学校法人における不動産活用をめぐる状況

少子化による日本の18歳人口の減少傾向により、私立大学では定員割れが問題となっています。

日本私立学校振興・共済事業団が発表した「令和3年度 私立大学・短期大学等入学志願動向」によれば、全国の私立大学597校のうち、約46.4%にあたる277校で入学定員充足率(入学者数÷入学定員)が100%を切っていることがわかりました。今後も18歳人口は減少傾向と推定されています。
また定員厳格化に代表される、都市圏と地方の大学間の二極化も問題となっています。

このような状況の中、2019年に私立学校法の一部改正も含む「学校教育法等の一部を改正する法律」が可決され、2020年4月1日より施行が開始されました。

今般の私立学校法の主な改正内容は以下の3つです。


<私立学校法の主な改正内容>

①大学を設置する学校法人は、”大学等の教育研究等の状況を評価する認証評価”の結果を踏まえて、
 事業に関する中期的な計画等を作成するものとすること
②大学を設置する学校法人は、財務書類等を公表するものとすること

③その他、役員の職務及び責任に関する規定の整備、寄付行為の内容の公表 など

①の改正では、私立大学は、外部認証機関による評価結果を踏まえて中期計画を策定することが法定義務となり、その計画の進捗・達成状況や経営上の成果と課題についての評価が求められることとなりました。

中期計画を作成していない学校法人は計画の作成が必要となるのは勿論のこと、従来から中期計画を作成していた学校法人も、後に計画の達成状況等が確認できるよう、可能な限り具体的な計画を作成することが望ましいと考えられます。

計画の最終年度と各年度における定量化・定性化された到達目標の設定や年度ごとに展開される工程表の作成などです。また、計画の内容としては教学、人事、施設、財務等に関する事項が盛り込まれることが必要であるとされています。

②の改正では、情報公開の内容と範囲が大幅に拡大しました。財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書、役員等名簿の財務書類等を、利害関係人に限定せず、ウェブサイト等でダウンロード可能な形で公表すべきこととなりました。

財務の概要については、各計算書類単位で5か年の経年比較が求められるとともに、これまでの事業報告書の内容を遥かに超える記載が求められています。また、寄附行為の内容、監事による監査報告書の内容、役員報酬等の支給の基準についても公表することとなりました。

これらの私立学校法の改正は、「透明・公正かつ迅速・果断な意思決定」を学校運営に促すものと考えます。さらには、私立大学の学校運営、ひいては不動産運営においても、少なからず影響を及ぼすものと考えます。学校運営における「透明・公正かつ迅速・果断な意思決定」において、財産目録上で主要な財産の一つである不動産の「適正価値の把握」と「戦略的活用計画の策定」は、重要な施策のひとつと言えるでしょう。

このような状況の中、一部の学校法人においては本来事業である教育研究活動のほか、収益事業に取り組んでいることがわかりました。

「令和3年度文部科学大臣所轄学校法人一覧」より、収益事業としての不動産事業を営む学校法人を主要都府県について集計すると、449法人のうち72法人(約16%)が収益事業としての不動産事業を営んでいることがわかりました(末尾「不動産事業を営む学校法人一覧」参照」)。なお実態としては、より多くの学校法人が不動産事業に取り組んでいると考えられます。

【 不動産事業を営む学校法人数 】

文部科学大臣所轄の学校法人数

うち不動産事業を営む学校法人数

東京都

167

37(22%)

神奈川県

27

5(19%)

埼玉県

20

3(15%)

千葉県

17

1( 6%)

大阪府

59

6(10%)

京都府

28

1( 4%)

兵庫県

30

2( 7%)

愛知県

44

5(11%)

福岡県

30

6(20%)

広島県

13

2(15%)

宮城県

14

4(29%)

合 計

449

72(16%)

              カッコ内は不動産事業を営む割合(※野村不動産ソリューションズ調べ)

X大学は、2021年に全学部をAキャンパスに統合してBキャンパスを閉鎖し、Bキャンパスの跡地について活用をすすめています。

具体的には、既存の建物を再生医療の研究施設として活用するほか、図書館・イベントスペースといった地域に開放する施設として整備し、病院と介護施設の複合棟も新設します。将来的にはCCRC[1]としても活用する予定です。

Y大学は、出資会社に不動産賃貸を行い収益を獲得しています。

出資会社は1990年代に設立された従業員数数十名の出資会社です。事業収益を学校法人に還元するため、リース、警備・清掃、出版・印刷などの多岐にわたる事業を行っています。Y大学は出資会社に土地と建物を賃貸することで収益として賃貸料を得ています。

Z大学は、2019年にCキャンパスの閉鎖に伴い跡地の建物をD社に売却しました。

土地については、E市より無償譲渡を受けていたものを返還しています。E市では周辺のスポーツ施設を生かしたスポーツウェルネスエリアの整備を進めています。

保有不動産からの収益獲得は一般化しつつあり、活用方法にはさまざまな手法がありますが、昨今では、リスク回避や意思決定の柔軟・迅速化、人件費削減などの観点から、出資会社を利用するケースも散見されるようになってきています。私立学校法の改正などにより将来を見据えた経営計画が求められる中、保有不動産の有効活用は今後も活発化すると考えられ、学校運営にとって重要なテーマのひとつとなると考えられます。