【新宿区】「新宿」駅周辺の防災まちづくりや中高層マンション防災対策にも力を入れる新宿区
新宿区は東京23区のほぼ中央にあり、武蔵野台地の東端に位置しています。南から北へ標高が低くなる階段状の地形で、標高30~35m以上の淀橋台地、標高20~25m程度の豊島台地、そしてそれらに挟まれた標高10m程度の下町低地に分けられ、低地面に沿って神田川や妙正寺川が流れています。
台地部は比較的古い時代に堆積したことから地盤が安定しているといわれています。特に西新宿の超高層ビル群などは東京礫層と呼ばれる地耐力の大きい強固な地盤が支えています。
新宿区という区名は、江戸時代に甲州街道の宿場町として「内藤新宿」が置かれたことに由来します。信州高遠藩内藤家が幕府に返上した屋敷地に置かれたことと「新しく作られた宿」という意味で名付けられたようです。
新宿区では、震災対策計画編、風水害対策計画編、大規模事故等対策計画編などからなる「新宿区地域防災計画」を策定しています。そこでは東京湾北部地震(マグニチュード7.3)によって新宿区の面積の約8割で震度6強、約2割で震度6弱の揺れが起こる、などの想定に基づき、具体的な対策を講じています。
また、大地震により区役所自体が被災した場合でも、区の重要業務を中断させない、あるいは早急に復旧させるための計画として「新宿区事業継続計画(地震編)」を策定し、非常事態に備えています。
なお新宿区役所本庁舎については、2011(平成23)年の東日本大震災時にガラス破損などの被害が生じたことから、早急に仮補強工事を行い、2015(平成27)年には大がかりな免震改修工事も完了しています。これにより本庁舎の耐震性能は大幅に強化されています。
新宿区では計32ページからなる防災ハンドブック『災害に備えて』を作成し、区民に配布しています。地震の発生メカニズムや日頃の備え、発災時の適切な行動、大雨に対する各家庭での浸水対策、区の防災・減災対策、避難場所地図などが一冊にまとめられており、自助・共助の推進に役立つものとなっています。
新宿区避難場所地図では「避難場所(広域)」や「避難所」などがひと目でわかるようになっています。
「避難場所(広域)」は地震発生時に延焼火災の危険から身を守るために避難するオープンスペースです。新宿区では新宿御苑、明治神宮外苑、早稲田大学、哲学堂公園、後楽園、戸山公園、新宿中央公園など多くの公園や広場が指定されており、町丁目ごとにどの場所に避難するかが割り当てられています。
一方、「避難所」というのは、家屋の倒壊等により自宅での生活継続ができなくなった方が一時的に生活する場所で、区立小中学校など約50ヵ所が指定されています。
区のホームページではこのほか「洪水ハザードマップ」や「土砂災害ハザードマップ」なども閲覧できます。平常時から、災害リスクが懸念される場所やいざという時の避難先などをチェックしておきたいものです。
新宿区では区民の約8割が集合住宅に居住しています。また、マンションの高層化も進んでいます。
大地震が発生した場合、中高層マンションでは大きな揺れのほか、エレベーターへの閉じ込めや給排水設備などの損傷、高層階の居住者の孤立なども懸念されますが、自主的な防災対策を行っているマンションは少ないのが実態です。また、居住者一人ひとりが備えをしておくことも大切です。
そこで新宿区では、マンション居住者・管理組合・開発事業者等が一体となって具体的な防災対策を実施していくための基本として「中高層マンション防災対策ガイドライン」を策定しました。加えて、防災対策マニュアル『マンション防災 はじめの一歩』を改訂・配布しています。
このマニュアルでは、マンション居住者に必要な自助の防災対策や、自主防災組織の結成方法や活動内容、マンションの防災マニュアル作成の支援などについて紹介しています。
また、専門知識を持つ「防災アドバイザー」の派遣も行っており、防災対策や防災訓練などについて専門的な指導・助言をしています。
新宿区には、1日当たりの乗降客数が世界最大の約350万人(2022(令和3)年4月時点)という巨大ターミナル「新宿」駅があります。駅周辺には超高層ビル群や商業施設が立ち並ぶほか、大規模な地下街も張り巡らされ、昼夜を問わず活気に満ちあふれています。
しかしその一方で、ひとたび大地震が発生すると大きな混乱が生じることになります。東京都が2012(平成24)年に発表した「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」でも、「新宿」駅周辺地域では最大約36万人の滞留者が発生し、そのうち約5万人が行き場のない状態に陥る、とされています。
そこで新宿区などが事務局となり、多くの地域事業者・団体等による「新宿駅周辺防災対策協議会」を組織し、官民連携でさまざまな対策を検討・実施しています。協議会では、活動の基本原則として(1)組織は組織で対応する(自助)、(2)地域が連携して対応する(共助)、(3)公的機関が地域を支える(公助)という3つの「新宿ルール」を定めています。
さらに、この新宿ルールの実践力を高めるため、「できる人が、できる事を、みんなでやる」をコンセプトに「新宿ルール実践のための行動指針」を策定しています。具体的には「むやみに移動しない」、「現地本部を中心に連携する」、「地域で傷病者に対応する」の3つです。
また、帰宅困難者一時滞在施設運営マニュアル(標準版・感染症対策版)や滞在者等誘導マニュアルといった各種マニュアルも作成し、発災時の対応力の強化を図っています。
このように新宿区では、帰宅困難者対策を含めた「新宿」駅周辺の防災まちづくりや、特有の課題を抱える中高層マンションの防災といった都市ならではの防災対策をはじめ、幅広い取り組みを行っています。
- 掲載日
- 2022/05/11
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。