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22年路線価、全国平均が2年ぶりに上昇

2022年07月04日

国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる22年分の路線価(1月1日時点)を公表した。全国平均は+0.5%となり、2年ぶりに上昇した。路線価が上昇した都道府県の数は20(昨年7)に増え、下落した都道府県は27(39)に減少。

コロナの影響で全国的に下落が目立った昨年に比べ、人流の回復でプラスに転向した地点や下落幅が縮小した地点が増えた。全国的に回復傾向がみられた一方、都心のオフィス街の回復が遅れている現状も明らかになった。

東京・中央区銀座5丁目の銀座中央通り(鳩居堂前)は、前年比△1.1%の1㎡当たり4224万円で、37年連続で路線価全国トップとなった。下落は2年連続だが、昨年の△7.0%に比べ下落幅が縮小した。

都道府県別では、最も上昇したのは北海道で+4.0%(+1.0%)、次いで福岡県+3.6%(+1.8%)、宮城県+2.9%(+1.4%)と続き、いずれも昨年を上回る上昇を見せた。最も下落したのは和歌山県で△1.3%(△1.2%)だった。

都市別では、最高路線価が上昇した都市は15都市(8都市)、横ばい16都市(17都市)、下落した都市は16都市(22都市)。全国で最も上昇した都市は千葉。千葉のけん引役は中央区富士見2丁目(千葉駅前大通り)で、千葉駅前の再開発により+5.1%(+3.5%)へと上昇の勢いを強めた。最も下落した都市は神戸。中央区三宮町1丁目(三宮センター街)が△5.8%(△9.7%)だった。商店街の人流減少が影響したとみられる。

商業地の回復には、バラツキがみられる。東京都心のオフィスが集積する千代田区丸の内2丁目(大名小路)は、△1.3%(△1.1%)にマイナス幅が拡大。大企業を中心にテレワークが定着したことがオフィス需要に影響、路線価も下落した。同じく千代田区の外神田4丁目も△2.0%(△10.5%)でプラスには届かなかった。

一方で、昨年△11.9%の大幅下落となった浅草(台東区浅草1丁目〈雷門通り〉)は+1.1%に回復している。観光需要の回復が浅草のプラス転向を支えた。

同じ観光需要が強い地点でもインバウンド依存の高い大阪の商業中心地は、中央区心斎橋筋2丁目(心斎橋筋)が△10.6%だった。この地点を所管する大阪南税務署は、税務署別で変動率最下位となっている。税務署別でトップは、+20.0%の長野県大町税務署。国税庁は大町税務署について、「白馬村に国内事業者の投資需要がみられる」としている。

路線価は、国土交通省の地価公示価格の80%をメドに定められている。

22年分の路線価に対し、業界からは次のようなコメントが寄せられた。

菰田正信・不動産協会理事長 コロナ禍からの我が国経済の持ち直しの動き等が出始めたことが地価に反映されたものと認識している。一方、ロシアのウクライナ侵攻による資源・エネルギー価格の高騰や金融資本市場の変動等によって、先行きは非常に不透明な状態にあることから、今後の地価動向について十分に注視していく必要がある。

坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 これまで新型コロナウイルスの影響を受けたものの、ようやく落ち着きをみせつつあるが、依然、ウクライナ情勢の混迷や原材料の高騰などが懸念されるところであり、不動産市場をはじめとする国内経済への影響が危惧されるものである。

直近の動向を示している国土交通省の地価LOOKレポートでも前期調査と同様の地区が大幅に増えたことから変化はまだ小幅なものであると認識している。

秋山始・全日本不動産協会理事長 評価基準額の対前年変動率全国平均値が2年ぶりに微増に転じたほか、都道府県庁所在都市の最高路線価についても上昇地点が前年の8都市から15都市へとほぼ倍増している。

国土交通省の「地価LOOKレポート」の22年第1四半期の概況によれば、全体の動きは直前四半期から変化が小さかったとされており、現下の地価推移は、一部地方都市の活況を除き、概ね横ばいから極めてゆるやかな上昇の局面にあるものと受けとめている。

(提供:日刊不動産経済通信)

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