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2014/09/01
二世帯住宅にするメリット、デメリットを知ろう

二世帯住宅にすると節税になり、老後の安心感も得られる

子どもとの同居や二世帯住宅は、節税対策になるだけでなく、配偶者が亡くなって独りになった場合の介護のことを考えると、安心できる住み方だと言えるでしょう。2015年からは、玄関が別々にあるような独立型の二世帯住宅でも小規模宅地等の特例が認められるようになりますので、同居するメリットは大きいと言えます。

土地活用や不動産の節税対策をする場合、小規模宅地等の特例ははずせない対策。自宅の土地について330m2までは80%減額でき、20%の評価で申告できることは、大きな節税要素となります。

老人ホームに入っても特例が使える

以前は、相続人が同居していても老人ホームに入所した場合は別居扱いとなり、小規模宅地等の特例は適用できませんでした。しかし、2014年の1月1日からは、介護が必要なため老人ホームに入所する場合は、自宅を貸していなければ特例が認められるようになりました。

親と住んだ者勝ちだと不満が残る。相続の分割を決めておこう

同居や二世帯住宅は節税になり、子どもに老後を任せられるなど良いこと尽くめかというと、トラブルの原因となることも見過ごせません。

二世帯住宅は、親と同居する子ども優先で相続の話を進めてしまう傾向にあります。同居する人は親の土地や建物に住み、将来、それを相続できるキップを手にするわけです。財産の大部分が自宅という場合は、同居する子ども一人がメリットの大きい形となり、他の子どもは相続するものがなくなるという格差が生じがちです。

同居する子どもが親の老後の面倒をみることになるといえども、相続と介護は本来別に考えなければ、家族内のトラブルのもとになりかねません。介護をしない子どもに渡せる預貯金を残したり、生命保険に入っておくなどして、子ども全員の了承を得ておくほうがよいでしょう。さらに、遺言で財産の分け方を示しておけば、相続問題も避けられます。

【実例】別の土地に家を建てるよりも二世帯同居を選んだNさんの場合

被相続人:Nさんの父親 相続人:Nさんの母親+Nさん(30代女性)と弟さん

Nさんは夫と子ども一人の3人家族。現在は、ご両親と独身の弟さんが暮らす実家に同居していますが、来年お子さんが小学校へ入学するのをきっかけに、今年中に家を購入するつもりで物件を探し始めました。

父親に相談したところ、他県に祖父から相続した空き地があるので、そこに家を建ててみては?と提案してくれたのですが、県外で暮らすことに不安を感じました。その空き地とは別に、父親は200坪の土地を所有し、そこに実家と自分が経営する会社の工場が建っています。

そうするうちに、弟さんの結婚が決まり、近々家を離れることになりました。そうなると、将来はNさんが両親をサポートする必要性がでてきました。

実家は築30年が経過して老朽化。段差もあって、高齢者には住みにくくなってきたので、結局実家を解体して、ご両親とNさん家族が一緒に暮らす二世帯住宅を建てることにしました。弟さんも両親の面倒は看られないということで、Nさんに同居してもらえると助かると賛成してくれました。

祖父の空き地を売却し、それに両親が資金を足して建築資金の3分の2を捻出。残り3分の1をNさん夫婦が出して、2世帯住宅の資金繰りもできました。Nさんの希望どおり、お子さんの入学までには完成する予定で、実家の建て替え工事が進み始まりました。

Nさんが同居を始める決意をしたことで、父親や家族の考えも明確になりました。最終的に父親は、Nさんには自宅を、弟さんには隣地にある会社の土地と株を譲ることに。ほぼ、等分での相続になり、家族で合意もできました。父親は家が完成したあと、遺言書を作成する予定です。

[対策前]
●財産評価 1億5,420万円
内訳
実家:7,060万円(土地 6,420万円+建物 640万円)
祖父の空き地:1,870万円
預金:1,000万円
その他(会員権、同族株、貸付金):5,490万円
[合計]:1億5,420万円

●相続税 約1,590万円(改正法)
(計算式)
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
 財産評価 1億5,420万円 - 基礎控除 4,800万円(3,000万円+600万円×法定相続人数 3人)=1億
 620万円
2.母親の課税遺産総額を法定割合2分の1と想定し、5,310万円に税率30%を掛け、定められた控除額
 700万円を引きます。
 5,310万円×30% - 700万円=893万円
3.子ども1人の課税遺産総額を法定割合4分の1と想定し、2,655万円に税率15%を掛け、定められた控
 除額50万円を引きます。さらに2人分を合算します。
 2,655万円×15% - 50万円=348.25万円、348.25万円×2=696.5万円
4.母親と子ども2人の相続税を合算し、合計額を出します。
 893万円+696.5万円=1589.5万円

◇対策
1.祖父の空き地を1,870万円で売却。手数料や税引き後手取り1,500万円に。
2.老朽化した実家を解体するため建物評価は0円に(-640万円)。
3.祖父の土地の売却金1,500万円に預金500万円を加えた2,000万円で、二世帯住宅を建築。
 二世帯住宅の評価額は建築費の40%と想定し800万円に。

[対策後]
●財産評価 1億3,210万円
内訳
二世帯住宅:7,220万円(土地 6,420万円+建物 800万円)
預金:500万円
その他(会員権、同族株、貸付金): 5,490万円
[合計]1億3,210万円

●相続税 約1,171万円(改正法)
(計算式)
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
 財産評価 1億3,210万円 - 基礎控除 4,800万円(3,000万円+600万円×法定相続人数
 3人)=8,410万円
2.母親の課税遺産総額を法定割合2分の1と想定し、4,205万円に税率20%を掛け、定められた控除額
 200万円を引きます。
 4,205万円×20% - 200万円=641万円
3.子ども1人の課税遺産総額を法定割合4分の1と想定し、2,102.5万円に税率15%を掛け、定められた
 控除額50万円を引きます。さらに2人分を合算します。
 2,102.5万円×15% - 50万円=265.375万円、265.375万円×2=530.75万円
4. 母親と子ども2人の相続税を合算し、合計額を出します。
 641万円+530.75万円=1171.75万円

【節税額】対策前の相続税 約1,590万円 - 対策後の相続税 約1,171万円 = 節税額 約419万円
※さらに小規模宅地等特例、配偶者の特例を適用すれば0円にすることも可能です。

このように家族間でしっかりコミュニケーションをとって、あらかじめ自宅のことを決めておけば円満相続に。家族全員が納得できる相続について、よく話し合いましょう。

執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
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