実際の取引事例における路線価倍率(2022年)~オフィス編~

不動産の売買価格の検討・査定において、相続税路線価は一つの基準として参考にされることが多くあります。

一般的に、相続税路線価は公的価格の8掛け水準と言われるためですが、もちろん「公的価格=時価」ではなく、また常に「公的価格×0.8=相続税路線価」という訳でもありません。

2022年1月に発行したレポートに続き、2022年のREITの取引事例を追加して、前面相続税路線価に対する実際の取引価格の倍率(以下、「路線価倍率」)を調査しました。

【サマリー】

●路線価倍率の調査方法は次の通り。
 ①REITの取引事例より、各物件の売買価格、土地比率を抽出する。
 ②取引価格に土地比率を乗じ、土地価格を算出する。
 ③②を土地面積で割り、土地単価を算出する。
 ④③を取引年の相続税路線価で除し、路線価倍率を算出する。

●東京の路線価格帯別の路線価倍率は、以下の通りとなった。
 ・3,000千円/㎡以上:概ね2倍程度
 ・1,000~3,000千円/㎡:3倍強
 ・500~1,000千円/㎡:3倍前後

Ⅰ.調査方法

本調査は、前回と同様にREITのプレスリリースを用いて行いました。具体的な手順は以下の通りです。

(ア) REITの取引事例(プレスリリース「資産の取得に関するお知らせ」など)より、各物件の取引価格、土地比率を抽出する。
(イ) 取引価格に土地比率を乗じ、土地価格を算出する。
(ウ) (イ)を土地面積で除し、土地単価を算出する。
(エ) (ウ)を取引年の相続税路線価(以下、「路線価))で除し、路線価倍率を算出する。

(例)野村不動産東日本橋ビルの場合
譲渡価格45.2億円、土地比率86.0%、地積918.56㎡、路線価1,590千円/㎡
⇒ 土地価格 = 45.2億円 × 86.0% = 38億8,720万円
⇒ 土地単価(㎡)= 38億8,720万円 ÷ 918.56㎡ ≒ 4,231,841円/㎡
⇒ 路線価倍率 = 4,231,841円/㎡ ÷ 1,590,000円/㎡ ≒ 2.66倍

Ⅱ.路線価倍率の検討

はじめに、東京、仙台、名古屋、大阪、福岡の5都市における2019年~2022年のREIT取引事例について、路線価倍率を算出します(末尾「集計データ」参照)。この集計データをもとに、路線価倍率の中央値の推移を、都市別かつ路線価水準別に集計しました。

事例がない、または極端に少ない都市や路線価水準については傾向を分析することが難しいため、今回は、東京の3,000千円/㎡以上、1,000~3,000千円/㎡、500~1,000千円/㎡の3つの価格帯について、過年度数値等も踏まえた直近の路線価倍率を分析しました。

まず、東京の3,000千円/㎡以上のエリアについては、2019年を除き、路線価倍率は約2倍となっています。2019年の路線価倍率は1.32倍と極端に低くなっていますが、地価公示より低い金額で取引された取引事例(東京サンケイビル)を除くと2019年の路線価倍率の中央値は1.78倍となりました。
また、路線価倍率の推移を見ると、上昇傾向が読み取れます。路線価が3,000千円/㎡以上のエリアでは、路線価が高いほど路線価倍率は低くなる傾向がありますが、下表のとおり、2022年は路線価が高い事例が少なく、路線価倍率が上昇したと考えられます。

以上の推移等も踏まえ、東京の3,000千円/㎡以上のエリアの路線価倍率は概ね2倍程度と言えそうです。

次に、東京の1,000~3,000千円/㎡エリアについて、路線価倍率の推移をみると2019年から2020年にかけて下落し、その後は上昇していることが読み取れます。
路線価倍率は取引価格と路線価によって変動するため、個別事例について、取引価格に影響があると考えられる項目を確認していきます。

都心5区に所在する物件の割合は、2022年が93%と極めて高くなっています。
取引時平均築年数は、2020年はやや築古の物件の取引が多いことがわかりました。
賃料単価は、2020年がやや低く、NOI利回りは、2020年、2022年が4%以上と2019年、2021年と比べて高水準でした。

以上により、Ⅰ章の調査方法で計算された土地単価は、2019年から2020年にかけて下落したものの、2021年、2022年には回復したと考えられます。

一方で、路線価については2019年から2020年は上昇、2021年にかけては下落しています。
2022年も、東京都全体では上昇していますが、オフィスエリアは都心3区を中心に下落が続いています。
2022年は、路線価倍率が極端に高い特殊事情が想定される事例を除くと(いちご池之端ビル、鑑定評価額の倍額で売却)、路線価倍率の中央値は3.16倍となります。

以上より、土地単価÷路線価で計算される路線価倍率は2019年から2020年にかけて下落したものの、その後は回復する結果となったと考えられます。

以上の推移等も踏まえ、東京の1,000~3,000千円/㎡エリアの路線価倍率は3倍強となることがわかりました。

次に、東京の500~1,000千/㎡エリアについて路線価倍率の推移をみると、他の価格帯と比べ年によってばらつきが大きいことがわかりました。
この価格帯は大通り背後の物件の事例も多く含まれています。大通り背後の物件は、前面路線価水準は低いものの、賃料水準は大通り沿いとさほど変わらないため、路線価倍率が高くなりやすい傾向があります。
そこで大通り背後の物件について、大通りの路線価水準に補正して路線価倍率をみてみると、2019年は3.4倍、2020年は3.12倍、2021年3.31倍、2022年は2.82倍という結果になりました。

以上の推移等も踏まえると、東京の500~1,000千円/㎡エリアの路線価倍率は3倍前後と言えそうです。

※集計データ(共有持分や詳細が不明な物件等は原則として集計から除外。)

提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部

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