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特集 上昇強まる地価の最新動向

2023年03月28日

東京と大阪、名古屋の三大都市圏で新築分譲マンション価格の上昇基調が鮮明だ。

折からの資材高と土地高、労務費の高止まりで建設コストが膨らむなか、大手不動産各社は価格転嫁が比較的容易で「空振り」のリスクも小さい都心好立地での開発に重点投資する。

金融情勢に不確定要素が多いせいもあり、資産価値が目減りしにくい都心物件を買い求める需要が強い。同時に、物件価格が高騰する都心から郊外へと目線を移す消費者も増えている。

1月1日時点の地価公示では三大都市圏の住宅地がいずれも2年連続で上昇した。

コロナ禍の沈静化に伴い繁華街に人出が増え、店舗やマンション用地のある商業地も東京、名古屋で2年続けて上がり、大阪でも3年ぶりに上昇に転じた。

都市部では市街地再開発や鉄道延伸などのイベントが地価を押し上げ、その余波が周辺の衛星都市に及ぶ傾向がある。

大都市のマンション需要は長らく好況が続いてきたが、エリアや価格帯などで濃淡がつき始めてもいる。東京など首都圏1都3県の22年の新築分譲マンションの平均価格は6288万円と過去最高を更新したが、千代田区など一部の都心物件が総額を押し上げている側面が大きい。

ある大手デベロッパーの幹部は「年初からモデルルームの来場者と反響が減った。これまで売れていた物件が売れにくくなった」と打ち明ける。

富裕層が「半投資」目的で買う都心物件の販売は堅調さを保つが、物価高とインフレへの警戒から市民の生活防衛意識が高まるなか、特に郊外で売れ行きに黄信号が灯る物件が目立ってきた。

日銀が昨年12月に量的緩和を縮小したことで「金利の先高感などから様子見に入る消費者が増えた。海外投資家も買いを手控えている」(大手不動産鑑定評価会社)との見方もある。

東京都心とその周辺では大型物件の供給が多い。2月に「三田ガーデンヒルズ」が発売され、6月には「晴海フラッグ」の目玉となる50階建てツインタワーの一部も市場に出てくる。JR浜松町駅直結の「ワールドタワーレジデンス」は総戸数389戸のうち170戸を3月中旬までに供給した。

三菱地所レジデンスの販売担当役員は浜松町のタワーについて「平均坪単価は1150万円だが倍率は5倍近い。高額物件を買う層が厚みを増している証左だ」と分析。三田ガーデンヒルズにも「300戸の募集に2倍以上の申し込みが入り、滑り出しは極めて順調だ」と手応えを感じている。

複数社が西新宿や池袋、月島などで売る大規模物件も反響は強い。一方、独立資本らの郊外物件については「間取りなどの商品性が良くても売れ行きは鈍い。リタイア層が買っていたシニア住宅の勢いも落ちてきた」(大手仲介)との声も。

郊外物件は建築費の上昇分を販売価格に転嫁しにくいことが多く、専有面積を70m2台から60m2台に圧縮するケースも散見される。
 
大阪市中心部にもタワーマンションなどの大型案件が増えている。在京大手の進出が目立つ。

東京都心と同様、主に支払い余力のある層が買い支え、価格相場を上げている。市内の新築マンションの平均坪単価は280万円強程度だが、都心物件には500万円以上のものが多い。

大阪メトロ西梅田駅に近い「ブリリアタワー堂島」は坪600万円を超えている模様だ。

上昇する建築費の影響は大阪市内でも色濃く、「郊外での事業化は価格転嫁が難しくリスクがある」(大手不動産)と供給者も都心重視の姿勢を強めている。

三宮駅周辺など神戸市中心部で高層マンションの開発を抑える条例が敷かれ、その反動で事業者の目線が大阪市内に向きやすくもなっている。

JLL関西支社の山口武リサーチディレクターは「中心区に開発が多いが、今は投資と居住の需要が付いてきている。ただ価格がさらに上がれば様子見に入る向きが増え、売れ行きが落ちてくることは考えられる」と話す。

もともと大阪は郊外物件に厚みがある。最近では北大阪急行電鉄南北線が千里中央駅から延伸する箕面市のほか、枚方市や滋賀県大津市、兵庫県明石市など外周部へと開発範囲が広がりつつある。

名古屋市でも特に名駅から栄にかけての中心部で新築マンションの値上がりが続く。都心で売られるタワーマンションの平均坪単価は350万~400万円ほどだが、上層住戸は600万円に近づく。

近年では21年に売り出された「名古屋ザ・タワー」と「ザ・ファインタワー久屋大通」の2物件が価格相場を底上げした。ただ昨年は都心で大規模物件の発売が減ったせいもあり、平均価格の上昇基調が一服した。

名古屋は東京や大阪などに比べマンションの商圏が狭く、戸建て住宅の支持者も多い。主要駅に近いマンションを諦め、駅からの距離を徒歩で10分ほども妥協すれば良質な戸建てを割安で買える。

刈谷や安城、岡崎など郊外都市のファミリー向けマンションの相場は坪単価180万円前後だが、「165万円程度に下げると売れる事例があり、グロスで4500万円程度が分水嶺だと考えられる」(市内企業)という。

名古屋には電鉄系を含む大阪の開発事業者らが相次ぎ進出しているが、都心のマンションは価格上昇などで成約率に陰りがある。マンションを見ていた消費者が郊外の戸建て住宅に鞍替えしやすいという環境が、東京、大阪のマーケットとの大きな違いだ。

(提供:日刊不動産経済通信)

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