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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2015/09/24
退職金は勤務年数・企業規模・給付制度で大きな差

あるとは限らない退職金

リタイアメントプランニングに老後資金の一つとして組み込まれている「退職金」。退職金は必ず給付されるものなのでしょうか。労働基準法には「退職手当の定めをする場合には就業規則を作成し・・・(省略)」とあり、退職金は企業が独自に決めることができるものなのです。実際に退職給付制度を導入している企業は75.5%(平成25年度)に過ぎず、従業員数30~99人以上の企業では約3割、1000人以上でも約6%が導入していません。業種別では、医療、福祉、生活関連サービス業、娯楽業、宿泊業、飲食サービス業などは5割程度の導入にとどまっています。

退職金の額を決定する要素としては、退職理由や勤続年数、最終学歴や職種などがあげられます。また、会社の規模や用意されている退職金制度の違いによっても退職金の水準が異なります。では、「平成25年就労条件総合調査の概況」(厚生労働省)のデータを基に、それぞれの要素により、退職金額がどのくらい違っているかを見ていきましょう。

定年退職より早期優遇が高い

退職理由は、定年・会社都合・自己都合・早期優遇の4つに区分されます。が、退職金は早期優遇、定年、会社都合、自己都合の順に給付額が少なくなります。例えば、大学卒(管理・事務・技術職)では、早期優遇は1,966万円、定年1,941万円、会社都合1,807万円、自己都合1,586万円で、自己都合は早期優遇より400万円も少ないのです。もちろん、早期退職をした場合には、それ以降の給与・賞与が無くなるわけですから、退職金が多いからといってそれがベストな選択であるとは言えません。

表─1 退職事由別の平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)

勤続年数により大きな差

退職金の算定は一般に会社独自の計算式で行いますが、いずれにしても「賃金の後払い」という意味から勤務年数が長いほど給付額が多くなる傾向にあります。大学卒(管理・事務・技術職)を見ると、勤続25~29年では1,083万円ですが、30~34年で1,856万円、35年以上では2,156万円と、勤続30年を境に金額が大幅にアップしています。一方高校卒(管理・事務・技術職)は、30~34年では938万円ですが35年以上になると約1,000万円アップして1,965万円になります。

表─2 勤続年数別の平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者)

では、60歳で定年退職する場合の退職金はどのくらいなのでしょう。「2014年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」(日本経済団体連合会)によると、学校卒業後に直ちに入社し、その後標準的に38年間勤め上げて60歳で定年を迎えた管理・事務・技術労働者(総合職)の大学卒は2,358万円。それに対し4年長く計42年働いてきた同職種の高校卒は2,155万円で200万円も少なく、高校卒であっても生産・現業労働者は1,831万円とさらに300万円少ないのです。最終学歴や職種が退職金の水準に大きな影響を与えることがわかります。

制度や企業規模で約1,000万円の差

退職金の受け取り方は、企業が導入している退職給付制度によって異なります。退職給付制度には「退職一時金のみ」「退職年金のみ」「両制度併用」の3種類があり、年金の受取期間は、10年、15年、20年、終身など様々です。

退職給付制度別でみると給付水準が一番高いのは「両制度併用」を採用している企業です。勤続35年以上の大学卒(管理・事務・技術職)で比較すると、「退職一時金のみ」1,567万円、「退職年金のみ」2,110万円、「両制度併用」2,562万円。「退職一時金のみ」の企業と「両制度併用」の企業とでは約1,000万円もの差があります。

また企業規模による差も大きく、従業員30~99人では「退職一時金のみ」919万円、「退職年金のみ」1,155万円、「両制度併用」2,343万円に対し、従業員1,000人以上では「退職一時金のみ」1,764万円、「退職年金のみ」2,256万円、「両制度併用」2,525万円です。「退職一時金のみ」「退職年金のみ」ではそれぞれ約1,000万円も違います。

表─3 退職給付制度別・勤続年数別・企業規模別の平均退職給付額

退職金減少傾向

「定年退職の際にまとまった一時金を受取り、その後は悠々自適」という時代は過ぎ去り、60歳以降も定年延長や再雇用で65歳まで働き続ける時代になりました。日本経済団体連合会が2年ごとに行う「退職金・年金に関する実態調査結果」によると大学卒(総合職)の60歳定年退職の退職金の額は、1992年は2,638万円でしたが2012年は2,492万円、そして2014年は2,358万円と減少傾向にあります。企業も高額の退職金を給付する余裕はなくなっているのです。リタイアメントプランニングだけでなく住宅ローンの組み方にも影響を及ぼす退職金が今後どのように変化していくのか、気になるところです。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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