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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2013/10/10
アクティブシニアの住みかえと高齢者施設

 「駅から遠い」「買物が不便」「段差や水回りが問題」など住みかえを考えるきっかけは様々ですが、老後の住みかえは"消極的な住みかえ"と"積極的な住みかえ"に分けることができます。消極的な住みかえの代表は「要介護になったために介護施設に入居する」です。

消極的な住みかえ

 第一生命経済研究所が、60歳以上の夫婦二人暮らし世帯の男女800名を対象に2012年11月に行った「ケア環境の選択と自己決定に関する調査」によると、「身体が虚弱化した場合」にケア付き住宅(病院を含む)での介護を選ぶとするのは、「夫婦二人暮らし」では24.1%に対し「ひとり暮らしになったら」は66.5%でした。

 夫婦で生活する間は要介護であっても自宅でがんばり、ひとりになったら高齢者施設に入居せざるを得ない、と考えている高齢者の姿が浮かび上がります。

 このような消極的な住みかえの場合、入居先を選ぶ時間的・精神的・肉体的余裕があまりないので不本意な住みかえになることが少なくありません。満足できる施設を求めて転居を繰り返す人もいます。

アクティブシニアの住みかえは目的が明確

 積極的な住みかえをリードするのは、戦後の自由な教育を受け、高度経済成長を経験し、自己実現を楽しむ団塊世代を中心とするアクティブシニアです。

 彼らは、セカンドライフを「余生」ではなく「夢を実現する第二の人生」と捉え、夢を実現するのに必要な時間やお金、体力、気力、実行力を持っています。

 彼らの住みかえは、たとえば、技術指導やボランティア活動で海外に、美術館めぐりやコンサート・オペラを楽しむために都会に、自給自足や山登り・自然を満喫するために田舎に、というように目的が明確です。住みかえ先にも妥協しません。退職数年前から条件を満たす場所をコツコツと下見して回る人もいるくらいです。

 意外かもしれませんが、早々と高齢者施設に入居する人もいます。

 主な理由は、妻を家事から解放し、将来の介護不安も解消するためです。自由な時間を増やして趣味や習い事・旅行・勉強などを共に楽しみ、たとえ要支援・要介護になってもパートナーに負担をかけることなく同じ場所で暮らし続けるために、住まいを自宅から設備とサービスが整った自由度の高い高齢者施設に移すだけのことで、時間と自由をお金で得るという感覚です。

 では、消極的・積極的を問わず住みかえ先としてピックアップされる高齢者施設について詳しく見ていきましょう。

自立それとも要介護

 自立した人が入居する高齢者施設には、健康型・住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、軽費老人ホーム、グループリビングなどがあります。要介護の人が入居する施設には、介護付き有料老人ホーム、介護保険制度の3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)、グループホームなどがあります。代表的な施設の特徴と入居中の目安額をご紹介します。

有料老人ホーム

 自立した人向きの有料老人ホームには、健康型と住宅型があります。健康型は要介護になると原則退去、住宅型は外部の介護サービスを利用して継続入居することができます。毎月の利用料は平均的なホームで15~30万円程度です。介護保険の介護サービスを利用する場合は、利用料の1割を負担します。

 介護付き有料老人ホームは、(要支援)要介護の人が対象です。介護サービスを施設スタッフが対応する一般型と、外部の介護サービスを利用する外部利用型があります。毎月の利用料は15~30万円程度で、介護保険の介護サービス費の1割を負担します。介護が長期になる場合は、介護付有料老人ホーム(一般型)の方が外部の介護サービスを利用するタイプのホームより支出総額は少ないといわれています。

サービス付き高齢者住宅

 平成23年「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の改正により急増しているのが、バリアフリーで部屋の広さなどに一定の基準があり、少なくとも安否確認と生活相談サービスを提供するサービス付き高齢者住宅です。

 サービス内容は施設によって異なり、食事や家事支援だけでなく病院や介護事業者と提携して医療・介護サービスまで提供するところもあります。軽度の介護ならば外部の介護サービスを利用して継続入居が可能です。重度になると退去を求められますが、提携している介護施設に自動的に転居できる施設もあります。月額利用料は立地条件や部屋の広さ、設備、提供サービスの内容などによって7~25万円程度と幅があります。

介護保険制度の3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)

 比較的介護度の重い人が入る介護老人福祉施設(=特別養護老人ホーム)、病院を退院後に帰宅をめざしてリハビリ指導を受ける介護老人保健施設(=老健)、要介護で医療サービスも必要とする人が入る介護療養型医療施設の3つは、介護保険制度に組み込まれている施設サービスです。

 3施設の中でも介護老人福祉施設は入所希望者が多く、申込みから入所までにかなりの期間を要すると言われています。毎月の利用料は、介護老人福祉施設が8~15万円程度、介護老人保健施設と介護療養型医療施設は9~15万円程度です。

軽費老人ホーム(A型、B型、ケアハウス)

 自立している60歳以上の人(同居人も可)が入居する軽費老人ホームには、食事サービス付きのA型、自炊のB型、個室で食事と入浴サービスが付くケアハウスの3つがあります。要支援・要介護であっても自立していると認められる場合は、継続入居が認められることもあります。月額利用料はA型が6~17万円程度、B型は1~4万円程度、ケアハウスは8~17万円程度です。

グループホーム

 介護保険制度の介護サービスの1つで、認知症の人が入居する小規模施設です。利用料は月額15~20万円程度です。

キャッシュフロー表で赤字を把握

 生活環境が大きく変わる住みかえでは、生活費だけでなく社会保険税や地方税を含む年間支出の把握がとても重要です。それを基に、人生90~100年とするキャッシュフロー表を作成して、生涯の収支の流れを見える化し、赤字の場合は、住みかえ先の変更や金融資産以外の資産、たとえば不動産の有効活用など様々な対策を検討しましょう。また、相続や不動産の売買・賃貸など関連する税制をチェックすることもお忘れなく!

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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