【尼崎市】「減災」の考え方を基本に、自助・共助・公助一体で取り組みを進める尼崎市
尼崎市は、兵庫県の南東部に位置する人口約45万人の中核市です。南は大阪湾に面し、東には猪名川・神崎川・左門殿川・中島川が、西には武庫川が流れています。
尼崎市は南部に工業地域、中央部に商業地域、北部に住宅地が広がる形で発展を続けてきました。阪神電車、JR線、阪急電車が市域を東西に走り抜け、大阪・神戸・京都・奈良などへ直結という利便性の良さから、ベッドタウンとしても人気の街です。
市域はほとんど起伏がなく平坦な地形となっています。工場の地下水汲み上げなどによる地盤沈下の影響もあり、市域の約3分の1に当たる南部地域はいわゆる海抜ゼロメートル地帯となっています。
尼崎市では「尼崎市地域防災計画」を策定し、自然災害や大規模事故といった災害の予防対策、応急対策、災害からの復旧・復興についてまとめています。
計画の基本にあるのは、被害を最小化する「減災」という考え方です。災害を完全に防ぐのは不可能であることから、被災したとしても人命が失われないことを最優先し、経済的被害も極力少なくなるよう対策を立てています。
また、行政の対策「公助」には限界があることを踏まえ、市民一人一人の「自助」および地域で助け合う「共助」を適切に組み合わせた取り組みを推進しています。
自助・共助を高めるための取り組みの一つとして尼崎市では「尼崎市防災ブック」を作成し、全戸配布しています。この中には地震・津波・洪水等からの基本的な避難の流れ、避難情報の見方、災害時の情報の入手方法、備蓄品・非常持ち出し品リスト、災害時の緊急連絡先など、避難行動に役立つコンテンツが満載です。
「いつ(避難のタイミング)」、「どこへ(避難先)」、「どのように(避難する方法)」などをまとめた「マイ避難カード」の作り方や、自らの緊急時に他の人に伝えるための自分に関する情報の書き込みページもあり、あらかじめ書き込んで準備しておくと安心です。
尼崎市の地震ハザードマップは、「揺れやすさマップ」と「地域の危険度マップ」からなります。
「揺れやすさマップ」は、尼崎市への影響が大きい5種類の地震(六甲・淡路島断層帯地震、上町断層帯地震、有馬-高槻断層帯地震、東南海・南海地震、市内直下型地震)を想定し、各地域の最大震度を色分け表示したものです。想定最大震度は市内全域で震度6強以上となっています。
「地域の危険度マップ」は、揺れやすさマップの想定震度と建築物データを重ね合わせ、震度・建築年代・構造の関係から「建築物が全壊する割合」を推計して色分け表示したものです。耐震化された建築物増えれば増えるほど、地域の危険度の減少につながります。
洪水ハザードマップは、河川が決壊した時に想定される浸水範囲と浸水深などを示したもので、「猪名川・藻川」版と「武庫川」版があります。
津波ハザードマップは、南海トラフ巨大地震で発生した津波により想定される浸水範囲と浸水深などを示したものです。
高潮ハザードマップは、台風の影響で海水面が上昇した時に想定される浸水範囲と浸水深などを示したもので、「堤防等が破堤する場合」と「堤防等が破堤しない場合」の2種類があります。
このほか、下水道で想定している降雨を超過する大雨が降った場合に想定される浸水範囲と浸水深を示した内水ハザードマップもあります。
なお、これらのマップは市民公開型地理情報システム「地図情報あまがさき」でも閲覧可能です。
尼崎市の高潮ハザードマップを見ると、最大規模の高潮が発生した場合、市内の大半の地域で浸水が想定されていることが分かります。海と河川に囲まれた地形から尼崎市において風水害対策は昔から重要テーマの一つとなっています。
尼崎市を高潮から守る防災の要衝として知られるのが、「尼崎閘門(こうもん)」、通称「尼ロック」です。尼ロックは約70年前に日本で最初のパナマ運河方式の閘門として建設されたもので、2つの水門を開閉することで海水が運河内に流れないように調節して、船を安全に航行させるとともに、海抜ゼロメートル地帯を水害から守っています。
また堤防等の整備と並んで重要なのが、住民の命を守るための避難先の確保です。尼崎市では、公共施設のほか民間企業や民間マンション等の協力も得て、「津波等一時避難場所」として約368施設(2022年4月1日現在)を確保し、津波や洪水の発生に備えています。
同時に、市民一人一人の備えも必要不可欠です。各種ハザードマップで災害リスクを把握し、いざという時の避難場所を確認した上で、「マイ避難カード」を作成して普段から目に留まる場所に貼っておくなど、個人レベルでの防災・減災への取り組みも大きな意味を持ちます。
災害情報の提供手段の一つとして、尼崎市では「尼崎市防災ネット」を運用しています。これは尼崎市の避難情報や地震・台風・河川の洪水など災害に関する情報を、インターネット機能を利用して多くの人に迅速に届けるためのサービスで、事前に登録しておくことでタイムリーな情報を受け取ることができます。
さらに、フェイスブック、ツイッター、LINEといったSNSを活用しての情報配信にも取り組んでいます。
また、災害発生時に市民が安心・安全な避難所を選択できるように、避難所の開設・混雑状況などのリアルタイム配信も行います。近くの避難所の混雑状況が4段階で表示されるほか、道路通行止めや停電などライフラインの状況も地図上で表示され、よりスムーズな避難行動が可能となります。
市の危機管理安全局災害対策課が毎月発行している「あまがさき防災対策報便」も、有効な情報源になるでしょう。防災に関する豆知識や市民の防災活動なども紹介されており、市役所窓口や各地域振興センターで手に取ることができます。
このほか、消防署に併設されている「尼崎市防災センター」には、震度7までの地震体験や119番通報体験、消火体験などができるコーナーや、映像やパネルで尼崎の災害の特徴や備えを学ぶコーナーがあり、楽しみながら防災について学んだり技術を身につけたりすることができます。
このように尼崎市では災害による被害を最小限に抑えるため、自助・共助・公助を組み合わせたさまざまな取り組みを進めています。
- 掲載日
- 2022/10/04
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。