特集・注目エリアのマンション動向を追う(3)・名古屋市
2019年03月27日
この3~4年で大手デベロッパーが名古屋市の郊外から中心部へと軸足を移し、市況がガラッと変わった-。地元の不動産関係者がそう指摘するように、名古屋では中区の伏見や栄、大須、金山など都心周辺のマンション市場が活況だ。
27年のリニア中央新幹線開業を前に、資金力のある在京・在阪の大手デべらが相次ぎ進出。居住需要が大きい中区や東区などの一等地で仕入れ競争を展開し、相場が上昇基調を強めている。建築費が高止まりしていることも、各社がより利益率の高い都心に向かう要因になっている。
19年1月1日時点の公示地価では、名古屋圏の地価変動率は住宅地が前年比1.2%増、商業地が4.7%増といずれも6年連続で上昇した。名古屋市内の住宅地価は2.3%増(全国平均0.6%増)。マンション需要が都心に回帰する傾向を反映し、中心4区(中、東、中村、熱田)が特に伸びた。昨秋、三井不動産の商業施設「ららぽーと名古屋みなとアクルス」が開業した港区で宅地需要が高まり、地価が上昇に転じるなど新たな動きもある。
18年に名古屋市内で供給された分譲マンションは2966戸(前年比4.6%増)で、平均価格は4127万円(7.3%上昇)。平均坪単価は約214万円と、13年比で約50万円上がった。都心の栄では坪320万円前後になった模様だ。ベッドタウンの長久手や一宮なども人気で、市近郊の平均価格は3607万円と、13年以降の5年間で460万円上昇した。
都心一帯で開発の機運が高まり、県外企業が相次ぎ名古屋市場に参入している。東京からはオープンハウスや明和地所、タカラレーベン、ケイアイスター不動産。大阪からは京阪電鉄不動産、日商エステムなどが進出。積水ハイム東海(静岡市)も中区栄にタワーマンションを建設中だ。最激戦区の栄では、17年に竣工した野村不動産の「プラウドタワー名古屋栄」(347戸)と積水ハウスの「グランドメゾン御園座タワー」(340戸)が売れ、都心回帰の流れを作った。住友不動産は今年2月、栄に首都圏・関西圏以外で初の総合マンションギャラリーを開設。都心で年間300~400戸を供給する目標を掲げている。
名古屋市内では、県内外のデべが展開する仕入れ競争の余波で、マンション価格が上昇を続ける。清水総合開発の「ヴィークハウス白壁」(東区白壁、想定坪単価450万円前後)は例外としても、栄では積水ハウスが手掛けた複合マンション「グランドメゾン御園座タワー」(想定坪単価380万円前後)が16年に完売。中心からやや離れた昭和区御器所や千種区今池などでも坪当たり240万円前後の物件が売れている。「在名デべが手掛けられる坪単価の限界値は220万円程度」(地元企業)とされ、市内では大手が地元勢を抑え、開発を主導する傾向が鮮明になっている。
そうした中、15年に支店を構えたオープンハウスは都心周辺に手ごろな価格の狭小物件を投入し、家族向けが主流だった名古屋に新たな市場を拓いた。明和地所は市の中心3~5km圏内に照準を合わせつつ、東海3県と静岡県西部までの広い範囲を射程に収める。同社名古屋支店の担当者は「刈谷市や三重県桑名市、岐阜市なども需要が増えており、特にターミナル駅周辺に商機がある」と指摘する。
市中心部では行政が民間資本の誘致に本腰を入れている。4月以降、名古屋駅(名駅)から栄、金山にかけての中心市外地約857haを特定用途誘導地区に指定。個別の都市計画手続きを経ずにホールや大学、ホテルなどの容積率を緩和する措置を講じ、企業らの開発意欲を刺激する。名駅西口ではリニアの新駅建設に伴う移転作業が始まり、駅徒歩圏で居住・投資需要がさらに高まる可能性がある。
ただ、駅周辺ではグローバルゲートやJRゲートタワー、JPタワー名古屋など複数の大規模ビルがすでに竣工しており、市内の都市開発の主舞台は、名駅から離れた西区の城西・浄心、中村区役所周辺などに移るとの見方が強い。
(提供:日刊不動産経済通信)
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