毎日の暮らしには、子どもの誕生、仕事の変化、家族構成の変更などの変化が訪れます。そのような変化に大規模なリフォームなしで柔軟に対応できる間取りのヒントがあります。それは「引き戸」を使っていることです。すでに引き戸のメリットを知っている人も多いと思いますが、改めて引き戸を使用した間取りの魅力を解説します。
引き戸とは、横にスライドさせて開け閉めする扉のことで、日本の住宅文化から生まれたとても実用的な建具です。空間の仕切り、光と風の取り入れ、そして住空間の柔軟な活用など、単なる仕切り以上の多様な役割を果たします。狭いスペースを上手に使いたい、空間をフレキシブルに使いたい人におすすめの扉です。
■使われる場所
・寝室と廊下の仕切り
・リビングと和室の間
・クローゼットや収納スペース
・洗面所や浴室の入り口
次に引き戸を選ぶ際に知っておくべき、メリットとデメリットを解説します。
メリット
●スペースを節約できる
開き戸のように戸の周囲に空間が無くても開閉ができるため、狭い空間でも設置ができ、家具の配置や部屋の使い方の自由度も高くなる
●ケガのリスク減少とバリアフリー対応
開き戸に比べ手を挟んでケガをするリスクが少なくなる。また車いす使用時には引き戸の方が使いやすい
●間取りの可変性が高い
戸を閉める・開け放すという使い分けにより空間の使い方のバリエーションが増える
●和洋どちらの空間にも合う
和風でもモダンでも、和洋どちらのインテリアにも合うさまざまなデザインがある
デメリット
●音が漏れやすい
開き戸に比べて隙間があるため遮音性は低くなる
●ドアを引くときに音が響く可能性がある
敷居にレールがあるタイプは開け閉めする際の音が響く可能性も
●敷居の溝の掃除が必要
敷居に溝があるタイプの引き戸は溝にたまったほこりの掃除が必要
【図1】は専有面積40m2、1LDK、東向き、シングルにおすすめの間取りです。
広さが限られた40m2の1LDKでも、引き戸の活用で空間の可能性が広がります。日中はLDKと洋室の間にある3枚の引き戸を開け放ち、LDKと洋室を一体的に使用することで、狭さと圧迫感を感じさせない開放的な空間を実現します。夜に引き戸を閉めれば、洋室はプライバシーを確保しながらおこもり感のある落ち着いた寝室空間となります。
より広い空間を演出するためのポイントは引き戸の「開口幅」と「素材」です。戸を引き込む最小限の壁は残し、それ以外は全開可能とすることで空間の一体感を損なわず、かつ仕切りの機能も果たせます。
さらに、半透明のパネルの引き戸にすれば、閉めたときも視線を遮りながらも光をやわらかく通し、インテリアの印象を大きく変えます。狭い空間だからこそ、引き戸の良さが引き立ちます。
【図2】は専有面積57m2、2LDK、南向き、シニアの夫婦におすすめの将来を見据えた間取りです。
アイランドキッチンを中心に、引き戸がもたらすフレキシブルな空間構成は現在の暮らしと将来の備えを同時に叶えます。友人を招いてホームパーティを催すときには引き戸を開け放って広々とした空間を演出し、普段は引き戸を閉めて適度に空間を仕切り、夫婦それぞれの活動の空間を確保するなど、プライバシーと快適性を両立させます。
特に注目すべきは引き戸を使うことでバリアフリーが実現することです。洗面室と浴室への動線に設けられた引き戸は高齢者や身体の不自由な方でもスムーズに移動しやすく、将来的な車いす利用も見据えた配慮となっています。
引き戸の幅は、車いすが通りやすい幅(=有効80cm以上、推奨90cm以上)があり、さらに引き戸の取っ手が持ちやすい大型ハンドルになっていると、安全性と使いやすさを得ることができます。
【図3】は専有面積78m2、3LDKで実現する子育て世代におすすめの間取りです。
LDKに隣接する6帖の和室は、引き戸のもつフレキシブルさで子どもの成長に対応します。幼少期は引き戸を開け放ち、LDKと一体化したプレイルームとして使い、子どもが成長するにつれ、引き戸を閉めて和室を独立した個室へと変化させることができます。
引き戸は「戸襖(とぶすま)」を使用すると良いでしょう。戸襖は洋室側を木目調の仕上げに、和室側をふすま仕上げにすることができるので、洋室と和室の境目に使う引き戸として適しています。ふすま紙の柄は昔からある伝統的な和柄はもちろん、和モダン調、北欧調などさまざまなデザインが出ているので、インテリアに合わせて選ぶ楽しみがあります。
さらに、家事効率を向上させる工夫として、洋室(2)とLDKが引き戸のウォークスルークローゼットでつながっている点に注目です。LDKとつながりながら、回遊性のある間取りとなっているため、家事の時短と家族のコミュニケーションを同時に実現します。引き戸は単なる仕切りではなく、暮らしの可能性を広げる鍵となります。
引き戸は日本の住宅文化から生まれた実用的な建具であり、限られた空間を最大限に活かすツールとなります。空間を広く見せる効果、バリアフリー対応、子どもの成長に合わせた間取りの可変性など、暮らしのさまざまな場面で活躍します。
片引き戸や引き分け戸、引き込み戸など種類も豊富で、それぞれに適した使用シーンがあります。音漏れや掃除の手間などのデメリットはあるものの、スペースの節約やケガのリスク減少、和洋どちらにも合うデザイン性の高さなど、多くのメリットを兼ね備えています。
ライフスタイルの変化に柔軟に対応できる引き戸の特性を理解し、活用することで、より快適で長く住み続けられる住空間を実現できるでしょう。
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