【川崎市高津区】豊かな水辺空間と起伏ある地形を有する川崎市高津区の防災対策
高津区は川崎市の7行政区の一つで、市域のほぼ中央に位置します。江戸庶民の間で大流行した「大山詣」の宿場町として発展し、その後は江戸に物資を運ぶ大切な輸送路として栄えた歴史を持ちます。
高津区はその成り立ちから、高津地区と橘地区に大きく分けられます。高津地区は「溝の口」駅周辺を中心に商業・業務・文化など都市機能が集積しており、一方、橘地区は都市農業が盛んなエリアで史跡など歴史資産も多く有します。
地形的には、多摩川や矢上川沿いの平坦地、多摩丘陵の一角を形成する丘陵地、それらをつなぐ多摩川崖線の斜面緑地で構成されており、起伏ある地形が特徴となっています。
高津区は東京都や横浜市に隣接しており、交通網も整備され利便性が高いエリアといえます。工場跡地や斜面緑地などを利用した住宅開発も盛んに行われており、人口増加が続いています。
「川崎市防災ポータルサイト」は、災害時の避難情報・避難所開設情報などの「避難情報」、公共交通機関やライフラインの状況がわかる「公共情報」、避難所マップやハザードマップなど「防災マップ」、各種警報・注意報や河川の水位および雨量の状況など「気象情報」で構成されています。
さらに、地震や風水害への日頃からの備え、災害発生時の行動、災害後の避難生活などの情報も充実しています。災害時に慌てなくて済むよう平常時からどのような情報が載っているかを確認しておくとよいでしょう。
高津区では「高津区地域防災計画」を策定し、区民にとって身近な災害予防・災害応急対策を総合的・計画的に実施しています。高津区地域防災計画は震災および風水害対策を中心に作成され、区民の防災意識の向上、「自助」・「共助」の推進による地域防災力の強化を目的としています。
川崎市では避難所などの位置を示した「川崎市防災マップ」を区ごとに作成しています。上のマップはその「高津区版」で、指定避難所や広域避難場所のほか、災害時応急給水拠点、災害用井戸、土のうステーション、救急告示医療機関の位置や緊急交通路なども一目で分かるようになっています。
避難所としては、区内の市立小・中学校や市立高校などが指定されています。また、地震などによる大規模災害発生時の広域避難場所としては、多摩川河川敷、緑ケ丘霊園、市民プラザ・橘処理センターが指定されています。
さらに高津区では独自に、避難所エリア単位の防災地図として「避難所マップ」を作成しています。地域に密着したより詳細な情報が掲載されており、身近な防災関連施設や避難経路などを確認するのに役立ちます。
市ではさまざまな種類のハザードマップも公開しています。高津区は多摩川水系や鶴見川水系の河川による浸水リスクやがけ崩れなどの土砂災害リスクが指摘されていることから、「洪水ハザードマップ(多摩川・鶴見川)」や「土砂災害ハザードマップ」は特に確認しておきたいところです。
上の図は高津区の「土砂災害ハザードマップ」です。区内の西部、南部を中心に、神奈川県知事が指定する「急傾斜地崩壊危険区域」が50カ所、さらに「土砂災害警戒区域」が95カ所以上指定されており、区では注意を呼び掛けています。
このほか市ホームページでは「内水ハザードマップ(高津区版)」や地盤の「ゆれやすさマップ」なども公開されています。また、防災に関するこうした各種マップは川崎市地図情報システム「ガイドマップかわさき」でも閲覧可能です。
高津区では地元のグループ・企業などの活動により独自の防災ツールが作成されています。
その一つ「減災ワークショップガイドブック」は、令和2年度高津区市民提案型協働事業として、溝の口で活躍するクリエイターチーム「ノクチ基地」および溝の口近隣マンション在住女性たちで立ち上げた「溝の口減災ガールズ」の協力のもとに作成されたものです。「災害を自分ごととして考える」、「楽しみながら知恵をつける」という観点から、今すぐ暮らしに取り入れて実践できることが紹介されています。
また、「女性の視点で考えるかわさき防災プロジェクト(JKB)」と高津区の共催により2014(平成26)年に開催された講座の内容をもとに、「集合住宅の防災マニュアル作りガイド」も作成されました。集合住宅が増加している中、それぞれの集合住宅に合った独自の防災マニュアルを作る際の指針やヒントとなる情報が見やすくまとめられています。
このほか「高津区食育推進分科会」では、区内の関連団体が集まって高津区の特徴を生かした食育の推進を図っていますが、2020~2021年度は活動テーマを「災害に備える食育の推進」とし、防災レシピ集を完成させました。ポリ袋を使ったパッククッキングのレシピや、備蓄品を活用したローリングストックレシピが掲載されており、災害時だけでなく日常の食事づくりにも活用できます。
JR「武蔵溝ノ口」駅と東急「溝の口」駅(以下「溝口駅」)は一日当たりの乗降客数が30万人を超え、バス路線も集中するなど、川崎市内でも有数の交通結節点となっています。周辺には商業施設や公共施設を含め都市機能が集積しているため、駅前滞留者・帰宅困難者・徒歩帰宅者の混乱を抑え、二次被害を回避するため、溝口駅を含めた区内6駅周辺地区を対象に「溝口駅周辺地域エリア防災計画」を策定し、災害に強いまちづくりを推進しています。
具体的には「一斉帰宅の抑制」を原則としつつ、一時滞在施設や災害時帰宅支援ステーションの確保、情報収集伝達体制の整備、「帰宅困難者用パンフレット」の作成配布、関係機関における情報伝達訓練、帰宅困難者対策訓練などの取り組みを行ってきています。さらに今後も、一時滞在施設のさらなる拡充や円滑な誘導、要配慮者の移動支援など、現時点での課題を踏まえてさまざまな観点から取り組みを実施していくとしています。
このように高津区では地域の特性や課題を踏まえた上で、行政・企業・住民が協力し合い災害に強いまちづくりに取り組んでいます。
- 掲載日
- 2023/05/31
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。