相続税の納税方法は、金銭一括納付、できなければ延納(金銭分割納付)、それもできなければ物納(金銭以外の相続財産による納付)とされます。この納税制度は次のように整備されました。
相続税を延納・物納するには、申告・納税期限までに必要書類を提出しなければなりません。書類の未提出・不備で税務署長から求められた場合、補完通知書を原則20日以内に対応しなければなりません。できないときは書類補完期限延長の届出をしなければ、延納・物納は取り下げとみなされます(延納・物納できなくなる) 。
さらに、物納では、税務署長から補正措置(廃材の撤去など)について、1年以内で定められた日(3ヵ月間の延長・再延長あり、ただし最大1年間)までに対応しない場合、税務署長は物納申請を却下できます。
国側もスピードアップを目指し、税務署長が延納・物納の許可・却下を決める調査期間は3ヵ月以内(担保などの状況により6ヵ月、物納のみ9ヵ月の場合あり)とされ、期間内に許可・却下がなければ、許可されたものとされます。また、物納により納付が完了するまでの間(調査期間を除く)、利子税が課されることになります。
申告期限から10年以内に限り、延納条件を変更してもなお延納することが困難となった場合には、延納から物納への切り替えが認められます。
物納不適格財産(管理処分不適格財産、いずれのケースでも物納できない財産)、物納劣後財産(他に物納適格財産がない場合に限り物納を認める財産)が明確化され、当初、物納申請した財産について却下された場合には、申請者は20日以内に限り1回だけ物納の再申請(他の財産の物納申請)ができることとされました。また、超過物納(物納税額を上回る物納)が明文化されました。
管理処分不適格財産(国が管理・処分するのに不適格な財産)
理由(財産を取得する国からのもの) | 具体例 |
---|---|
完全な所有権を取得できない | 抵当権付き、差押え、所有権の帰属が係争中など |
境界・借地契約の効力の範囲が特定できない 隣地所有者との争訟が見込まれる |
境界線が明確でない(山林は測量不要)、借地権の及ぶ範囲が不明な貸地など、隣地に越境している建物など |
単独処分が不適当 | 共有財産、稼働工場の一部など |
債務が付随している | 敷金等の債務付き貸地・貸家など |
争訟事件となる蓋然性が高い | 越境している建物、貸主に著しく不利な契約内容の貸地など |
譲渡・引き渡しに際して法令等の特定の手続きが必要なのに、行われていない | 証券取引法上の手続きが行われていない株式、譲渡制限株式など、滅失した建物の 滅失登記がない土地など |
管理・処分費用が過大となる | 土壌汚染や廃棄物がある不動産、農地法の許可無しに転用されている土地、土留め工事が必要な不動産など |
その他 | 通行権のない囲繞地、借地人が不明な底地、耐用年数を経過した建物(使用不可)、 公序良俗を害する利用に供されている不動産、生産緑地(同法7条~9条適用) |
物納劣後財産
相続税を減らす生前の不動産対策コラム
<相続・贈与の内容について>
本コンテンツの内容は、2023年4月1日現在施行されている法令に基づき作成しました。
ご利用の際は、税理士・税務署等、適切な専門家にご確認のうえ判断いただくようお願いします。