CRE戦略の検討・実践方法

CRE戦略とは、企業不動産について、「企業価値向上」の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方です。(国土交通省「CRE戦略を実践するためのガイドライン」( 2008年4月)より)

企業が自社の不動産に対し何かしらの課題を持っている場合でも、不動産マーケットの動き(高く売れるか、安く買えるか)ばかりを見て売却・取得を行っていては企業価値の向上につながりません。 では、どのような点に着目し「CRE」を進めていけばよいのでしょうか。 本項ではその具体的な進め方についてご説明します。

※CRE戦略の考え方については<今、改めて考える「CRE戦略」(第1回~第3回)>をご覧ください

Ⅰ.自社の不動産課題の抽出

まず、自社の不動産の活用状況を把握し課題を確認します。

特定の不動産の築年数が古いからといって「売る」「建替える」、手狭なので「買う」「借りる」と単純に結論付けるのではなく、所有・賃貸している他の不動産の役割や過去の利用経緯なども考慮した上で、なるべく幅広く課題を洗い出します。

自社の不動産を俯瞰して見てみることで、最適な活用方法を見つけやすくなります。

不動産活用に関する課題の例
築年数が古い社屋(工場、店舗など)を新しくしたいが、建替え・購入・賃貸のどの方法が最適か分からない。
自社で使用している不動産は保有(賃借)が多いが、それが最も効果的・効率的な活用方法なのか分からない。
遊休地を処分したいが、過疎地なので買い手がいないと想定される。
遊休化した資産を早急に資金化したいが、損が出るためタイミングが難しい。
本社ビルを売却し固定資産を減らしたいが、社員の士気が下がることが懸念される。
本業補完のため賃貸ビル(マンション)を建てて運用したいが、全く経験がない。

不動産の活用には、簿価と時価、売却・賃貸(従前のまま使用しながら賃貸する「リースバック」)など様々な指標・手法を比較しながら検討する必要があります。

Ⅱ.自社で保有・賃貸している不動産の「見える化」

自社で保有・賃貸している不動産についての課題が確認できたら、それらを俯瞰し「見える化」し優先順位をつける準備をします。

不動産の「見える化」とは?
ご所有の不動産の概要(立地や面積、建物の竣工時期)や費用(簿価、年間コスト)などのデータを洗い出し各不動産のについて客観的に把握します。
併せて不動産の概要や直近の不動産マーケットを参考にしながら、各物件の査定・分析を行います。※なお、査定・分析は社内に不動産のスペシャリストがいない場合、専門の不動産会社へ依頼することをお勧めします。
②の結果とあわせ、不動産の「代替性」「使用価値」「修繕費の予測」などの評価基準を用い、自社にとってどの不動産が重要なのかをランク付け(見える化)します。
「見える化」の手順
各物件データの収集・整理 物件分析・査定 ③様々な観点から物件を評価
・面積
・建物築年
・簿価
・年間コスト  など
・各不動産を査定
・売却の難易度も判定
・代替性
・使用価値
・利用効率
・利用可能性
・修繕費予測
・他の物件との関係  など

<各物件データの収集・整理のイメージ>

<②と③の結果から不動産の「市場価値」と「使用価値」をグラフ化すると活用方針を立てやすい>

Ⅲ.不動産活用の具体策の検討

前項で「見える化」した各不動産について、自社の事業や今後の経営方針に沿った基準を踏まえ具体的な活用方法を検討していきます。この段階で、自社の将来にとってどの不動産をどう活用することが重要なのかが明確になります。

検討項目例
他の保有物件と統合・集約はできないか?
新規事業での活用、他事業用への転換はできないか?
売却先はあるのか?賃貸のニーズはあるのか?
売却により財務指標にどのような影響があるのか?
継続保有するとどのようなコストが発生するか? など

保有している不動産を判断基準をもとに分類

<例:国内の製造業者が本業補完で不動産賃貸業を営む場合>

<低稼働・未利用の不動産について具体策を検討>

Ⅳ.策定したCRE戦略の実行

自社の経営方針に沿ったCRE戦略を決定のうえ、順次スケジュールにそって実行していきます。

なお、不動産の売却や活用にあたっては専門知識を有する不動産業者へご相談することをお勧めします。

また、CRE戦略は一度策定したから、永続的に同じ戦略のままとは限りません。
不動産マーケットの変化や会社の経営方針の変更、財務状況の変化等様々な変化が企業活動にはつきものです。
従ってそれらの変化に応じて、常にPDCAサイクルを回して行く必要があります。

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弊社はお客様の立場に立って、お客様の経営戦略に即したうえで、最善と思われるご提案を差し上げるべく、日々尽力しています。

提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部

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