住宅ローンコラム 生活設計コンシェルジュ 長尾真一がやさしく解説!今、押さえたい住宅ローン活用術

連帯保証人は必要?住宅ローンの保証制度を詳しく解説

2024年01月10日

住宅ローンを組む際には、一部の金融機関やフラット35を除いて、融資の条件として保証会社や連帯保証人による保証を求められるのが一般的です。金利タイプなどと違って保証は選択の余地がないと考えている人も多いようですが、実は制度の仕組みをよく理解することで負担を抑えることができたり、審査に通りやすくなることもあります。また、逆によく理解しておかないと思わぬリスクに陥ってしまう可能性もあります。

そこで今回の記事では、住宅ローンの保証制度の仕組みや注意点について解説します。

住宅ローンに連帯保証人は原則不要

金融機関からお金を借りる際には連帯保証人が必要というイメージがあるかもしれません。しかし、住宅ローンにおいては、連帯保証人は原則不要です。

なぜなら、連帯保証人を立てない代わりに保証会社を利用するのが一般的だからです。万が一、住宅ローンの契約者が返済できなくなった場合には、契約者に代わって保証会社が残債を一括返済するため、金融機関は貸し倒れリスクを回避することができます。このような保証会社による保証を「機関保証」と呼びます。

多くの金融機関では保証会社による保証を得られることが融資の条件になっており、保証会社を利用する場合には対象物件に保証会社を第1順位とする抵当権が設定されます。保証会社が代位弁済をした場合には、契約者は保証会社に対して債務を負うことになります(図1)。

図1:保証会社による機関保証の仕組み

住宅ローンの保証料とは

保証会社は保証人の役割を代行しますが、もちろん無償で代行してくれるわけではありません。機関保証を利用する場合は、住宅ローンの契約者が保証会社との間で保証委託契約を締結し、保証会社に対して一定の保証料を支払うことになります。保証料は金融機関や保証会社によって異なり、借入金額や借入期間によっても変わります。

保証料はどうやって支払う?

保証料の支払い方法には一般的に「一括前払い型<外枠方式>」と「金利上乗せ型<内枠方式>」の2つの方法があります。

(1)一括前払い型<外枠方式>
住宅ローンの借入時に保証料を一括で支払います。全額前払いで支払う分、単純に計算すれば金利上乗せ型よりも総支払額は少なくてすみます。ただし、借入金額が大きくなると保証料も高くなるので、住宅ローンの借入時にまとまった資金を準備する必要があります。

(2)金利上乗せ型<内枠方式>
住宅ローンの貸出金利に保証料分の利率を上乗せして、毎月の返済とともに分割で支払います。借入時にまとまった資金を準備する必要はありませんが、単純計算では一括前払い型よりも総支払額が多くなってしまいます。

支払い方法は選択できる金融機関が多いので、両者のメリット、デメリットをよく比較検討した上で決定することが大事です(図2)。

図2:一括前払い型と金利上乗せ型の比較

保証料を抑える方法

できることなら保証料は少しでも抑えたいものですが、そのためにはどのような方法が考えられるでしょうか。

(1)一括前払い型で保証料を支払う
一般的には、金利上乗せ型よりも一括前払い型の方が総支払額は少なくてすみます。具体的にどのくらい差があるのか以下のケースで試算してみましょう(図3)。

図3:保証料の比較シミュレーション

この試算では、一括前払い型の保証料を借入額100万円あたり2万円として80万円、金利上乗せ型の場合は借入金利に0.2%上乗せとしています。また、金利上乗せ型は保証料を前払いしない代わりに80万円の自己資金を住宅ローンの頭金に充てる前提にしています。比較してみると、一括前払い型の方が総支払額(A+B+C)は約60万円少なくて済むことがわかります。

(2)繰り上げ返済をする
保証料を一括前払い型で支払い、借入期間の途中で住宅ローンを全額繰り上げ返済した場合、保証料を一部返還してもらうことができます。たとえば当初の借入期間が35年であれば一括前払い型では35年分の保証料を借入時に支払いますが、25年経過後に全額繰り上げ返済すると、その時点で残り10年分の保証料が不要になるため、その分の返還が受けられます。一部繰り上げ返済の場合も同様に、減額される借入残高に応じた保証料が返還されます。

また、金利上乗せ型を選択した場合も、繰り上げ返済をすれば借入残高が減るため、それ以後に支払う保証料の負担は少なくなります。

保証料不要の場合も注意が必要

住宅金融支援機構のフラット35のほか、ネット銀行などを中心に保証料が不要の金融機関もあります。その場合、保証会社を利用しないので、金融機関が貸し倒れリスクを負うことになります。そのため、金融機関が抵当権を設定し、審査も厳しめになる場合があります。また、保証料がかからない代わりに、「融資手数料(事務手数料)」が必要になるケースが多いので注意が必要です。保証料が不要だからといって、単純にお得とは限らないのです。

保証人が必要になるケースもある

これまで解説してきたとおり、住宅ローンにおいて連帯保証人は原則不要ですが、次のように連帯保証人が必要になるケースもあります。

(1)収入合算をするケース
借入可能額を増やすために夫婦や親子などで収入を合算して住宅ローンを組む方法が「収入合算」です。収入合算では夫婦や親子のどちらか一方が契約者となり、もう一方は連帯保証人になります。

(2)ペアローンを組むケース
1つの物件に対し、夫婦や親子などがそれぞれ契約者となって、合計2本の住宅ローンを組む方法が「ペアローン」です。この場合も借入可能額を増やすことができ、さらに住宅ローン控除を双方が受けられるというメリットがあります。ペアローンでは双方が契約者となって、それぞれ住宅ローンを組みますが、その際にお互いに連帯保証人になります。

(3)共有名義で住宅を取得するケース
土地や建物を共有名義にする場合、契約者の持分だけでは担保価値が不十分とみなされることがあります。その場合は共有名義人を連帯保証人とするように求められる可能性があります。親名義の土地に子が住宅を建てる場合も同様です。

(4)審査で金融機関から求められるケース
上記以外でも審査の結果、金融機関から融資の条件として連帯保証人を立てることを求められる場合があります。たとえば融資額に対して年収が低い場合、勤続年数が短い場合、収入が不安定とみなされやすい自営業の場合などはその可能性が高くなります。

保証人を立てるメリット

金融機関が認めれば、保証会社を利用せずに、あえて保証人を立てて住宅ローンを借りることも可能です。その場合、保証料の負担が生じないことが最大のメリットです。また、保証会社を利用する場合でも、機関保証に加えて連帯保証人を立てることによって、住宅ローンの審査が通りやすくなるケースもあります。

保証人を立てるリスク

一方で連帯保証にはいくつかのリスクもあります。

(1)連帯保証人の責任は重い
連帯保証人は債務者が返済できなくなった場合には、代わりに債務を履行する責任を負います。しかも、法律上、債権者は債務者本人よりも先に連帯保証人に請求することも可能です。このように連帯保証人の責任は非常に重いため、たとえ身内であったとしても連帯保証は慎重に考える必要があります。

(2)連帯保証人は簡単に外れることができない
一度連帯保証人になると簡単には外れることができません。配偶者が連帯保証人になった場合、仮に離婚したとしても連帯保証人から外れることは難しいので注意が必要です。連帯保証人から外れるためには、住宅ローンを借り換えるか、一括繰り上げ返済をするか、あるいは物件を売却するなどの方法を考える必要があります。

(3)連帯保証人が亡くなったときのリスク
連帯保証人が亡くなってしまった場合は、新たな連帯保証人を立てなければならない可能性があります。連帯保証人がいなければ契約違反となって、一括返済を求められる可能性もないとは言えないので、連帯保証人に万が一のことがあった場合のことも考えておいた方がよいでしょう。

まとめ

保証会社を利用する場合と連帯保証人を立てる場合の違いやそれぞれの注意点は、住宅ローンを組む際に必ず押さえておくべきポイントの一つです。今回の記事も参考にして、あらためて保証制度の仕組みについて確認してみてください。

執筆者:長尾真一(ながおしんいち)

ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)、企業年金管理士(確定拠出年金)

1977年広島県生まれ。大学卒業後、医療機器メーカー・エアライン系商社で海外営業として勤務した後、ファイナンシャルプランナーに転身。
生活に関わるお金の不安を解消し、未来に希望をもって暮らしていくためのお手伝いをする「生活設計のコンシェルジュ」として相談業務や執筆業務に従事。
企業や学校での講演・セミナーにも年間100回以上登壇しており、これまでの延べ聴講者数は2万人を超え、わかりやすい説明が好評を得ている。

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