【Special Report】加速する多様化、不動産戦略にも

日経リアルエステートサミット2023 イベントReport
今後の経済動向と企業不動産戦略
 ~あしたにつながるCRE戦略~

加速する多様化、不動産戦略にも


社会の変化や価値観の多様化が加速する中、企業の不動産戦略にも新たな視点が求められる。大切なのは過去や現在に固執せず、未来に目を向けること。イノベーション創出に最適化されたオフィス活用や、将来のニーズを捉えた不動産投資を通じ、様々な変化に備えたい。企業価値向上につながる新時代の戦略を専門家が論じた。

グローバルの経済・金融動向

慶応義塾大学大学院
メディアデザイン研究科 教授
岸 博幸氏

構造改革の到来、デジタル化契機

世界は30年ぶりの構造変化を迎えつつある。

深まる自由主義国家と覇権主義国家の対立は、グローバル経済を変質させるだろう。米連邦準備理事会(FRB)を筆頭とする世界的な利上げ傾向は企業の借り入れを抑制し、従来の新自由主義的な動きにブレーキをかける。人々に新しい経験を強いた新型コロナウイルス感染症も、収束の兆しが見え始めてきた。様々な社会のルールが変わる中、とくにビジネスにおいては価値観の多様化やデジタル化の加速が重要な意味合いを持つはずだ。

世界のプレーヤーはすでに新しい潮流を取り入れ始めている。日本にとっても、失われた30年に区切りをつけ、経済成長に転じる好機といえるだろう。日本企業には昭和の成功体験を一度捨て去り、時代の変化に対応した進化が求められる。まずは、今度こそデジタル化の流れに乗ること。その上でイノベーションの質と量の向上を目指す。企業体制やビジネスモデルの改革、企業不動産戦略の見直しも欠かせない。

とくにこれまでのオフィスや働き方は、個人のクリエーティブに不向きだったといえる。個人の能力発揮や企業成長に最適化されたオフィスの場所、つくり、あり方を含めた事業戦略を企業は模索しなくてはならない。

混迷と変化の時代のCRE戦略 ~超少子高齢化時代の企業と学校法人の備え~

野村不動産ソリューションズ
常務執行役員
原田 真治氏

時間軸を意識した 3つの戦略

企業不動産を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。コロナショックやウクライナ危機を背景としたサプライチェーンの再構築、世界的な環境課題への取り組み、働き方改革や人的資本といった考え方の浸透。超少子高齢化による人材確保の課題も残る。これらに対応しながら、企業価値を高めるには「自社の使用価値」「不動産の市場価値」「SDGsの視点」、そして「時間軸」の4つを意識したCRE戦略が重要だ。とくに「時間軸」を意識した戦略の立案実行は、急速に進む社会の変化と多様化への機動的な対応に欠かせない。


具体的な戦略としては、まずオフィス自前主義からの脱却が挙げられる。賃貸であれば、その時々のニーズや価値観に適したオフィスを選べる。時間や場所にとらわれない働き方の実現は、優秀な人材の確保にも効果が期待できるはずだ。近年ではESG関連の取り組みを開示する必要性から、環境配慮やウェルビーイング(心身の健康や幸福)につながる要素をオフィスに求める声も多い。今後はSDGs、ESGに対応した物件への入居が企業価値を左右する可能性もあるだろう。その点、賃貸は再生エネルギーを利用した設備や緑化された共用空間、テナント向けの共用ラウンジなど、より高いスペックのオフィスが供給されており、各企業の方針に沿って「選んで借りる」ことが可能だ。

出典:「オフィスビルに対するステークホルダーの意識調査」(日本政策投資銀行)を基に野村不動産ソリューションズにて作成

本業補完としての不動産活用も、時間軸を意識した戦略の一つだ。少子高齢化や人口減少、産業構造の変化による本業の減収は、企業努力のみでは補えない恐れもある。本業に連動しない不動産収益の確保は、事業継続性の向上に有用な選択肢といえる。また、減価償却による課税所得の圧縮や、資金調達における売却可能資産としての利用価値もある。

収益構造の確立にあたっては、保有不動産の有効活用の他、合理化や売却で外部からの収益不動産取得も検討したい。中長期的には、少子高齢化でよりニーズの高まる「ヘルスケア施設」、高付加価値の「宿泊施設」、デジタルシニアの需要が増す「物流施設」や「データセンター」などは、成長が見込まれる。企業の姿勢としてはSDGs視点での不動産選択の意識も大切だ。

無形資産に関する設備、施設への投資も視野に入れたい。社会の変化や価値観の多様化は企業にとってビジネスチャンスでもある。とくに先端技術産業の市場規模は、経済産業省の試算によると2018年から2025年にかけて9.1倍に拡大する見込みだ。日本の無形資産投資は世界に比べて非常に低い現状もある。新しい商品やサービス、先端技術、人事戦略といった無形資産を生み出しやすい環境づくりへの投資は、今後の事業成長に欠かせない観点だろう。

野村不動産ソリューションズでは、学校法人の不動産戦略にも携わっている。国内の大学では、少子化による授業料収入の減少が懸念されており、収益の多様化が急務だ。そこで、遊休地の貸し付けや出資会社を通した賃貸不動産の購入、閉鎖済みキャンパス売却などで収益化を図った事例がある。とくに、この売却事例は、外資系インターナショナルスクールの誘致を念頭にしたもので、地域の活性化や国際交流といったSDGsにも貢献した取り組みだったといえる。

※本記事は2023年3月20日(月)付 日本経済新聞朝刊掲載 広告特集を再構成したものです

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主催:日本経済新聞社
協賛:野村不動産ソリューションズ株式会社 法人営業本部

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