【豊島区】大規模な防災公園も整備。大ターミナル駅「池袋」を擁する豊島区の防災対策
豊島区は1932(昭和7)年、それまで北豊島郡下にあった巣鴨町・西巣鴨町・長崎町・高田町が統合されて誕生しました。北豊島郡がなくなることから、由緒ある「豊島」の地名を残そうということで「豊島区」と名付けられました。
豊島区は武蔵野台地の東部に位置し、東京23区の中では西北部に位置する区です。海抜は8m~36mと多少起伏はあるものの、概ね平坦な台地状となっています。
豊島区には東京三大副都心の一つ「池袋」があります。商業・業務・文化・芸術などの多彩な都市機能が集積し、昼夜を問わずにぎわいを見せますが、その一方で災害時の帰宅困難者対策も重要テーマとなっています。
災害対策の基本計画である「豊島区地域防災計画」の本編は、主に「震災対策編」と「風水害対策編」からなります。豊島区はこの中で、3つの減災目標を掲げています。
一つ目は、死者・避難者数や建物の全壊棟数の減少です。具体的には死者(約120人)を約70人、避難者(約53,000人)を約23,000人、倒壊や焼失による建築物の全壊棟数(約3,000棟)を約2,000棟、それぞれ減少させることとし、そのための対策として住宅の耐震化率アップ、特定整備路線の早期整備、地域防災組織や消防団活動体制などの充実、家具類の転倒・落下・移動防止の推進などを挙げています。
二つ目は、約14万人と想定される帰宅困難者の安全の確保で、従業員のための備蓄の確保、行き場のない帰宅困難者のための一時滞在施設の確保などに取り組んでいます。
三つ目は、ライフラインの回復(60日以内に95%以上)および生活再建の早期化です。復旧のための資器材等の一時配置スペースの確保や、道路障害物除去による工事車両の通行確保などにより、円滑なライフライン復旧活動を支援するとともに、救援センターの環境整備などにより被災者の当面の生活を支え、早期に生活再建の道筋をつけることを目標としています。
「豊島区防災地図」では、「救援センター」の位置や「避難場所」の位置、町丁目ごとの「火災危険度」および「建物倒壊危険度」などさまざまな防災情報を知ることができます。
「救援センター」とは、災害によって自宅に住めなくなった人が避難生活をするための施設で、区立小中学校などが指定されています。災害発生時に開設され、被災者への情報提供や医療救護活動なども行われます。
いざ災害が発生すると、区の職員だけで全ての救援センターを開設するのが困難になります。
そのため区では各救援センターに「救援センター開設キット」を設置し、少人数かつ誰でもスピーディーに開設できるようにしています。
また豊島区では2020(令和2)年よりMAP型混雑探知システム「VACAN(バカン)」を導入しており、救援センターの開設状況や混雑状況を区民が携帯電話などで確認できるようにしています。
「避難場所」は、地震の後の大規模火災から逃れるためのオープンスペースのことです。豊島区では豊島区立総合体育場一帯、雑司ヶ谷墓地、立教大学、学習院大学などが指定されています。
「豊島区洪水・内水ハザードマップ」は、想定し得る最大規模の降雨の場合の浸水予想区域および浸水深を示したものです。各地域の救援センターの位置も掲載されています。
「豊島区土砂災害ハザードマップ」には、土砂災害警戒区域等が掲載されています。台風や大雨、梅雨の時期の長時間の雨などによってがけ崩れの恐れがある場所を知るのに役立ちます。
こうしたハザードマップで自分が住む地域の災害リスクを把握し、いざという時にスムーズに避難行動がとれるように備えておきたいものです。
「池袋」駅はJR、東武鉄道、西武鉄道、東京メトロの4社8路線が乗り入れる巨大ターミナル駅であり、通勤・通学・買い物客などを含めて多くの人々が行き来します。
2011(平成23)年の東日本大震災の際、豊島区内では大規模な被害は見られなかったものの、震災当日は「池袋」駅周辺や幹線道路などに多くの帰宅困難者が発生して大きな混乱が生じました。
こうしたことから豊島区では、東日本大震災での教訓を踏まえ、帰宅困難者対策を円滑に行うための行動指針として2012(平成24)年に「豊島区帰宅困難者対策計画」を策定しました。
さらに2015(平成27)年には「池袋駅周辺エリア安全確保計画」を策定しました。これは帰宅困難者の安全確保を推進するためのもので、それまで取り組んできたソフト面の対策(帰宅困難者対策訓練や情報連絡手段の整備など)に加え、ハード面の対策(退避経路の確保、一時滞在施設等の確保、備蓄倉庫の整備など)も盛り込まれました。
帰宅困難者対策の一環として「震災時対応マニュアル」や「池袋駅周辺帰宅支援マップ」も作成しています。「震災時対応マニュアル」は、帰宅困難者の外出時の行動ルールや安否確認、災害時帰宅支援ステーション、応急手当などの情報と、池袋駅周辺地図(約5km圏内)で構成されています。
2020(令和2)年12月、サンシャインシティの東側に区立「としまみどりの防災公園(愛称:イケ・サンパーク)」が開園しました。普段は都会のオアシス、災害時には防災拠点となる、豊島区内で最大の公園です。
園内には火災の延焼を防ぐシラカシによる防火樹林帯があり、発災直後は約2,500人収容可能な一時避難場所として機能します。災害時の活動に備えた備蓄倉庫、給水施設、非常用トイレ、非常用発電機なども整備されています。
広大な原っぱ広場は、災害時にはヘリポートになります。各地から送られてくる救援物資集積拠点としての機能も持ち、ここから区内各所の救援センターへ搬送するというように、豊島区全体の防災活動拠点として活躍します。
また、平時から物資集積拠点運営訓練や防災訓練、防災フェスの開催など、地域防災力を高める活動の場にもなります。
このように豊島区では東日本大震災などからの教訓も踏まえて防災対策の見直しを繰り返しながら、帰宅困難者対策も含めた具体的な取り組みを幅広く行っています。
- 掲載日
- 2022/06/24
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。