オフィス移転時に取り組めるSDGsアクション5選

オフィス移転は、企業にとって大きなイベントの一つです。移転をする際には、やるべきことがたくさんありますが、そのプロセスにおいて持続可能な視点を取り入れることでSDGsの取り組みに貢献することができることを知っていますか?
電力会社やオフィス家具の見直しなど移転において取り組めることは多岐にわたります。
企業にとって一大事であるオフィス移転だからこそ、導入できることから始めてSDGsに貢献できれば一石二鳥となります。
この記事では、オフィス移転におけるSDGsへの貢献方法について解説していきます。

Ⅰ.オフィスにまつわる社会課題とは?

近年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オフィスの縮小や移転が注目を集めています。この背景には、コロナウイルスの流行をきっかけにした業績不審や、業務オペレーションの変化、リモートワークの導入などがあります。
しかし、オフィスを取り巻く社会課題は「働き方」や「感染症対策」だけではありません。まずは、オフィスが存在することで起きている社会課題について考えていきましょう。

ⅰ.オフィスが引き起こす環境負荷

オフィスが存在することで起きる環境問題はいくつかあります。
例えば、エネルギー消費の問題です。オフィスは空調や照明、電子機器などを常時稼働しているため、多量のエネルギーを消費します。このため、環境に悪影響を与えるCO2の排出量が増え、気候変動を引き起こす可能性があります。
また、プリンターや紙の使用による廃棄物の問題もあります。
オフィスでは、書類や資料の印刷やコピーなどが多く行われ、それに伴い大量の紙が消費されます。その紙の製造や廃棄に伴い、森林破壊や廃棄物の増加が起こる可能性があります。
さらに、オフィスに通勤する従業員の交通手段が車である場合、交通渋滞や排気ガスの発生が増加すると、地球温暖化の原因となります。また、車の使用による騒音や空気の汚染も問題です。
これらの問題を解決するには、省エネルギーの対策や、再生可能エネルギーの利用、資源の削減などが求められています。

ⅱ.多様化する価値観に合わせて求められる柔軟な働き方

社会の変化に伴い、ライフスタイルに対する価値観が変化し、従来のような一律の働き方から、個人に合った柔軟な働き方が求められるようになりました。

多様な働き方に関してはどのような問題があるでしょうか?
例えば、育児や介護、障がいなど多様なライフスタイルに対応できるオフィスのあり方や働き方の問題があります。
また、人種や性別、性的指向など、多様なバックグラウンドを持つ人材が働きやすい環境を整えるためには、照明やトイレ、更衣室など、ハード面に潜む課題も多くあります。
企業は多様な人材やライフスタイルに合わせて柔軟な職場環境を整備することが求められているのです。

Ⅱ.オフィスを移転するときにSDGsに貢献できる検討すべき5つの項目

ここからは、企業がオフィスを移転するときにSDGsのアクションにもなる、検討すべきポイントについて解説していきます。

ⅰ.使用エネルギーを再生可能エネルギーに変える

オフィスには照明、エアコン、コンピューター、複合機など、電気を駆動とするさまざまな設備があります。業態によって異なるものの、一般的にはオフィスのCO2排出量の半分以上が電気使用によるものであると推定されています。

電気を小まめに消す、空調温度を調整するなど、すでにさまざまな取り組みをしている企業も多いでしょうが、抜本的にCO2排出量を抑えるためには、使用エネルギーの見直しが求められます。
具体的には、オフィスで使用するエネルギーを化石由来でつくられたエネルギーではなく、再生可能エネルギーに切り替えましょう。そのことで化石燃料の使用を控え、CO2などの温室効果ガスの排出量を削減することができます。

ⅱ.必要オフィス面積を見直す

新型コロナウイルスの感染拡大により、オフィスの必要性について見直す企業が増えましたが、必要なオフィス面積を見直すことでSDGsに貢献することができます。

例えば、リモートワークでの働き方を積極的に推奨することで、社員は時間や場所に制約を受けずに仕事ができます。これにより、私生活や家事育児、介護との両立など、ワークライフバランスを改善することができます。

リモートワークで働く社員の割合を高めたり、リモートワークでの働き方自体を企業におけるスタンダードにすることができれば、SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」に通ずる多様な働き方の実現や働きがいの創出につなげることができるでしょう。
結果的に必要なオフィス面積も小さくなり、オフィスの維持費や電気代、通信費などを削減することもできるので、企業にとって経済的なメリットも大きいと言えます。

ⅲ.オフィス備品をレンタルする

最近では、オフィスの備品を購入するのではなくレンタルできるサービスも増えています。
レンタルできる備品は、デスクや照明などの家具から、PCなどの電子機器までさまざまなサービスがあります。

オフィス備品のレンタルにおいて、それらが不要になればレンタル会社が家具や機器を回収し、クリーニングして繰り返し使えるようにするため、廃棄物を出すことがありません。
これらのサービスを利用することで、天然資源の効率的な利用につながり、気候変動対策に貢献することができます。

ⅳ.オフィスの立地を見直す

気候変動対策を進めたい企業は、温室効果ガスの排出源を区分する「スコープ」について理解しておきましょう。

スコープ1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
例:都市ガスやプロパンガスの利用
スコープ2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
例:オフィスの電気利用
スコープ3 スコープ1、2以外の間接排出

上記のように企業が排出する温室効果ガスはスコープ1、2、3に分けられますが、社員が通勤する際に排出した温室効果ガスはスコープ3に該当します。
もし、自動車を使って出勤しなければならない立地にオフィスがある場合、必然的にスコープ3の排出量が増えてしまいます。
また、スウェーデン北部で通勤データを分析した調査 によると、女性よりも男性は通勤に自動車を多く利用する傾向があるということがわかっています。電車やバスなどの公共交通機関で通勤できる立地にオフィスを引っ越すことで、温室効果ガスの排出量を削減することができるでしょう。

ⅴ.社内に設置する飲み物を見直す

オフィスでは、コーヒーや紅茶、お茶など給湯室や自販機などでドリンクを提供する設備が整備されている場合も多いでしょう。
しかし、オフィスでドリンクを提供している企業において、紙コップやプラスチックカップなどの使い捨て容器が使われることも多いです。
また自販機が設置されている場合、その中の飲み物の多くはペットボトル飲料であり、これもまた廃棄物が増えてしまいます。

そこで、オフィスを移転する場合には、ウォーターサーバーの設置をすることで、マイボトルやマイカップの使用を推奨することができるでしょう。
設備を変えるだけで、脱プラスチックの取り組みを進めるだけでなく社員のSDGsに対する意識変革を行うことができるアクションです。

なお日本国内においては、ペットボトルをリサイクルペットボトルに再生する「ボトル to ボトル」の技術が進んでおり、ペットボトルの使用量を減らす取り組みに批判的な意見が集中することがあります。ですが、3R(Reduce・Reuse・Recycle)にも優先順位があり、Reduce(ごみの発生量を減らす)、Reuse(ごみになる前と同じ用途に再使用する)、Recycle(再使用できないものをリサイクルする)の順で取り組むことが求められますので、まずはオフィスでいかにごみを出さないか考えることが重要になります。

Ⅲ.まとめ

企業がオフィス移転をする際に検討できるSDGsの取り組みは、アクションの大きさを問わず、他にもたくさんあります。小さなアクションでもなにか1つ変えることで、企業として社内外にサステナビリティに対する姿勢を伝えることができます。
また、それに伴いアクションを始めた社員にサステナビリティに関する意識を醸成することができ、他のアクションが加速するという副次的な効果もあるでしょう。
今回の記事で紹介したように、オフィス自体の場所やモノを見直すことによって環境だけでなく、従業員の働き方やワークライフバランスなどに貢献することができるので、ぜひ検討してみてください。

玉木 巧(たまき こう)

合同会社波濤 代表 兼 株式会社Drop SDGsコンサルタント

1988年12月生まれ 大阪市出身。 SDGsコンサルティングを手掛ける株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。事業部責任者として、これまで大企業から中小企業のサステナビリティ推進を支援。それらの経験をもとに、これまで40万人以上のビジネスパーソンにセミナーも実施。 株式会社Dropのメンバーとして働きながら、企業のサステナビリティ推進をより加速すべく、2022年9月に自身の会社として合同会社波濤を設立し、現在は二足の草鞋を履いて活動中。 他にもYouTuber・Voicyパーソナリティー・Schoo講師など、SDGs を軸に多角的に活動を広げる。

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