売主様・買主様で用途の異なる大規模な工場の売買を、行政とも連携しサポート

今回紹介するのは、規模が大きな工場の売買事例です。大手企業同士の取引であり、かつ売主様と買主様の用途が異なっていたため、懸念点をできるだけ早い段階で払拭する必要がありました。また、それぞれのお客様に適した距離感とスピードも求められる取引でした。

これらの課題に対してどのような提案を行ったのか、取引がスムーズに運ぶようにどのようなアプローチを図ったのか、経緯や要因を野村不動産ソリューションズ法人営業本部 名古屋営業部の加藤諒が質問形式で答えます。

今回の事例概要

      
◆物件概要
所在地 静岡県裾野市
土地面積 18,000坪強
物件種別 工場
建物概要 鉄骨造 地下3階・地上2階建て
延床面積:6,000坪強
建物築年 2009年
用途 自動車部品製造工場
◆売主様企業
業種 自動車部品製造業
◆買主様企業
業種 生活用品の企画、製造、販売
※清涼飲料水等の製造工場として本物件を取得

Ⅰ.今回の取引の経緯は?

当社の顧客層や提案姿勢を評価いただき、売主様と媒介契約を結ぶ

今回の売主様は過去にお取引のないお客様でしたが、2020年に初めてWEB面談をさせていただいた後、半期ごとに当社から不動産マーケット情報や事業法人の動向などをお伝えしながら、課題を伺っていました。

2022年には、売主様が所有する工場のうち2件を売却することになり、当社も仲介会社として入札に参加しました。どちらも2番手となり落札には至りませんでしたが、2件ともに札を入れることができたのは当社のみでした。

その後に今回の大規模工場のご相談がありました。売主様は当初、ほかに3社の仲介会社を検討されていましたが、結果的には当社の持つ購買力のある顧客層や過去の入札で真摯に対応した姿勢などに魅力を感じていただいたとのことで、当社を専任で売却幹事に指定していただきました。

Ⅱ.取引における課題は?

大規模な工場、売主様は契約不適合責任免責での売却を希望

まず、工場の規模がかなり大きいものであったため、そもそも購入できる企業が少ないというハードルがありました。

また、売主様が所有していた工場を閉鎖したのは2020年頃です。建物は築10数年と築浅でしたが、売却を決定された時には既に2年が経過しており、その間使用していなかったため、設備の稼働可否が不明でした。そのため、売主様は現況有姿での売却、つまり契約不適合責任を免責とすることに納得して購入いただける買主様への売却を希望されていました。

Ⅲ.どのように進めた?

自治体とも企業誘致で連携、買主候補の希望にも迅速に応える

売却の媒介契約を結んだ後、物件所在地の行政である静岡県と裾野市へ挨拶に赴き、当社が売却仲介を担当することになったことを伝えました。また、静岡県と裾野市の担当者にどのような不動産であるかを確認してもらうため、現地内覧会を開催しました。行政が企業誘致を行うケースも多いため、このような連携は珍しくありません。
静岡県と裾野市も企業誘致には積極的で、遊休地に新たな企業が進出することを歓迎しており、買主様候補となる企業を探すサポートをしていただくことができました。

2段階の入札を経て、最終的に行政から紹介された企業が落札しました。優先交渉権を取得した買主様から「一刻も早く工場を使いたい」という希望があったため、売主様には事前にそのことを伝え、早めに社内調整を行っていただきました。
一方で、売主様の担当部署は総務部でしたが、本取引については役員会を通さねばならず、時間を要することもありました。そのようなとき、当社としては経過確認や事務連絡は要所要所にまとめ、先方の負担にならないよう心掛けました

また、現況有姿での売買を前提としていたため買主様からは「現地設備等の動作状況を確認したい」という要望をいただき、トラブルがないよう当社立ち合いのもとで複数回の現地確認を行いました。買主様となった企業の会長が現地内覧する際には、当社の役員が赴き、同じ経営者の目線でお話するなど、買主様の立場に立った案内や説明を心掛けました。

Ⅳ.成約の要因は?

お客様の意向を察し、スピーディで確実な取引につなげる姿勢

まず、売主様が当社を信頼いただき、専任で売却の幹事を任せていただけたことです。これにより、当社が情報を一元的に管理して取引に必要な各所との調整や行政との連携を綿密に行うことができました。また、前述した当社の顧客基盤や、「どのような案件にも真摯に対応しようとする姿勢」を評価いただけたほか、取引後に「程良い距離感がよかった」という言葉もいただきました。

買主様は落札後の用途が明確だったため、今回の物件が適していたこと、新たにゼロから工場を建設する必要がなく、ほぼ居抜きでの使用が可能だったこと、築浅であったことなどが購入の決め手となりました。

買主様の窓口担当は会長の秘書の方でしたが、秘書の方が困らないように説明資料を当社でまとめたり、内容を分かりやすくお伝えしたりするよう心掛けたこともスムーズな取引につながったと感じます。売主様も買主様も、担当の方が不動産取引の流れや関連する法律などを熟知している専門部署の方とは限りません。一方で不動産担当として社内の役員や決定権者に説明しなければならないケースは多々あります。そのような場面を想定して準備をお手伝いすることも仲介者の役割だと考えます。

そして何よりも買主様が特に重視されていた「スピード」を実現したことです。不動産を取得したらすぐに工場を稼働したいというご希望に沿えるよう、私も確認事項のレスポンスを素早く確実に行うよう注力し安心してお取引いただけるよう努めました。結果として、当初の引き渡し予定を約2ヵ月前倒しするかたちで、売主様・買主様に契約と決済を一括で行っていただくことができました。

Ⅴ.野村不動産ソリューションズ、および法人営業本部の強みは?

売買ニーズが具体的でなくても、不動産のことを何でも気軽に相談できる体制

法人のお客様が不動産を頻繁に売買することは稀です。しかし、いざ売買が決まると担当部署の方々には社内の中心となって取引を進めることが求められることが多くあります。そのような際、いつでも相談できる先があることがお客様にとってベストな状態ではないでしょうか。
もし当社にご相談くだされば、課題解決に向けて何かしらのソリューションを提供できるのではないかと自負しております。

また、当社には日本全国、国内外に拠点があり、證券会社などの金融機関と連携する体制も整えています。お客様からのご要望に応じて、例えば、売主様からお聞きした不動産の概要や売却の希望条件などは、全国、また案件によっては海外の社員にも共有することができます。この体制によって、数多くの潜在的なお客様の中から、購入者となるお客様を見つけ出すことができるのです。

お客様への説明のため加藤が実際に用いた資料。
日本全国の拠点のほか、香港・シンガポールにも拠点を有し国内外のニーズに対応している

Ⅵ.最後に一言どうぞ

企業の資産管理において「信頼できる」仲介役に

近年、所有する不動産の老朽化に頭を悩ませている企業のご担当者も多いようですが、修繕して使い続けることや建替えること、売却し資金化など解決するための答えは一つではありません。今後も継続して、それぞれのお客様にとって最善の活用方法を提案したいと考えています。

提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部

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