トレンド
物流の2024年問題と輸配送、機械化・自動化の最新動向 Ⅱ
~輸配送における取り組み~
前稿Ⅰでは、物流業界における現在の労働力不足、また迫る「物流の2024年問題」について確認しました。今後、輸配送の主たる担い手であるドライバーの不足が続くと、物流が滞り配送量やスピードを維持することが難しくなると予想できます。本稿Ⅱでは、輸配送における労働力不足への取り組みがどのように行われているか、確認していきます。
<サマリー>
●国内の輸配送の約9割はトラックが担っています。労働力不足および2024年問題への解決に向け、ドライバーの拘束時間等負担を軽減する対策や、荷物量を増加させる対策、DXにより既存業務の整理・効率化する対策等があります。
●トラックドライバー不足および物流の2024年問題の解決には、物流業界だけではなく、荷主・配送先の理解や協力も欠かせず、各業界の商慣習や業務プロセスの見直し等、総合的に取り組む必要があるといえます。
労働力不足や物流の2024年問題への対応として、現在輸配送における長時間労働の抑制に向けた取り組みや環境整備が進められています。輸配送とは、物流の基本的な機能とされる「物流6大機能」[1] のうちの一つで、物品を拠点から拠点へ長距離に運搬する輸送と、販売品を買い手先に届ける配送のことです。国内では、輸配送の約9割をトラックが担っています。
取り組みとしては、ドライバーの拘束時間等負担を軽減するもの、荷物量を増加させるもの、既存業務の整理・効率化するもの等があります。具体的な内容についてみていきましょう。
[1] 生産者から消費者まで荷物が届くまでの物流基本機能のこと、「輸配送」「保管」「包装」「荷役」「情報」「流通加工」
Ⅱ-Ⅰ. 取り組みの内容
i. 中継拠点の設置・活用
ドライバーの長時間運転を解決するため、長距離輸送時において「中継拠点」を設置し、活用することが考えられます。この中継地点を利用し、休憩所等として利用するほか、ほかのドライバーとの交代を行うことで、拘束時間短縮を図ることが可能となります。複数ドライバーで分担する場合を中継輸送と呼び、下記の方式があげられます。
既に、サービスエリアや道の駅を活用した実証実験も行われており、拘束時間の減少、車中泊がなくなったことによる負担減につながっているとの結果もでています。国土交通省によるトラック事業者へのアンケート調査によると、中継輸送について「現在実施している」「やったことはないが、今後やる予定がある」「興味はある」と、前向きな回答した事業者は57%となりました。
今後は、関東・関西間の静岡県・愛知県や、関西・九州間の広島県・岡山県、関東・東北間の福島県等を中心に、中継拠点の設置にともなうニーズが増加するかもしれません。
ii. 共同配送
共同配送とは、複数企業が一つのトラックに同じ配送先の荷物を積載し配送を行う仕組みのことです。企業がそれぞれ配送するよりも少ないトラック数で対応が可能になるため、必要なドライバー数や燃料を抑えることができます。また、配送先にとってもまとめて荷物を受け取ることができるメリットがあります。
ビール業界では、2017年から各社横断で運送会社と連携を行い、共同配送を行っています。また、大手食品メーカー各社も同様の取り組みを行っています。
大手スーパー各社は、2023年より店舗への効率的な商品配送を協議する研究会を立ち上げ、各社で異なる商品の配送や発注に関する商習慣の足並みをそろえる検討を始めることとなりました。異業種間における共同配送も増加しており、2022年には製紙メーカーと飲料メーカーが、関東圏・関西圏間の長距離トラックに各グループの製品を混載する取り組み行うことを発表しています。
一方、複数企業が連携するため、荷物の管理システムやスキームを事前に共有するか、新しく構築する必要性があります。また、急な輸配送ルート変更や時間変更に対応するのが難しいといった問題もあります。
iii. ダブル連結トラック
ダブル連結トラックとは、大型トラックの後ろにトレーラーの荷台部分をつなげた車両で、トラック1台で2台分の荷物を運ぶことが可能となるものです。
輸送量を増やせるほか、異なる運送会社のトラックとトレーラーを連結することもできるため、共同輸送の観点からも効率化をすることが可能となります。2019年にはダブル連結トラックを活用し、複数の運送会社が連結して共同輸送を行う取り組みを開始しています。
iv. モーダルシフト
モーダルシフトとは、輸送手段をトラック等から鉄道や船舶へ転換することです。ドライバーは最寄りの転換拠点(駅・港)と出荷元・配送先の運転で済むため、拘束時間を短縮することが可能となります。これまでモーダルシフトはおおむね500km以上の長距離輸送でないと、前後のトラック移動におけるCO2排出量バランスおよびコスト面から難しいと考えられていましたが、最近では300~400kmといった距離での導入も増加しています。
一度に大量の荷物を輸送できるほか、SDGsの観点からもメリットがあります。1トンの貨物を1km運ぶ(1トンキロ)ときに排出されるCO2の量を比較すると、「トラック(営業用貨物)」が216gであるのに対し、「鉄道」は21g、「船舶」は43gと大きく差があります。
デメリットとしては、鉄道や船舶は決められたダイヤやスケジュールに従って運行するため、トラックのような任意のタイミングでの輸配送が難しいこと、また駅や港で都度積み替えを行う必要があるため、所要時間がかかること等があげられます。また、天候等により輸送が遅れる可能性もあります
v. 輸配送と荷役[2]の分離
ドライバーの長時間労働や女性や若手就業者が少ない背景に、積み込み・積み下ろし等荷役作業の肉体的負担があげられます。手積み[3]により荷物を荷台に直接積み重ねる、または積み下ろす場合、多くの手間と労力、時間が発生しますが、これらは商慣習上トラックドライバーが担わされていることが多いのが現状です。
国土交通省では、輸配送と荷役を分離させ、ドライバーが輸配送に専念できる時間を確保するような取り組みを推進しています。また、パレットや外装の標準化を行うことで、荷役作業の効率化をはじめ、積載効率の向上、保管効率の向上を図る取り組みも行われています。
vi. DXの導入
既存のオペレーションを改善し、効率化につなげる物流DXの動きも活発です。運送状等各種手続きの電子化、ドライバーの点呼や配車管理のデジタル化、トラック予約システムの導入による手待ち時間の削減等があります。情報やコストが可視化されることで、業務プロレスが標準化される効果も期待できます。
共同輸配送分野においては、近年AIにより、今まで空車のまま運行していた帰り便や混載便を、業界を超えて利用できるプラットフォームや、荷主(企業・個人)と運送会社・ドライバーを直接マッチングするプラットフォームが普及しつつあります。
また、軽ワゴンや自転車、原付バイクを持つ一般人もドライバーとして登録できるサービスも展開されており、隙間時間を利用した配達業務を行うことも可能となりました。AIを活用し最適な配送ルートを算出するシステムと組み合わせることで、未経験者でも働きやすい環境を作ることが可能となりそうです。
vii. その他の取り組み
上記以外の取り組みとして、例えばトラックの高速道路における後続無人隊列走行や、過疎地域等におけるラストワンマイルのドローン配達、バスやタクシーとの貨客混載、自動配送ロボット等の実証実験が各所にて行われています。
また、需給に合わせたダイナミックプライシング方式を取り入れたシステムや運送会社同士をマッチングし中継輸送の後押しをするスタートアップ企業の動きもあります。
[2] トラックへの積み込み・積み下ろし、倉庫内の運搬・入出庫、仕分け等の作業
[3] 荷物を1つ1つ手でトラックへ積み込み・積み下ろしを行うこと
Ⅱ-Ⅱ. まとめ(輸配送における取り組み)
以上、輸配送における各種取り組みについて確認しました。
トラックドライバー不足および物流の2024年問題の解決には、物流業界だけではなく、荷主・配送先の理解や協力も欠かせず、各業界の商慣習や業務プロセスの見直し等、総合的に取り組む必要があるといえます。
国土交通省では、物流総合効率化法[4]に基づき、2以上の者の連携による流通業務の省人化等の取り組みについて事業支援を行っています。
「総合効率化計画認定」を受けた事業については、営業倉庫に対する法人税や固定資産税・都市計画税の減免制度、モーダルシフト等の取り組みに対する計画策定経費や運行経費等の補助、市街化調整区域に物流施設を建設する場合の開発許可に関する配慮を受けることができます。
今後も、持続可能な物流の実現にむけた様々な動きが出てくることが予想されます。
[4] 「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」国内産業の国際競争力の強化や貨物の小口化・多頻度化等への対応を目的とし、二以上の者が連携して流通業務の総合化および効率化を図る事業であって、環境負荷の低減および省力化に資するものを「流通業務総合効率化事業」として認定し、認定された事業に対し支援を行うもの。事業立ち上げにともなう計画策定経費(上限200万円、別途例外あり)・運行経費の補助(補助率1/2以内、上限500万円*別途例外あり)、事業開始にあたっての倉庫業等許可等のみなし、輸送連携型倉庫への税制特例(法人税:割増償却8%(5年間)、固定資産税:課税標準1/2(5年間)等)等の支援がある。
提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部
企業不動産に関するお悩み・ご相談はこちらから