、予備資金は3,000万円程度になり、一般にいう「老後資金は3,000万円」と合致します。

では、あなたに必要な予備資金を計算してみましょう。予備資金の項目毎に夫婦で、あるいは子供を交えて話し合い、必要と考える金額を表−1に記入します。この過程は、今注目されているエンディングノートや終活につながります。

予備資金の目安がついたら、それがリタイアまでに準備できるか検討します。仮に準備できない場合は、老後に実現したいことの取捨選択や予算の見直しなどを行います。老後の準備は必要ですが、現在の生活の充実はそれにもまして大切です。予備資金の準備のために現役時代に過大なしわ寄せが及ばないようにしましょう。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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