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老後の暮らしとお金のコラム知らないと損をする相続・贈与対策

2015/04/06
分けにくい不動産は争いのもと。相続人が複数いるとトラブルに!?

相続は財産が分けられないことで争いにつながる。特に不動産が課題

遺産相続で争いになる原因には、財産の多い少ないよりも、まず財産を分けられないことが挙がってきます。預貯金、株などの流動資産であれば1円単位まで分けられますが、不動産だとそういうわけにいきません。

たとえば、相続人が複数いるのに不動産は1ヵ所という場合があります。親が亡くなり実家が空き家になった場合、それを売却して相続人で等分に分けるというのであれば誰も文句はないでしょう。ところが、相続人の1人が実家に暮らしていて、不動産はほかになく、預貯金がほとんどないということもあります。そうなると、実家暮らしの相続人は親の面倒を看てきたこともあり、寄与分を主張し、実家の相続を要望。さらに、お金は残らなかったので、遺産として分けるものはないということに。

たとえ実家以外に賃貸物件があっても、実家で暮らす相続人が独占したいと主張する場合もあります。収益がない実家はもちろんのこと、親の面倒を看てきた権利として収益のある賃貸物件ももらいたいということです。よって不動産は全部1人の方が相続するということになり、家を出た相続人には遺産はないことになります。

そのような場合、実家を離れた相続人にも当然の言い分が出てきます。実家で暮らしていた分、自分で家賃も払わずに生活ができ、優遇されてきたはず。家を買った自分たちと比べると恵まれていると言う話になります。そのうえ、預金が残っていないというのもどうにも腑に落ちない、実家暮らしの相続人が親からお金をもらったのでは?と疑い始めます。

不動産があって揉めないほうが不思議

不動産が分けられない場合、不動産を相続する人が他の相続人に代償金を払うというのもひとつの方法です。実家暮らしの相続人が実家を相続するのはかまわないが、かわりにお金をもらいたいというのは当然の主張でしょう。この場合、実家を相続する人が自分のお金を支払うことになりますが、この代償金の決め方が非常に難しいのです。不動産評価の法定割合ともなるととても支払える金額ではなく、話は簡単にまとまりません。

こうなると、揉めないほうが不思議というぐらいで、実の兄弟姉妹であっても修復できないほどの険悪な関係になり、少々話し合うぐらいでは互いに妥協できなくなります。

不動産は相続財産の中でも大きな比重を占めるものだけに、家族にとってプラスになるような明確な将来像をもっておかないとトラブルのもとになりかねません。「法定割合の共有なら文句はないはず」と安易に考えてしまうと、将来問題を引き起こすことになります。これは不動産を所有する人にとって大きな課題です。

【失敗実例】自宅も賃貸物件も妹に分けたくないMさんの場合
被相続人:母親
相続人: 本人(Mさん 60代女性)
妹1人

お母さんを亡くしたMさんは、他家へ嫁いだ妹さんと二人で相続手続きをすることになりました。お母さんの財産は、自宅と9世帯のアパートと預金です。毎年確定申告を依頼している税理士のところへ相談に行ったところ、アパートのローンがまだ残っていることもあり、お母さんの財産評価は基礎控除内に収まり相続税の申告は必要ないとのこと。

Mさんは旦那さんと離婚し、実家に戻ってお母さんと同居していました。息子さんが一人いますが、結婚して別居しています。お母さんとMさんはアパートの家賃収入を生活費に当てていました。妹さんは結婚して近くに住んでいますが、数年前に事業家の旦那さんが亡くなり、子どももいないので現在は一人暮らしをしています。実家で暮らし、アパートの家賃を生活費にしていた Mさんにしてみれば、実家もアパートも自分が譲り受けたいところ。しかし、お母さんの遺言書はないので、姉妹での話し合いが必要になります。

そこで、妹さんと話をしたところ、妹さんは旦那さんから相続した自宅もあり、実家は譲ってもよいと言ってくれました。ただし、Mさんの希望を優先するかわりに妹さんへ代償金を支払うことに。そうして、実家はMさんに、妹さんには代償金という基本方針には合意が得られました。

そして代償金を決める段になり、Mさんから出た言葉は「妹さんには旦那さんの遺産があり余裕があるので、実家もアパートも自分がもらいたい。代償金は支払うが少なくしてもらわないと今後の生活や賃貸事業が大変」という本音でした。提示された金額は、妹さんが予想していたよりも少なく、同意はできないという答えが返ってきました。

結局話はまとまらず、とりあえずは未分割のままで実家には Mさんが住み、賃貸収入も修繕費などの支出も二等分することでなんとか維持されています。

〈揉めないための生前の相続対策のポイント〉

Mさんの場合、お母さんに遺言書を作成してもらわなかったことがそもそもの失敗に。一緒に暮らしたり、介護したりすることは特権にはならず、遺産の分割は避けられません。
相続を円満に乗り切るためのポイントは・・・

・普段から家族間でコミュニケーションをとっておく。いざのときでは円満にいかない
・財産や生前贈与はオープンにし、疑心暗鬼のもとをつくらない
・寄与や介護の役割分担の情報を共有し、一方的な主張にならないようにする
・被相続人の意思が最良の説得材料となる。配慮のある遺言があると違う
・被相続人にとって意思を残すことは権利であり、義務。残された人に託すと必ずトラブルになる

円満な遺産分割協議をするためには、まず代表者が公平な立場で話し合いを進めなければなりません。一方的な進め方はこじれるもとになります。また、前向きな話を前提とし、過去の話は持ち出さない。感情的になってしまうとうまくいく話も台無しになります。思わぬ一言が一生許せなくなり、縁が切れてしまう可能性も。遺産分割協議の場を、必要以上に責め合う場にしないよう心がけましょう。

執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
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