北陸新幹線敦賀延伸の影響と課題

~新駅周辺の地価や企業立地を中心に~

2024年3月16日、北陸新幹線の金沢-敦賀間が開業した。整備新幹線の開通は沿線地域の輸送時間短縮などの利便性向上のほか、企業立地や入込客の増加、地価の上昇など様々な効果をもたらす。すでに先行して開業している金沢や富山は企業立地の増加や地価の上昇など、さまざまな効果が表れている。

本レポートでは、北陸新幹線の金沢-敦賀間の開業を見越して、沿線の主な駅周辺の企業立地動向や2024年3月公表された公示地価の変化等を見ることで、すでに表れている効果をとらえ、さらに残された課題についても述べる。


【サマリー】

  • 北陸新幹線の金沢-敦賀間が2024年3月16日に開業した。本事業の開業により、新幹線の特徴である、速達性、大量輸送性による効果がもたらされ、沿線地域の豊富で多彩な観光資源により、多くの誘客が期待され、人々の余暇活動の充実や広域的な活動を促すものとして期待される。
  • 大きな効果の一つが時間短縮効果である。首都圏から福井駅までは乗り換えなしで行けるようになり、所要時間も36分短縮する。
  • 本年3月27日に公表された最新の公示地価を見ると、新駅周辺の地価は、大きく上昇している。さらに新駅周辺では、再開発やそれに伴う企業やホテル等の立地が進んでおり、新幹線開業の効果があらわれている。
  • 開業の効果を持続的なものにするためには、沿線自治体の連携による不断の努力が欠かせないだろう。さらに関西圏とのつながりをさらに強くするためには早期の新大阪延伸が望まれる。

Ⅰ.北陸新幹線の金沢―敦賀延伸の概要

図表Ⅰは、2024年3月16日に開業した、北陸新幹線の金沢-敦賀間の路線図である。新たに6つの新幹線駅が開業した。なお、北陸新幹線の高崎-長野間は1997年10月に、長野-金沢間は2015年3月にそれぞれ開業している。
本事業の開業により、新幹線の特徴である、速達性、大量輸送性による効果がもたらされ、沿線地域の豊富で多彩な観光資源により、多くの誘客が期待され、人々の余暇活動の充実や広域的な活動を促すものとして期待される。

【図表Ⅰ】金沢―敦賀間の路線図
20240611_image1.jpg出所:鉄道・運輸機構ウェブサイト
【図表Ⅱ】金沢―敦賀間の停車駅
20240611_image2.jpg出所:JR西日本・JR東日本プレスリリース

Ⅱ.整備新幹線の効果・影響

整備新幹線開通の一般的な効果・影響については、以下の点があげられる。

(Ⅰ)時間短縮効果

整備新幹線が開通すると、これまで特急や在来線、既存新幹線を乗り継いでいかなければならなかったのが、新幹線一本で乗り継ぎなしで行けるケースが増え、目的地までの大幅な時間短縮になるケースが多い。これにより、移動が楽になるとともに、利用者に新たに活用できる時間が生じるというメリットが生じることを意味する。

(Ⅱ)地価上昇効果

整備新幹線の整備に伴って、新駅整備及び、新駅周辺の再開発が行われることが多い。これにより、新駅周辺の活性化が大きく期待され、新駅周辺地域の地価上昇効果が発生するケースが多い。例えば、2015年の北陸新幹線金沢開業の際は、2015年の都道府県地価調査で、金沢駅西口の地価上昇率が、商業地として、東京銀座などを抑えて、全国1位の上昇率となった。

(Ⅲ)入込客数の増加

すでに述べたように、新幹線開業による地域間の輸送時間の短縮、輸送能力の増加・強化は、入込客の増加が期待できる。2015年の北陸新幹線金沢開業後は、首都圏から、多くの観光客が金沢に訪れ、インバウンド客の増加も相まって、入込客は開業前の約1.5倍に増加した。

(Ⅳ)企業・ホテル等の立地の増加

新幹線の開業は沿線地域のビジネス上の優位性が増し、企業立地魅力が増加する。過去の例では、駅周辺において、事業所やオフィスの立地や、工場等の立地の進展が見られた。
また、多くの誘客が期待できることから、新駅周辺では、開業前後において、新たにホテル等の宿泊施設の立地が見込まれる。

(Ⅴ)地域交流人口の活性化

新幹線整備によって、地域ブロック間の交流が活発になり、首都圏はもとより、近隣地域間との交流も活発化することが予想される。人口減少化では、都市と地方、地方と地方の交流を盛んにすることが重要であり、整備新幹線は、それに大きな役割を果たすものである。

(Ⅵ)経済波及効果

新幹線の開業により、速達性や運行頻度などの輸送サービスの向上により、沿線地域を中心に、企業活動においては出張時の移動時間の短縮、営業範囲の拡大、情報収集の効率化等により、生産コストの軽減や生産性の向上といった恩恵がもたらされる。
また、入込客数の増加は、宿泊費や飲食費、土産代など、様々な分野で地域内消費が増加することが見込まれ、これが様々な産業に波及することによって、地域に大きな経済波及効果がもたらされることが期待される。

以下では、北陸新幹線敦賀延伸の効果として、時間短縮効果、経済波及効果、地価上昇効果、企業・ホテル等の立地の増加について、述べる。

Ⅲ.北陸新幹線敦賀延伸の効果

ⅰ.時間短縮効果1

最速達列車「かがやき」を利用した時の東京-福井・敦賀間の所要時間及び短縮時間は以下のとおりである。

東京-福井間 2時間51分 36分短縮
(乗り換えあり→乗り換えなし
敦賀間 3時間8分 50分短縮
(乗り換えあり→乗り換えなし

東京-福井間で36分の短縮、東京-敦賀間で50分の短縮となる。さらにこれまでは新幹線から特急に1回乗り換える必要があったが、今回の開業で東京から直通で行けるようになる。これは心理的にも大きな短縮効果である。

また、大阪から福井、金沢、富山へ行く場合の、所要時間及び短縮時間は以下のとおりである。

大阪-福井間 1時間33分 3分短縮
(乗り換えなし→乗り換えあり
金沢間 2時間9分 22分短縮
(乗り換えなし→乗り換えあり
富山間 2時間35分 29分短縮
(乗り換えなし→乗り換えあり

大阪からは、これまで直通の特急「サンダーバード」があったが、北陸新幹線敦賀延伸後は敦賀で1回北陸新幹線に乗り変える必要がある。従って、時間短縮効果は東京から程ではなく、しかも1回乗り換える必要があるので、不便になったと感じる人もいるかもしれない。

ⅱ.経済波及効果

北陸新幹線の敦賀延伸に伴う時間短縮効果により、福井県では首都圏に加えて、関西圏など他地域との交流人口が大きく増加することが見込まれている。ビジネスや観光における交流人口が増加すれば、宿泊費や飲食費、土産代など、様々な分野で県内消費が増加することが見込まれる。

また、石川県内でも、「小松駅」「加賀温泉駅」の2駅が新設され、福井県だけでなく石川県へも大きな経済波及効果が見込まれる。

(株)日本政策投資銀行の推計2によると、敦賀開業による増加入込客数を推計するモデルを構築したうえで、福井県内への経済波及効果を推計した結果、約309億円/年の経済波及効果が県内にもたらされるとしている。さらに、石川県内への効果も同様の方法で推計を行った結果、石川県へは約279億円/年の効果がもたらされる結果となっている。

2015年に開業した金沢延伸は、インバウンド客の増加を含む観光需要拡大により、石川県内に大きな効果をもたらした。今回の敦賀延伸でも、いかにインバウンド客を呼び込み、観光需要を拡大につなげるかが、地域経済活性化の鍵であろう。


1本節の内容は、JR西日本・JR東日本プレスリリースによる。
2日本政策投資銀行(2019)「北陸新幹線敦賀開業による福井県内への経済波及効果」
日本政策投資銀行(2023)「北陸新幹線敦賀開業による石川県内への経済波及効果」

Ⅳ.金沢―敦賀延伸による地価、企業・商業立地への影響

ⅰ.駅周辺地価への影響

北陸新幹線敦賀延伸の駅周辺の地価への影響を、3月27日に公表された最新の「令和6年地価公示」より、見てみる。なお、今回は令和6年1月1日午前0時時点の地価であり、同日午後の能登半島地震の影響は考慮していない。

まず、福井県全体の商業地の平均地価は0.2%上昇し、1992年以来、32年ぶりにプラスとなった。

さらに図表Ⅲは福井駅周辺の地価の動きを見たものである。福井市全体の商業地の上昇率が2.1%であるのに対し、福井駅周辺の地価はそれを大きく上回る上昇率となっている。福井駅は最速の「かがやき」の停車駅であり、また駅前もそれに伴う再開発が行われており、その効果によるものと思われる。

【図表Ⅲ】福井駅周辺地価(令和6年1月1日時点)
20240611_image3.jpg
出所:国土交通省「地価公示」より野村不動産ソリューションズ作成
順位 地点 地価(円/㎡) 変動率(%)
福井市大手2丁目(Hasビル) 195,000 8.3
福井市中央1丁目 406,000 6.0
福井市大手2丁目(大手ビル) 360,000 5.0
福井市日之出2丁目 127,000 4.1
福井市全体(商業地) 2.1

図表Ⅳは北陸新幹線及び特急の起終点駅である、敦賀駅の周辺地価の動きを見たものである。敦賀駅の東口は工場等が林立し、西口は商業地と住宅地が混在した一帯となっている。駅周辺の公示地価の地点は2地点であるが、いずれも上昇しており、敦賀市の全用途地価を上回る水準となっている。

図表Ⅴは石川県第2の都市の駅、小松駅周辺の地価を見たものである。こちらでの商業地地価は県内上昇率2位と3位となっており、明らかに新幹線開通の効果であると思われる。

【図表Ⅳ】敦賀駅周辺地価(令和6年1月1日時点)
20240611_image4.jpg
順位 地点 地価(円/㎡) 変動率(%) 備考
敦賀市本町2丁目 79,500 2.1 商業地
敦賀市清水町2丁目 68,100 2.0 住宅地
敦賀市全体(全用途) 0.5
【図表Ⅴ】小松駅周辺地価(令和6年1月1日時点)
20240611_image5.jpg
出所:国土交通省「地価公示」より野村不動産ソリューションズ作成
順位 地点 地価(円/㎡) 変動率(%) 備考
小松市龍助町32番 53,500 7.0 県内上昇率2位
小松市土居原町199番 144,000 6.7 県内上昇率3位
小松市全体(商業地) 2.9

ⅱ.商業・ホテル等の立地への影響

福井駅前では、新幹線開業前日の3月15日に福井県内では初の外資系ホテルとなる「コートヤード バイ マリオット福井」がオープンした。特に、福井駅西口エリアでは、大規模な再開発が続けられており、本年5月には28階建てのマンション「ザ・フクイタワー・レジデンス」が完成予定である。

また、敦賀駅周辺でも昨年9月に書店や広場、飲食店などが入る複合施設「oTTa(オッタ)」がオープンし、にぎわっている。敦賀駅の近くでは、東洋紡が65億円を投資して、敦賀バイオ工場を増強中である。遺伝子検査に使うPCR試薬や、遺伝子診断薬の原料を生産する。

さらに福井県内では、新駅の越前たけふ駅前に村田製作所がセラミックコンデンサーの研究開発拠点を設ける。投資額は350億円で約800人が勤務する一大拠点となる。信越化学工業は武生工場(福井県越前市)でEVや半導体に使う高機能シリコーンの増産体制を敷く。

小松駅では、駅前広場や新幹線高架下の観光交流センターの整備が進み、近くでは、北陸電力がホールなどを備えた複合ビルの開発を進めている。

これらの投資が、一過性のものでなく、持続的成長にいかにつなげていくかが今後重要となろう。

Ⅴ.今後の課題

今回の北陸新幹線敦賀延伸によって、特に福井県には入込客数が増加し、それに伴い投資額も増加し、大きな地域活性化をもたらすことが期待される。現在福井県は入込客数で全国46位であり、インバウンド客も少ない。敦賀延伸によって効果をより大きなものとするためにはいくつか課題がある。

まず、福井県には断崖絶壁で有名な東尋坊や越前国を治めた朝倉氏の城下町の跡である一乗谷や永平寺、そして子供にも人気の県立恐竜博物館など、観光スポットは多い。しかしながら、これらの観光地は新幹線駅からは離れた場所にある。新幹線駅からこれらの観光地へのアクセス交通手段、いわゆる二次交通の整備が必要となろう。

先述したように、首都圏から福井への所要時間は乗り換えなしで大幅な時間短縮になるものの、関西圏からは福井、金沢、富山に行くには新たに敦賀で特急から新幹線に乗り換える必要があり、時間短縮効果は限定される。そのため北陸や関西の関係者は敦賀以西、新大阪までの早期全線開業を強く求めている。政府は当初23年度の着工を決議したが、環境影響評価の遅れから、着工時期は見通せていない。全線開業すれば、さらに大きな効果が見込まれるだけに、早期着工が望まれる。

Ⅵ.まとめ

北陸新幹線の敦賀延伸による地価や企業立地を中心に現時点において、発現している効果を中心に見てきた。その結果、すでに開業前から、沿線主要駅周辺では、再開発が行われるとともに、地価上昇効果がみられ、また、入込観光客の増加やビジネス上の利便性を見込み、ホテルや企業の研究所等の立地がみられるなど、開業効果が表れている。

この効果が持続的なものにするには、地元の取り組みが欠かせない。今回の延伸によって、富山、石川、福井の県都は1時間圏になった。これを機に北陸経済全体の底上げにつなげ、能登半島地震の復興に生かしたい。

課題もいくつかある。とりわけ福井県は、現時点で入り込み客数、特にインバウンド客が全国的に少ない。観光資源は決して少なくないので、これまで以上に潜在的な顧客に訴求するアピールなり取り組みが必要であろう。また、敦賀までの延伸では、関西圏からの時間短縮効果は大きくない。早期の新大阪延伸を進める必要があろう。

提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部

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