マンションでよく採用される「RC造(鉄筋コンクリート造)」にも、造り方や構造の方式で、いくつかの種類があります。それぞれのRC造が採用される理由と、メリット・デメリットはどのようなところにあるのでしょうか?それぞれの特徴を押さえれば、購入やリフォームで役立つでしょう。
皆さんは不動産情報サイトやチラシを見ていて、「RC造」という言葉を目にしたことはないでしょうか。
マンションを主に探していて、建物構造にご興味のある方でしたらご存じかもしれません。これは、鉄筋とコンクリートを組み合わせた「鉄筋コンクリート造」を表す言葉で、鉄筋で補強された人工的な石のようなものを、建物の主要な骨格にした構造物です。
鉄筋コンクリート造は規模の大小を問わず、多くのマンションで採用されています。理由としては、頑丈で耐久性や耐火性、対腐朽性に優れ、重量があることに加え、遮音性が高く防音効果も高いためです。
オフィスや商業用のテナントビルでは、鉄骨造(S造)が使われることが一般的ですが、マンションでは鉄骨造が採用されることはあまりありません。鉄骨造はしなやかで強く、大きな空間をつくりやすいのですが、大地震のときに大きく揺れる傾向があるためです。また鉄筋コンクリート造に比べると、隣同士や上下階の住戸での音が伝わりやすいデメリットもあります。
従前、高層マンションでは、鉄筋コンクリート造の柱や梁の中に鉄骨を入れた「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」も採用されるケースが多数でした。しかし近年では、超高層のタワーマンションでも高い強度のあるコンクリートを使い、鉄筋コンクリート造でつくられることが多くなっています。
現在、マンションの鉄筋コンクリートは、建設する現場でつくられることが主流です。骨組みとなる部分に鉄筋を組んでから周りに「型枠」というパネルを立て、中にセメント・砂・砂利から成るコンクリートを流し込み、固まるのを待ってから型枠を外して出来上がります。
建物の骨組みは人間の骨と同じように、まず頑丈であることが求められます。建物本体の重さを長期に渡って支え、地震や強風などで建物の外から加わる力に対して耐えなければなりません。そうとはいえ、建物の柱や梁といった骨組みを太くしすぎると、建物の中の居住スペースが小さくなってしまいます。
また、重くなりすぎると外からの力の影響を受けやすくなり、材料費や建設費が余計にかかります。鉄筋コンクリート造の骨組みのサイズや量は、絶妙なバランスの中で決まっているのです。
建物の構造は鉄筋コンクリート造を含めていくつか存在します。以下では代表的なものを4つ、紹介します。
鉄筋コンクリート造(RC造)
1つは鉄筋コンクリート造(RC造)です。特徴はすでに紹介した通りで、鉄筋の型枠へコンクリートを流し込み固めたものです。
・鉄筋は引張力(引っ張る力)には強く、弱点は圧縮(押しつぶす力)と熱、経年劣化により錆びが生じることです。
・コンクリートは逆に圧縮(押しつぶす力)と熱に強く、弱点は引張力(引っ張る力)に弱いことです。
コンクリートはアルカリ性であるため、鉄筋の錆を防ぎ長期間に渡り高い強度と耐久性を保つことができます。
この2つの特徴を合わせてデメリットを克服したのが鉄筋コンクリート造の特徴と言えるでしょう。つまり引張に対応する力を鉄筋、圧縮に対応する力をコンクリートによって負担できるので相互メリットがあるのです。
防音効果も高くマンションにありがちな騒音を防ぎやすいので、マンションでは非常に重宝されています。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は鉄骨の柱を中心として周囲に鉄筋を組み、さらにコンクリートを打ち込んだ構造です。非常に丈夫で、大型マンションやビルなどの大規模物件に利用されるケースが多数です。ただし近年、一般のマンションでは鉄筋コンクリートが多く使われる傾向もみられます。
鉄骨造(S造)
鉄骨造(S造)は、骨組みに鉄骨を利用する構造です。鉄骨造には重量鉄骨と軽量鉄骨があり、厚みが6mm以上であれば「重量鉄骨構造」、6mm未満であれば「軽量鉄骨造」となります。重量鉄骨は主にビルや高層マンションなどの大きな建物、軽量鉄骨は一般の住居や規模店舗などに使われるケースが多数です。
木造(W造)
木材を使う構造です。一戸建てや小規模アパートなどで利用されるケースが多数で、マンションではほとんど利用されません。
鉄筋コンクリート造には、他の構造と比べて以下のようなメリットがあります。
耐震性や耐火性、遮音性に優れている
鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造と比べて耐震性、耐火性に優れているためその分丈夫です。また、遮音性も高くなっています。特に遮音性が気になる方は、同じ鉄筋コンクリート造の建物でも壁や床のコンクリートの厚さ(スラブ厚)がしっかり考えられているマンションかを確認しましょう。
耐用年数が長く資産価値が落ちにくい
鉄筋コンクリート造は丈夫で長持ちするので、木造より法定耐用年数が長くなっています。木造と比べ、建物劣化のスピードは遅く資産価値は落ちにくいと言えますが、必ずしも実勢価格と一致はしません。詳しくは別途、不動産仲介会社への確認をおすすめします。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)より安い
鉄筋コンクリート造の物件は、鉄筋鉄骨コンクリート造の物件より建築コストの差分で安く建築、購入できるかもしれません(立地条件が同じであれば)。丈夫で耐久性が高く、SRC造よりも建築コストが抑えられるというメリットがあると言えるでしょう。
木造(W造)よりコストはかかる
居住用の建物(特に一戸建て)の場合、コスト重視で木造や鉄骨造なども選ぶケースが多いです。鉄筋コンクリート造はこれらの構造より価格が高くなるため、マンションやビル建築で使われることが一般的です。ただ、一戸建てで実現できた場合、遮音性や耐久性においてコスト分の価値はあると言えるでしょう。
熱伝導率が高く夏は熱くなりやすい
鉄筋鉄骨コンクリート造の場合、木造より熱伝導率が高いので、夏は熱しやすい特徴があります。
湿気やすいケースもある
鉄筋コンクリート造の建物は気密性が高いので、湿気がこもりやすい場合があります。基本的には窓を開けての換気やエアコンで対策できます。24時間換気システムに全熱交換器が採用されている場合も、湿度への対策として有効なため気になる場合は確認してみましょう。
このように、鉄骨鉄筋コンクリート造という構造は、かけたコストに対して充分な耐震性、耐火性、遮音性といった性能が得られる、コストパフォーマンスに優れた構造です。
住宅選びの判断基準は人それぞれです。ただし、マンション購入や賃貸契約を検討している場合、鉄筋コンクリートは注目すべきメリットが多数あると言えるでしょう。例えば遮音性、耐火性、遮音性を重視するなら鉄骨鉄筋コンクリート造が適していますが、コストを重視したい場合は鉄筋コンクリート造がリーズナブルでご要望に合いやすいと考えられます。
何事もメリットとデメリットは隣り合わせです。鉄筋コンクリート造をはじめとした建物の構造を選ぶ際にも、それぞれの特性が自分たちの暮らしに合っているかを見極める必要があります。マンション選びでは実際に見て確かめ、造りや性能について分からないことは積極的に担当者に聞いてみましょう。
鉄筋コンクリート造のマンションとに言っても、居住空間の作り方にはいくつかのバリエーションがあります。構造上の安全性なども重要ですが居住空間である以上、快適性との両立が大切となります。マンションにおける建築手法を知っておくことも、住まいの選び方の1つです。
棒状の柱と梁を一体的に接合してフレームにする「ラーメン構造」と、面状の壁で箱のようにつくる「壁式構造」があります。マンションの室内で見ると、柱や梁が出っ張って現れているのがラーメン構造で、柱や壁の凸凹が出ていないのが壁式構造です。
壁式構造では、壁の中に柱と梁が含まれているイメージです。壁式構造には、床や壁を工場であらかじめパネル化して、現場に運んできて組み立てるものもあり、「壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造(PCa)」といいます。
壁式構造のほうが室内に余計な柱や梁がなくスッキリとしていますが、壁式構造は一般的には地上の階数が5以下などの制約があります。壁式構造が用いられているのは、主に低層のマンションです。
また、ラーメン構造では間仕切り壁を将来的に動かすことができますが、壁式構造では動かすことや、撤去ができない鉄筋コンクリートの構造壁が間仕切り壁として使われています。そのため間取りを変更することは、壁式構造では難しいと言えます。
将来、家族構成の変化などによって部屋の数や大きさを変えたり、ワンルームの大空間にしたりしたい場合、また浴室などの水回りの位置を変えたい場合などは、壁式構造のマンションは向いていません。
一方、ラーメン構造の住戸内の間仕切り壁は、構造とは直接関係がありません。現在の間仕切り壁は、LGSという軽量鉄骨の材料を並べて立ててビスで固定し、その上に石膏ボードを留め付けて造られます。
これらは取り払っても構造に影響がなく、工事は必要ですが間取りの変更が比較的しやすいと言えます。ただし軽い造りの間仕切り壁は音を通しやすいので、音を伝わりにくくするためには厚い石膏ボードを重ね張りするなどの方法がとられます。
ラーメン構造では欠かせない柱や梁ですが、室内に出っ張ると家具などの配置に制限がかかって使いづらい、見た目にうるさいなどのデメリットがあります。ですが、近年は柱や梁を居室の外へと追い出したり、効率的に隠す工夫が進んでいます。
「アウトフレーム工法」は、その一つで、住戸の外壁側にあった柱や梁をバルコニー側に出すというものです。こうすることで室内空間はスッキリとし、広々と使えるようになります。ただし、バルコニー側に梁が出ると、梁が窓よりも前へ出ているため、日光が入りにくくなります。
このデメリットを解消するために編み出されたのが「逆梁アウトフレーム工法」です。これは梁を上階の床上に出したうえで、バルコニーのさらに外側へと追い出すというもの。外壁側の梁がなくなるので、「ハイサッシ」と呼ばれる、背の高い開放的な窓を設けることができます。ただし、そのぶんバルコニーの面積は狭くなります。また、梁の高さが大きい場合、せっかくの窓からの視線は梁で遮られてしまうことになります。
1974年生まれ。建築ライター・エディター。出版物やWEBコンテンツ等の企画・編集・執筆を行い、意匠・歴史・文化・工学を通して建築の奥深さを広く伝える。1997年東京理科大学工学部第一部建築学科卒業、’99年同工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社建築知識(現・エクスナレッジ)月刊「建築知識」編集部を経て、2004年独立。著書に『日本の不思議な建物101』(エクスナレッジ)、『「住まい」の秘密』<一戸建て編><マンション編>(実業之日本社)など。
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