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新横浜エリアの建物状況について
横浜市の新横浜エリアにおける不動産(建物)について、登記事項の調査を行い、建物の状況や所有者の属性からみた、売買の動向等について調査しましたのでご報告します。
【サマリー】
●当該エリアにおける建物種類の約半分が事務所系建物です。特に、駅に近い二丁目に多く存しています。
●築10-40年が8割超を占めています。築10年以内は7%にとどまりました。
●所有者の属性は、事業会社が4割と最も多くなりました。
●所有者の住所別にみると、所有者の約6割が横浜市内です。また、2割が新横浜に存しています。
●来年相鉄・東横線の相互乗り入れ開始によって、利便性が高まることから、今後も注目のエリアといえます。
Ⅰ.データの概略、および留意事項
新横浜1~3丁目において、当方で条件を定め登記簿図書館社より取得した建物登記事項証明書データをもとに集計しています。
既存の建物登記事項証明書についてのみ調査しており、土地の売買や滅失された建物は対象外となります。
Ⅱ.調査結果
1.種類別、延床面積別比率
当該エリアの建物種類[1]は、事務所系(事務所および事務所・共同住宅)が全体の48%を占めています。続いて店舗系(店舗および店舗・共同住宅)が14%、共同住宅が12%です(図表I)。事務所系・店舗系は、駅前である新横浜二丁目に集中しており、この種類における棟数の約半分が当該エリアに存しています。共同住宅、ホテルは駅からやや遠い新横浜一丁目における割合が高くなりました。
建物延床面積別に見ると、3000㎡以上の建物が42%を占めています。続いて、1000~2000㎡が23%となりました(図表II)。
また、町名別に棟数を比較すると、駅前の新横浜二丁目が41%と一番大きい割合を占めています(図表III)。特に、新横浜二丁目・三丁目では3000㎡超の割合が高く、町内の約半分を占めています(図表IV)。一丁目においては、「300-1000㎡」、「1000-2000㎡」が比較的多いといえます。
2.築年数別比率
建物の築年数を10年おきに分け、棟数を調査すると、築10-40年が8割超を占めています(図表V)。新横浜駅周辺では、1976年新幹線「ひかり」が当駅に停車するようになり駅周辺の開発が進んでいったこと、また二度のバブル期において全国的に非住宅建物の着工数が増加したことから、上記年代の割合が高いといえます。
「築10年以内」は、7%に留まっています。これは年代別では築50年以上(1%)を除き、最も少ない割合となりました。
種類別にみると、事務所系は「築30-40年」が、店舗系は「築20-30年」が最も高い割合となりました。本エリアにおいて事務所が建つことで人出が増え、認知度が向上したところで、店舗系建物が増加していったことをうかがわせます(図表VII)。
3.取得時期
現所有者の取得時期(受益権含む)を2017年4月から2022年3月までの「5年以内」、「5-20年」、「20年超」に分けて調査しました。「5年以内」の取得割合は15%です(図表VIII)。なお、同一建物が複数回売買されていることを考慮した上で取引棟数の年平均を計算すると、「5年以内」の年平均取引率(1年間に取引される確率)は3.9%、「5-20年」は3.7%となりました。直近5年間では、5-20年と比較すると売買数が微増している状況です。なお、今回の調査対象は、既存の建物登記事項証明書が取得できたものに限るため、土地購入後建築をした場合や売買後滅失された建物については反映されていません。
また、「5年以内」に売買が行われた建物について前所有者の取得経緯をみると、6割が売買による取得、4割が当初からの所有または相続等によって移転を受けています。前所有者の平均保有期間は約8年でしたが、前所有者も売買により建物を取得した場合に限ると、9割が5年以内に売却をしており、保有期間の平均は約3年となりました。
4.所有者の属性別特徴
所有者の属性は、事業会社と個人が大きな割合を占めています。「大手事業会社」「その他事業会社」の割合は合わせて42%、「個人」は25%です。不動産会社は15%となり、このうち中小の「その他不動産会社」が8割超を占めます(図表IX)。
5.住所別特徴
現所有者の所在地別にみると、「横浜市」が63%、続いて「東京都」が30%です(図表X)。なお、新横浜を所在とする法人・個人が21%でした。
横浜市以外の神奈川、および東京以外の首都圏に存する所有者の割合は合わせて2%超と、首都圏以外の所有割合よりも少ない状況です。また、首都圏外(4%)について内訳を見ると、大阪府が最も多くなりました。
取得時期別にわけてみると、直近では東京所在の所有者割合が増加しています。これは東京の事業会社やSPC・投資法人等による取得が増えているためと考えられます。
[1] 複数種類登記されている場合は、原則1行目の種類を採用。区分登記された建物は除く。
Ⅲ.まとめ
以上、建物登記事項により調査した内容をご報告しました。
横浜エリアにおける収益不動産取引動向をみると、2012年から2022年までの10年間、オフィス・レジともに期待利回りは2012年6%超から4.5%へ低下しており[1]、新横浜エリアのオフィス賃料も当時坪9,600円台から11,100円台へと上昇しています[2]。来年には相鉄・東横線の相互乗り入れが開始することで、さらなるアクセス向上が見込まれるため、今後も注目度の高いエリアといえます。
不動産マーケットとしては、エリア内建物の約半分を占めている事務所系建物に加え、直近増加傾向にある1棟マンションや分譲マンションに関しては、投資目的のみならず、自宅やセカンドハウスとしての需要も見込める可能性がありそうです。ただし、エリア内建物の築年内訳をみると築10年以内の建物は7%と少ない状況です。建物の修繕状況等にも左右されますが、建物の取得に際しては、築20年以内(エリアの約30%)での検討なども必要になりそうです。
[1] (一財)日本不動産研究所「不動産投資家調査」(各地区の標準的ビルの期待利回り等について 横浜(横浜駅西口周辺))より
[2] 三鬼商事オフィスマーケット(横浜ビジネス地区/新横浜)より、2012年・2022年の平均賃料算出
提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部
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