物流の2024年問題と輸配送、機械化・自動化の最新動向 Ⅲ

~荷役における取り組み~

物流業界の労働力不足、また迫る「物流の2024年問題」への輸配送における取り組みについて確認しました。最後に、主に物流施設内における荷役についてどのような対策が行われているか確認します。また、あわせて物流におけるカーボンニュートラルの取り組みについてもみていきます。


サマリー

荷役は入出庫や配送仕分け等時間効率が求められるほか、ピッキングの正確性等物流全体の生産性や品質にかかわる作業です。作業員の負担を軽減する物流ロボットの導入が拡大しています。世界の物流ロボット市場は、2029年までに約210億ドルまで成長すると予想されています。
倉庫シェアリングサービスも拡大しています。短期・小ロットでの倉庫利用が可能で、季節在庫や繁忙期にあわせ一時的な利用をすることができるため、急な保管需要を空きスペースへ振り分けることで繁閑期の平準化にもつながり、作業員の負荷を軽減する効果も期待できます。
運輸部門のうち、「貨物」分野におけるCO²削減対応が遅れています。物流施設の広大な屋上は、太陽光パネルの設置場所として最適であり、今後FIT価格の割増方針が発表されているため、設備導入がさらに進むことが予想されます。

Ⅲ.荷役における取り組み

物流の6大機能のうち「荷役」は、積み下ろしや倉庫への保管、目的地への出荷等にかかわる作業です。荷役作業の大まかな流れは下記の通りです。

荷役は入出庫や配送仕分け等時間効率が求められるほか、ピッキング[1]の正確性等物流全体の生産性や品質にかかわる作業といえます。この作業に関しても、労働力不足へ対応するための取り組みが行われています。


[1]出荷指示に則り倉庫内から商品を集める作業

Ⅲ-Ⅰ.施設内の自動化・機械化について

物流施設内においては、「マテリアルハンドリング(マテハン)機器」[2]を導入することによってシステム化や効率化が進んできました。マテハンでは、保管や運搬、仕分け等様々な用途の機器が活用されています。

マテハン機器の中でも、これまで自動化が難しかった作業を代替できるようになったのが物流ロボットです。中でもピッキングや仕分けといった構内作業を効率化し、作業員の負担を軽減する物流ロボットの導入が拡大しています。アメリカの市場調査会社Fortune Business Insightsによると、世界の物流ロボット市場は、2021年時点で60億米ドルでしたが、2029年までに約210億ドルまで成長すると予想されています。
代表的な物流ロボットについて取り上げて説明します。

i.自動搬送ロボット

無人で荷物を運ぶロボットですが、床に磁気テープ等の誘導を必要とするAGV(Automatic Guided Vehicle)と、周辺を認識しながら自主的に走行するAMR(Autonomous Mobile Robot)があります。AGVは、構内のレイアウト整備や誘導体の事前設置工事が必要となりますが、AMRは不要なため、中小の施設においても導入が進んでいます。自動棚搬送ロボットと呼ばれるGTP(Goods To Person)は、商品を棚ごと作業員のいる場所まで運ぶロボットで、大手EC会社が導入していることでも有名です。作業員が移動する必要がなくなるため、身体的負担を軽減するとともに、構内スペースの通路を最低限におさえることが可能となるため、収容能力を向上させるメリットもあります。

ii.パレタイジングロボット

パレタイジングロボットは、荷積みや荷下ろし作業を担うロボットです。近年では画像により積上げ先の座標認識を行い、自動で積載場所を判断する等、様々な機能を持った製品があります。特に重量物を取り扱う施設では、作業員の重労働を減らせるとともに、怪我や事故防止にもつながります。

iii.ピッキングロボット/ピースピッキングロボット

ピッキングロボットとは、出荷指示にもとづき商品を取り出し、指定の場所まで集める作業を担うロボットです。GTPでは商品棚が作業員のもとへ運ばれ、作業員は移動することなくピッキングを行うことが可能です。また、作業員を乗せ最適なルートで構内を移動し、必要な商品棚の前で停止することで作業員がピッキングを自ら移動することなく行える協業ロボットもあります。

ピースピッキングロボットとは、指定された商品をコンテナ等から自動ピッキングするロボットです。商品の形状や重量、位置等により自ら選んでピッキングすることが可能です。複数の商品の中から、必要な商品だけを選ぶ、といった処理をすることが可能です。特に大量の数を処理する場合、省人化と出荷精度の向上が可能となります。例えば、海外の大手スーパーでは、モバイルカートが冷蔵・冷凍商品を自動でピックアップし、配送担当者へ引き渡すピッキングロボットを採用しています。


[2] 物流施設内における商品のすべての移動(入出庫、運搬、ピッキング等)にかかわる機器

Ⅲ-Ⅱ.倉庫シェアリングサービスの拡大

DXが進み、各所においてシェアリング・エコノミー市場が拡大するなか、物流業界においても倉庫のシェアリングサービスが広まっています。コロナ禍でEC市場が拡大する中、EC事業者を中心に倉庫需要が急増したことから、荷主と倉庫内に遊休スペースを持つ倉庫事業者をマッチングするプラットフォームが登場しています。短期・小ロットでの倉庫利用が可能となるため、季節在庫や繁忙期にあわせ一時的な利用をすることができます。急な保管需要を空きスペースへ振り分けることで、繁閑期の平準化にもつながり、作業員の負荷を軽減する効果も期待できます。

2019年から企業間の倉庫シェアリングプラットフォームサービスを開始したサービスでは、空きスペースを抱える企業とスペースを必要とする企業の情報を集約し、小ロットかつ短期間での利用が可能なサービスを提供しています。また、倉庫の寄託契約[3]に特化したマッチングプラットフォームを提供しているサービスもあります。荷主が価格や場所等の条件から倉庫を検索し、見積もりから契約をオンラインで完結できます。その他、危険物倉庫に特化したサービスや、小規模スペース(約3坪)をマッチングするプラットフォームもあります。

株式会社IHIと野村不動産が共同開発する「Landport横浜杉田」[4]では、「オープンシェア」をテーマとしており、立体型自動倉庫を施設内にビルドインで設置し、入居企業へシェアリングサービスとして提供する予定です。季節や生産波動にあわせた利用を実現することが可能となるため、入居企業は固定賃借坪数を最低限におさえることができ、固定費削減につながります。自動倉庫のシェアリングサービスは、賃貸物流施設において初の取り組みです。また本施設では、テナント同士やテナントと周辺地域がオペレーションや空間を共有できる仕組みづくりを目指しています。


[3]寄託者(倉庫に荷物を預ける利用者)と受寄者(倉庫業を営む者)による物の保管に関する取引
[4]株式会社IHIと野村不動産が共同開発を行っている大型物流施設(横浜市金沢区)、2025年2月竣工予定

Ⅲ-Ⅲ.まとめ(荷役における取り組み)

以上、物流施設における機械化、自動化および倉庫シェアリングについて確認しました。
施設内の自動化に際しては、導入コストが必要とはなりますが、仕分けやピッキング等の業務を効率化および省人化することができるため、人件費を節約しやすいメリットがあるほか、作業ミスや事故の防止等にもつながります。また、フロアの有効活用にもつながるため、必要面積の見直しにも有用といえるかもしれません。企業によっては補助金制度[5]を活用することができます。来年度は減税制度がなさそうでしたので削除しました。

物流業界における労働不足問題は、日本国内のみならず、アメリカやヨーロッパでも発生しており、世界的な問題ともいえます。今後も、施設における自動化・機械化の導入拡大や、オペレーションのシステム化等がより一層進むことが予想されます。一方、自動化の導入が拡大することにより、作業員の役割も変わっていくことが考えられます。今後は、各データを分析するアナリスト業務やロボット業務を最大化するエンジニアリング業務が主となる可能性があります。

野村不動産では、ロボティクスやICT、搬送機器等物流関連技術を有する企業各社と様々な荷主・物流企業間固有の課題解決を目的とした「Techrum」[6]を組成しています。参画企業同士の連携・組み合わせにより、総合的なソリューション開発を行うことで、施設ハード面だけではなく、ソフトサービスを含めた総合的な物流課題解決を図っています。


[5]中小企業庁「事業再構築補助金」、経済産業庁「中小企業生産性革命推進事業(うち、ものづくり補助金)」等
[6]自動化機器の効率的な活用により物流オペレーションの最適化を行うための企業間協創プログラム。2022年12月には、東日本電信電話株式会社とともに、「習志野Techrum Hub」においてローカル5Gサービス「ギガラク5G」を物流施設としてはじめて導入し、自動化機械の高度化や作業状況可視化の取り組みについての有効性を検証、課題解決に向けた検討を進めている。

Ⅳ.カーボンニュートラルへの取り組み

物流業界においては、脱炭素化における課題も抱えています。国内の部門別CO²排出量内訳をみると、「運輸部門」は全体の18%を占めており、これは「産業部門」の34%に次ぐCO² 排出量です。地球温暖化対策計画では、2030年までに運輸部門において2013年比▲35%のCO²削減目標が設定されています。運輸部門のうち、特に「貨物」分野におけるCO²削減が遅れており、対応が必要な状況です。

具体的な取り組みの内容のひとつに、「物流施設の脱炭素化の推進」が含まれています。2021年度国内電力の約9.5%が太陽光発電によるものでした [7]。特に広大なスペースを持つ物流施設の屋上は太陽光パネルの有望な設置候補地です。発電した電力を施設構内で消費し、消費しきれない余剰電力を売電することで収益を得ることも可能です。また、物流施設は災害発生時等の非常時において、重要な役割を果たすため、自前で供給できる太陽光発電設備はBCP対策としても有用といえます。

太陽光発電システムのさらなる導入拡大にむけて、経済産業省では、2024年度より固定価格買取制度(FIT)[8]について、企業が工場や倉庫の屋根に設置した太陽光発電システムによる買取価格を割り増しする方針を発表しました。平地に設置した場合と比較し、最大2割から3割程度高くなる見込みです。今後、物流施設における設備導入が拡大することが想定されます。

野村不動産が開発する物流施設「Landport」の屋上においても、太陽光発電設備を設置しており、2021年5月にはシリーズ初の自家消費型太陽光発電を採用した「Landport青梅」が竣工しました。Landportシリーズでは、年間約2,200万kwh(2021年3月時点)を発電しており、環境への配慮とランニングコストの削減を図っています [9]。


[7]特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所「国内の2021年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」より
[8]本制度の認定を受けた太陽光発電事業者が生産した電気(再生可能エネルギー)を、20年間(家庭用は10年間)に渡って電力会社が買い取ることを国が保証する制度
[9]野村不動産株式会社プレスリリース「「Landport 青梅Ⅲ」 満床稼働開始 シリーズ初の自家消費型太陽光発電システム採用」2021年9月21日発行より

Ⅴ.まとめ

以上、物流業界における労働力不足と2024年問題およびその取り組み、またカーボンニュートラルという課題について確認しました。

国内におけるEC市場が拡大し、世界平均と比較してもまだ増加する余地が残されている一方、トラックドライバーや倉庫作業員不足により、このままでは物流全体が滞る可能性があり、今までのような配送量やスピードを維持することが難しくなると考えられます。さらなる効率化にむけて、物流業界だけではなく、荷主・配送先等が全体となって解決をする必要があるといえます。
脱炭素化の課題へも対応が必要な状況です。物流施設への太陽光パネル設置、EV車等次世代自動車への交換等の検討も必要になる可能性があります。

どの問題にも解決にはコストがかかりますが、帝国データバンクによる企業の価格転嫁の動向アンケート(2022年12月)によると、「運送・倉庫業」における価格転嫁率は20%[10]と、全体39%と比較すると低水準です。
ワークライフバランスや人材確保の観点から長時間労働の制限は必要不可欠といえますが、特に大型の長距離ドライバーは、給与が荷物量と距離で算出されることが多いため、労働時間の制限は収入減に直結します。業界団体では、この問題について荷主側へ「標準的な運賃」への理解を求めるとともに、ドライバーに対する労働環境改善への取り組みを進めています。また、2023年4月から働き方改革関連法に基づき、中小企業における月60時間を超える時間外労働に対する残業割増賃金率が25%から50%へ引き上げされます。これらも運送コスト増加に拍車をかけることとなりそうです。今後、燃料費高騰にともなう輸送コストの転嫁もあわせ、物流全体におけるコスト増が避けられない状況といえそうです。


[10]コストが100円上昇した場合、34円しか販売価格に反映できないことを示す(出所:帝国データバンク)

提供:法人営業部 リサーチ・コンサルティング部

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