不動産投資コラム

所有物件 調査・購入ドキュメント(1) 後編

マンション購入ドキュメント1棟目の後編は現地調査から購入交渉、融資について振り返ってみたいと思います。

現地調査

前編でお話しましたように、ぼくの物件購入は現地へ行くまでの「紙の調査」の割合が非常に多く、図面を読み込んで積算価格を出すのはもちろん、レントロールもかなり細かく分析します。さらには、インターネットの地図やストリートビューを使って現地や周辺の様子をチェックしておくなど、事前に調べられる項目は意外とたくさんあります。

情報をもらってすぐに現場へ直行し、素早く買付を入れるというスタンスも良いのですが、ぼくの場合は遠隔地の物件に投資をしているため、現地へ行くという行為ができるだけムダにならないように工夫しています。現地で物件を見てから「これは買えないな」と判断することは、建物が激しく傷んでいたり、傾いていたりという以外ではほとんどありません。購入判断で一番大切なのは、事前の調査であり、次に大切なのが近隣の不動産会社へのヒアリングです。

現地へ行くと、事前に入手していた物件の外観写真と同じく、かなりきれいな建物でした。
しかし建物自体は良いものの、掃除が行き届いていなかったり、郵便受けにチラシが溜まっていたりという感じで、管理状態が良いとは言えませんでした。

また、この時は売買仲介会社の方が同行してくれたので、室内もチェックすることができたのですが、こちらは外観に比べるともうちょっと「イマイチ度」が高い感じでした。もちろん、退去後の原状回復工事はされているのですが、空室の期間が長すぎて床や壁が再び汚れてきている部屋がいくつかありましたし、昔ながらの電熱器がそのまま設置されていたりと、もったいない部分がたくさんあります。

また、これは空室の多い物件に共通していることなのですが、それなりにきれいに見えている部屋でも、よく見ると「細かい不具合がたくさんある」のです。例えば、玄関ドアの閉まるスピードが早すぎたり遅すぎたり、キッチン下や吊り戸棚の取手がぐらついていたり、コンセントカバーが汚れていたりするなど。

しかし、空室が多い物件は得てしてこういうものでして、逆に言えばこのような細かい不具合、しかも大してお金も掛からず改善できる不具合をそのまま放置しているからこそ、空室がいつまでたっても埋まらないのです。ぼくの場合は、このような「お金を掛けずに改善できるところが放置されている」という状態を、物件購入の際の大きなプラス要因として見ています。自分がこの物件の大家になって不具合を改善してしまえば、物件価値が一気にアップするからです。

逆に言えば、同じ空室が多い物件であっても、現地へ行ったらキレイで非の打ち所がないという状態ならば、自分の力でそれ以上改善させることが難しいと判断できるので、物件購入にとってはマイナスです。前半でも書きましたが、中古の収益不動産は自分よりも大家力の低い売主さんから購入するのが鉄則ですね。

次に近隣業者さんからのヒアリングですが、今回は売り物件の管理をされている不動産会社に直接お話を伺うことができました。(売り物件によっては、管理会社に売却を知らせていない場合がありますので、売主側の業者さんに許可を取ってから訪問するようにしてください)。

空室が多いといっても、管理会社に責任があることは滅多にありません。今回の場合も同様で、部屋が汚れているのはクリーニングの料金を売主さんがケチっていたから。空室募集に気合いが入らないのも、部屋の不具合が多くて案内しても決まらないから...など、自分の考えが裏付けられるような事実を確認することができました。大きな設備投資は電熱コンロをガスレンジかIHヒーターに変更するくらいで、あとは細かい不具合を修繕して家賃も地域平均並みに戻せば、十分空室を埋めることができそうです。

購入交渉

次に価格交渉です。今回はかなり大きな指値をしました。8,800万円の売出価格に対して7,300万円での購入オファー。「入居が決まる家賃」で利回りを引き直し、一時的に掛かる修繕費を差し引いた額ということで打診をしましたが、しばらく検討された後で断られてしまいました。

大きな指値をした場合は、このように買付が通らないことも多いのですが、ぼくは全然気にしていません。買付を入れなければ絶対に物件は買えませんし、指値が通らなくても買主側は買付を入れなかった場合と同じ状態になるだけで、まったくデメリットがないからです。逆にメリットのほうは計り知れず、こちらの言い値で物件が買えてしまったり、そこまでいかなくても、売出価格に比べて大幅な値引きが可能になることもあるからです。

また、いったんは通らないまま終わった買付も、売主さんはいざという時のためにキープしておくことがあります。「この値段で売るのは(今は)嫌だけど、いざとなったらこの値段でも売ろう」と思っているからなのですが、今回のマンションではまさにその通りのことが起きました。

最初に買付を入れた日から半年近く経ったあとで「やはり7,300万円でいいから売りたい」というオファーが来たのです。

今回の場合は、結局7,300万円で購入できたわけなのですが、まさに「通るか分からないけど、買付を入れておく」ことの成果でした。ちなみに、最初の購入交渉の際に、並行して金融機関に融資の打診をしており、ある程度の感触を得ていたことで、強気の価格交渉ができたという側面もあります。売主さんに「この人は融資も通って買える人だ。私がこの値段で納得すればすぐに売れる」という気持ちになってもらうためにも、事前の融資打診は効果的です。

融資

最後にその融資ですが、こちらは大きな値下げ交渉の結果、積算評価も利回りも極めて優秀な指標になっていました。購入時の空室率のままでも利回りは十分高かったので、金融機関から空室率の高さを問題にされることはありませんでした。

ただし、金融機関との面談(打ち合わせ)の際に、「どのようにして空室を埋めていく予定か」ということについては、しっかり説明しておく必要があると思います。融資については前シリーズのコラムでも書きましたが、基本的に「担保評価の高い物件を持ち込む」「しっかりアパート経営をして実績を示す」ということが重要です。ぼくの場合は次の物件を購入する際に、融資で苦戦しました。次回以降のドキュメントで詳しくご説明できるかと思います。

今回の物件購入でのポイントをまとめると

  • 現地調査の前に、しっかり下調べをしておく。
  • 「自分だったらどう運営するか」を念頭において室内外をチェックする。
  • 不具合が見つからないなら、自分よりもアパート経営が上手な売主さんである。
  • 価格交渉はある程度の根拠を持って。でも強気に。
  • 通らない買付でもあとから連絡が来る場合がある。
  • 十分に安く買えれば、融資もつきやすい。

というところでしょうか。参考になりましたら幸いです。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。

 

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