中古マンション価格と各指標(※数値一覧は次頁に掲載)の2005年~2020年6月までの最新データを掲出するとともに、高水準な価格を維持し続ける中古マンション市場における"水面下での動き"について改めて検証を行った。
なお、今回からはマーケットの状況をより把握しやすくするために、流通戸数を「新規(=当月に新たに流通したもの)」と「継続(=当月よりも前から流通し続けているもの)」に区分した。また、価格改定シェアの算出に当たっては母数を「全ての流通戸数」→「継続流通戸数のみ」とし、実態に合わせるように改めた。
2012年~2013年頃を境にいずれの指標も縮減に向かっており、"売り手市場"を控えた典型的な特徴を示していたが、2015年には流通戸数が増加傾向に転じ、また価格改定シェアも同年の第4四半期から一気に拡大し始めた。
このように、中古マンション価格の天井感が強まる兆候の出現から程なくして価格自体の推移でもこれまでの力強い上昇度合いが一服することとなるわけだが、下落に転じるまでには至らなかった。
この背景には、日銀の金融政策決定会合にて"異次元"とも言われたマイナス金利政策の導入が2016年1月に決定したことが大きく作用したものと考えられる。
本政策によって金利水準が大きく低下した長期国債などの金融商品に対して、投資対象としての中古マンションの妙味が相対的に高まった。その結果、市中に余り始めた資金が中古マンション市場にも流入したことをきっかけに、流通戸数や価格改定シェアの急激な変動も一様に収まっていった。
新築マンションに比べて割安感が強まった中古マンションは購入検討者から一定の支持を集める受け皿の役割を担い、中古マンション価格がジリ高の様相を呈する2018年以降においても、各指標は絶妙な均衡を保ち続けていた。
2020年に入ると新型コロナウイルスの感染拡大が景況感やマンション市場に悪影響を与える懸念が強まったこともあり、価格改定シェアは同年の第1四半期に40%を上回ったが、その後はさらに拡大することもなく、これまで推移してきたレンジの範囲内に収まっている。
また、値下げ率に関しては第2四半期にかけて-5.2%→-5.5%へと拡大する動きを見せていたが、これは緊急事態宣言の下で中古マンション市場においても活動の自粛を強いられる中、個別のケース(諸事情により値下げしても早く売り抜けたい)が色濃く反映されやすくなったことに起因している可能性が大きい。
一方、流通戸数は第1四半期に38,104戸を数え、その内の新規流通戸数は7,677戸で前期・前年同期の水準をともに上回っていた。この動きは新型コロナウイルスによって先行きの不透明感が増したこと、さらには世界同時株安を背景に所有物件の現金化を急ぐ姿勢が少なからずデータに反映されたものとみられる。
ただし、大部分の期間に渡って活動が停止することとなる第2四半期においては、新規流通戸数は5,822戸と大幅に減少した。直近では急落していた株価水準がだいぶ持ち直したこともあり、売り急ぎの動きはやや沈静化しつつある。
※「価格改定シェア」とは、各月での継続流通戸数のうち直近3ヵ月間において一度でも値下げを行った住戸の割合である。また、これらの住戸において当該期間で最も高い売出価格と最も安い売出価格から「値下げ率」を算出している。
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