【調布市】「防災教育の日」など独自の取り組みも推進。緑と水に恵まれた調布市の防災対策
調布市は東京都のほぼ中央、多摩地区の南東部に位置します。都心から20km程度の位置にあり、市域の東側は世田谷区に隣接しています。
調布市は、中央部を東西に走る京王線、国道20号線、中央自動車道を中心に市街地が形成されています。北には武蔵野の面影を残す深大寺の森、南は多摩川がゆったりと流れ、緑と潤いあふれる自然豊かな環境が広がります。市内には多摩川水系の野川・入間川・仙川も流れています。
調布市は武蔵野台地の南縁に位置し、北から最も高い武蔵野段丘面、市の中心部が位置する立川段丘面、最も低い多摩川低地と、大まかには3つの面で構成されます。それぞれの境界には国分寺崖線、府中崖線と呼ばれる段丘崖があり、これらが組み合わさって階段状の地形となっているのが特徴です。
「調布市地域防災計画」は、震災編、風水害編および資料編で構成されています。
震災編では、東京湾北部地震、多摩直下地震、元禄型関東地震、立川断層帯地震による被害想定を、防災計画の前提としています。例えば、多摩直下地震(M7.3)の場合は市内の約86%、元禄型関東地震(M8.2)の場合は市内の約97%のエリアで6弱(それ以外のエリアでは6強)の揺れが想定されています。
地域防災計画では、その被害を可能な限り軽減し、かつ早期の復旧・復興を目的として、施策ごとに「現在の到達状況」・「課題」・「対策の方向性」・「到達目標」および「具体的な取り組み(予防対策・応急対策・復旧対策)」をまとめています。
また、状況に合わせて毎年内容を検討し、必要に応じて修正を行っています。最近では、「東京都地域防災計画(震災編)」の修正や、調布市でも浸水被害が発生した「令和元年台風第19号」からの教訓、さらに新型コロナウイルス感染症などの感染症対策などを踏まえて、2021(令和3)年4月に修正が行われています。
「調布市防災マップ」には、概要面と地図面があります。概要面には災害時の適切な行動、地震への備え、災害情報の入手方法などが掲載されています。
地図面には、避難所や広域避難場所、備蓄倉庫・備蓄用コンテナ、災害医療救護所、防災井戸、給水拠点などの位置が示されています。「避難所」には小中学校の施設などが指定されていますが、調布市では住所ごとの避難所指定を行っておらず、自分が最も避難しやすい避難所を利用できるようになっています。
また大規模火災などから身を守るための「広域避難場所」としては、都立神代植物公園周辺や多摩川河川敷など市内10カ所が指定されています。
地図面には、地震の際の建物倒壊危険度や火災危険度に災害時活動困難度を加味した、町丁目ごとの「総合危険度」マップも掲載されています。
「洪水ハザードマップ」には、台風や大雨で河川が氾濫した場合の浸水想定区域およびその深さが示されています。多摩川のほか、野川・仙川・入間川沿いも浸水の可能性があることが読み取れます。なお、2023(令和5)年3月からは「内水ハザードマップ」も追加されています。
ハザードマップでは、避難所の位置や土砂災害(特別)警戒区域などもチェックしておきましょう。風水害時の避難所は震災時の避難所と一部異なるので注意が必要です。
また調布市では水害対策の一環として、市内の水路に設置した水位計・監視カメラによる水位情報や画像を「調布市防災河川情報ポータルサイト」で公開しています。いざという時にすぐチェックできるようにブックマークしておくとよいでしょう。
このほか、土砂災害の心配があるエリアについてはより詳細な「土砂災害ハザードマップ」も作成しています(5エリア)。また、地図サイト「調布まっぷ」でも、「洪水・土砂ハザードマップ」、「内水浸水想定区域図」を閲覧することができます。
2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災の教訓から、調布市教育委員会では同年10月に「調布市立小・中学校の震災時対応シミュレーション」を作成しました。
これは、授業中に大地震が発生した場合を想定し、発生から72時間までの初動期の対応を、学校ごとの個別の課題を検証しながらそれぞれシミュレーションしたものです。
児童・生徒への対応や避難所での対応を時系列で整理し、対応する教職員の役割も明示された実践的なマニュアルとなっています。
また2012(平成24)年度からは、毎年4月の第4土曜日を「調布市防災教育の日」と定め、学校・保護者・地域が一体となった防災教育や防災訓練などを、全ての市立小・中学校で一斉に実施しています。2023(令和5)年度には、「命」の授業や防災啓発講話、感染症対策を踏まえた避難所開設訓練、児童・生徒の校庭への避難訓練および保護者による引き取り訓練などが一斉に行われました。
また、無料の「調布市生涯学習出前講座」では、防災・防犯に関する講座も11メニュー用意し、地域や団体での防災学習を支援しています。市内在住・在勤・在学者5人以上の団体で申し込み可能で、「子ども向け講座」も3メニュー用意されています。
「調布市防災・安全情報メール」では、市からの緊急情報や地震情報(調布市の震度3以上)、気象情報、災害情報などを配信しています(要・事前登録)。また調布市ではX(ツイッター)、LINE、フェイスブックも情報発信に活用しています。
調布市はまた、緊急・災害時の情報提供手段として「調布エフエム放送(83.8MHz)」との間で「災害の場合における放送に関する協定」を締結しています。ラジオがなくてもパソコンやスマートフォンで聴くことができます。
また、災害が発生した場合や発生の恐れがある場合に「J:COMチャンネル東京(地上デジタル11ch)」の番組画面にも災害情報が表示されるように、協定を結んで備えています。
災害発生時に慌てることなく適切な行動をとるために、こうした災害情報の入手方法を今一度確認しておくとよいでしょう。
このほか調布市では大雨による災害時に「避難バス」の運行を行っています。これは自力で避難するのが困難な方を避難所まで移送するためのもので、令和元年台風第19号の後に行ったアンケート調査の市民の声から実現した取り組みです。このように市民からの意見・要望も反映させながら、災害に強いまちづくりを目指してさまざまな取り組みを推進しています。
- 掲載日
- 2023/11/28
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。