訪日外国人(インバウンド)の増加による不動産市場への影響・その1 ~訪日外国人旅行の現状~

新型コロナウイルス感染症が昨年5月に「5類」へ移行して以降、訪日外国人(インバウンド)数が急速に回復しています。すでに今年3月には、コロナ禍前の2019年3月の水準を超え、年間ベースでも2024年は過去最高だった2019年を超えることは確実視されています。

このようなインバウンドの増加は、日本におけるモノやサービスの消費を増加させ、日本経済を活性化させる効果をもたらします。さらに、恩恵をもたらすのは観光業界だけでなく、不動産業界にも多大な影響をもたらすことが考えられます。

2部構成とし、本稿その1では、まず最近のインバウンド増加の現状を見ていきたいと思います。次稿その2で、特に不動産市場へどのような影響を与えるかについて考察します。

【サマリー】

  • 訪日外国人数は、近年、急速に増加を続け、2019年には過去最高の3188万人まで増加した。しかし、2020年~2022年は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、大きく減少したが、2023年は、6月の外国人観光客の受け入れ再開等に伴い、急激に回復し、2507万人まで回復。
  • 2023年の訪日外国人を国・地域別にみると、韓国が最も多く、続いて台湾、中国、香港、米国の順となった。アジア地域だけで、全訪日外国人の8割を占めている。
  • 訪日外国人数の都道府県別訪問率をみると、上位は東京、大阪、千葉、京都、福岡、神奈川など大都市圏が上位を占める結果となっている。
  • 訪日外国人数の国・地域別消費額と構成比をみると、2023年の消費額は5兆3065億円となっており、2019年比で10.2%増となっている。国・地域別にみると、台湾、中国、韓国、米国、香港の順で多くなっている。一人当たり消費額でみると、全体的に欧米豪諸国がアジア諸国より高めの傾向。
  • 訪日外国人が増加している背景としては、旅行制限の解除、円安、日本政府の観光施策の効果等があげられる。

Ⅰ.近年のインバウンドの現状

ⅰ.インバウンド数の推移

図表Ⅰは、訪日外国人数と出国日本人数の推移です。訪日外国人数は、政府のビジットジャパンキャンペーンや観光ビザの緩和、近隣国の経済成長等の結果、2015年には出国日本人数を超えて、急速に増加を続け、2019年には過去最高の3188万人まで増加しました。

【図表Ⅰ】訪日外国人数と出国日本人数の推移
20240709_image01.jpg出所:JNTO「訪日外客統計」より野村不動産ソリューションズ作成

しかし、2020年~2022年は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、訪日外国人数、出国日本人数ともに大きく減少しました。2023年は、6月の外国人観光客の受け入れ再開等に伴い、急激に回復し、2507万人まで回復しました。

図表Ⅱは直近の訪日外国人数の推移を単月で見たものです。去年の11月ごろから単月でコロナ前の水準を超えて推移しており、今年の3月には、単月で初めて300万人を超えました。2024年は総数でコロナ前の2019年の水準を超えることが期待されます。

【図表Ⅱ】直近の訪日外国人数の推移(月別)
20240709_image02.jpg出所:JNTO「訪日外客統計」より野村不動産ソリューションズ作成

ⅱ.訪日外国人の国籍別内訳

2023年の訪日外国人を国・地域別にみると(図表Ⅲ)、韓国が最も多く(28%)、続いて台湾、中国、香港、米国の順となりました。アジア地域だけで、全訪日外国人の8割を占めています。

2019年と比べると、中国の割合が大幅に低くなっております。中国の景気低迷や、団体旅行客の解禁が遅れた(2023年8月に解禁)影響と思われ、今後の回復が期待されます。中国人には、東京都の不動産が人気であり、特に豊洲などの湾岸のタワマンや、中央区、港区など都心のオフィスが人気で、回復を前提とした場合、このあたりのエリアが有望となるでしょう。

【図表Ⅲ】直近の訪日外国人数の推移(月別)
20240709_image03.jpg出所:JNTO資料より野村不動産ソリューションズ作成

ⅲ.訪日外国人の訪問地域

訪日外国人は日本のどの地域を訪問しているのでしょうか。図表Ⅳは訪日外国人数の都道府県別訪問率を示したものです。上位は東京、大阪、千葉、京都、福岡、神奈川など大都市圏が上位を占める結果となっています。東京は2人に1人、大阪や千葉は5人に2人、京都は10人に3人が訪れています。

続いて、奈良や山梨、北海道など豊富な観光資源を有するところが上位に来ています。奈良は歴史的文化施設、山梨は富士山とその周辺、北海道は雄大な景観等が多くの外国人を引き付けていると思われます。

その他の地方は、まだまだ訪問率は低く、自地域の魅力を効果的に外国人にアピールし、地方にも訪問客を増やしていくことが課題でしょう。

【図表Ⅳ】訪日外国人数の都道府県別訪問率(2023年)
20240709_image05.jpg出所:JNTO資料より野村不動産ソリューションズ作成
20240709_image06.jpg

ⅳ.訪日外国人の消費額

図表Ⅴは訪日外国人の費目別旅行消費額の総額(2023年)を示したものです1。最も大きいのは宿泊費であり、約1兆8千億円、次に買物代(土産代等も含む)が1兆4千億円、続いて、飲食費、交通費となっています。

【図表Ⅴ】費目別訪日外国人旅行消費額(2023年)
20240709_image07.jpg出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査」より野村不動産ソリューションズ作成

図表Ⅵは訪日外国人数の国・地域別消費額と構成比を示しています。2023年の消費額は5兆3065億円となっており、2019年比で10.2%増となっています。訪日外国人数は2019年比でまだマイナスですが、消費額がプラスなのは、一人当たり消費額が大きく増加しているためです2

国・地域別にみると、台湾、中国、韓国、米国、香港の順で多くなっています。

【図表Ⅵ】訪日外国人数の国・地域別消費額と構成比
20240709_image08.jpg出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

図表Ⅶは国・地域別訪日外国人一人当たり消費総額を示しています。全体平均では、21万3千円となっています。国・地域別にみると、韓国は10万6千円ですが、オーストラリアは34万1千円と国・地域別にかなり差があることがわかります。全体的に欧米豪諸国がアジア諸国より消費額は高めの傾向があります。

また、消費額を費目別にみると(図表Ⅷ)、宿泊費が欧米豪諸国で高く、買物代は中国が突出して高いことがわかります。

【図表Ⅶ】国・地域別訪日外国人一人当たり消費総額(2023年)
20240709_image09.jpg出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査」より野村不動産ソリューションズ作成
【図表Ⅷ】国・地域別訪日外国人一人当たり費目別消費額(2023年)
20240709_image10.jpg出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

1 この消費額は、訪日中に支払った宿泊費や物品購入費等であり、訪日前に支払ったツアー費や国際航空運賃等は含まれない。
2 図表Ⅷより、一人当たり消費額は、全国籍・地域で2019年比34.2%増となっている。

Ⅱ.訪日外国人増加の背景

上記のように、コロナ禍後、急激に回復傾向になってきた理由として、以下の点が考えられます。

ⅰ.旅行制限の解除

コロナ禍では、日本を含む各国が、出入国制限を行ったため、2021年にはわずか、訪日外国人は24.5万人まで激減しました。しかし、2022年6月に外国人旅行者の受け入れが開始し、同年10月には入国者数の上限撤廃、ビザなし渡航の解禁等の水際措置の大幅緩和等により、大きく増加しました。

さらに、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月より、「5類」に移行し、日本への入国者に求められていた、検査証明提出などの措置も不要になりました。この間、海外各国でも、渡航制限の解除が相次ぎ、日本への入国者が一段と増加するきっかけとなりました。

ⅱ.円安

コロナ禍では、為替レートは概ね110円/ドルで推移していましたが、2022年初頭ごろから、日米金利差等を背景に円安・ドル高傾向が進み、直近では、150~155円/ドルで推移しています。英ポンド、ユーロ、中国元などの海外の通貨に対しても円安傾向が進んでいます。

この円安は、日本に滞在して、消費活動を行うにあたって、「割安感」を与えることになり、海外在住者にとって、日本旅行をますます魅力的なものにしています。

【図表Ⅸ】為替レート(円/米ドル)の近年の推移(5/1現在)
20240709_image11.jpg出所:三菱UFJ銀行「外国為替相場チャート表」

ⅲ.日本政府の観光施策

日本政府は観光庁や日本政府観光局(JNTO)が中心となり、コロナ禍前から「ビジットジャパンキャンペーン」と名付けた、ビザの戦略的緩和、消費税免税制度の拡充等を進める一連の訪日旅行促進キャンペーンを推進していました。

コロナ後も引き続き、航空鉄道等の交通ネットワークの充実、多言語表記、魅力的なコンテンツの造成、JNTOによる対外プロモーション等により、海外での認知度が高まり、これらの政策が訪日外国人の増加を後押ししたと言えましょう。

ⅳ.アジア諸国の経済成長

中国をはじめとしたアジア諸国の経済成長により、所得水準の上昇や富裕層が増加したことも、日本を訪問する旅行者が増加した大きな要因と言えます。最近は米国の景気も好調で、これも訪日旅行客増加の一因と言えます。海外の景気の動向も訪日外国人数に影響を与える大きく要因と言えましょう。

提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部

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